ヤガ科
[Wikipedia|▼Menu]

ヤガ科
ドイツで撮影された Noctua pronuba 成虫
分類

:動物界 Animalia
:節足動物門 Arthropoda
:昆虫綱 Insecta
:チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
階級なし:有吻類 Glossata
階級なし:異脈類 Heteroneura
階級なし:二門類 Ditrysia
上科:ヤガ上科 Noctuoidea
:ヤガ科 Noctuidae

学名
Noctuidae
Latreille, 1809 [1]
タイプ種
Noctua pronuba
(Linnaeus, 1758) [2]
和名
ヤガ科
亜科


本文参照

ヤガ科(Noctuidae、ヤガか、夜蛾科)は、鱗翅目(チョウ目)に属するのひとつ。本記事で採用した分類体系については後述する。
形態と多様性

鱗翅目の科の中でも最大のものとされ、世界からおよそ35000種[3]、日本からは1300種あまり[4]が知られている。ただしこの種数は依拠する分類体系によって上下し、後述する Erebidae 科を認める体系においては、本科は Erebidae科およびシャクガ科に次ぐ三番目に大きい科となる[5][6]

成虫の形態は多様である。大きさに関しては開長が14?16mm程度[7]のチビアツバ Luceria fletcheri のような、の中では比較的小型の種から、開長が最大で280mmにもなる[8]ナンベイオオヤガ Thysania agrippina のような非常に大型の種、の色と模様に関しても Agarista agricola や Baorisa hieroglyphica のようにあざやかな色と模様の翅を持つ種、シロガ Chasmina candida やカラスヨトウ Amphipyra livida のように翅がほとんど単色の種、ハナムグリガ Cocytia durvilli や Eucocytia meeki のようにメタリックに輝く種[9]アケビコノハ Eudocima tyrannus やベニシタバ Catocala electa のように前翅と後翅の色が大きく異なるものまで、さまざま種が含まれる。

幼虫は体表に目立った毛が見られない、あるいは毛や棘がまばらに生えるいわゆるイモムシ型の種が多いが、たとえばケンモンヤガ亜科やウスベリケンモン亜科の幼虫は二次刺毛 secondary setae[10] が発達し、毛が目立つものが多い[11][12]。また、本科の一部には腹脚が退化し数を減らす傾向が見られる。鱗翅目幼虫の腹脚は最大で五対(腹部末端の腹脚である尾脚を数えない場合は四対)あるが、たとえばキマダラコヤガ亜科の幼虫は前方二対の腹脚を完全に喪失し、キンウワバ亜科やシタバガ亜科の幼虫は前方二対の腹脚を痕跡的にしか持たない傾向を有する。このような腹脚が退化傾向にある幼虫はセミルーパー(semi-looper)と呼ばれ、前方三対の腹脚が退化するシャクトリムシ(looper)と区別される[10][13][14]




クロスジヒメアツバ Schrankia costaestrigalis
ニュージーランド

ナンベイオオヤガ Thysania agrippina
メキシコ

Agarista agricola
オーストラリア

Baorisa hieroglyphica
マレーシア

シロガ Chasmina candida
インド

カラスヨトウ Amphipyra livida
ポーランド

キマエコノハ Eudocima salaminia
マレーシア

ベニシタバ Catocala electa
オーストリア

生態

幼虫は植物を食べて発育する植食性昆虫である。食草として利用する植物の範囲が非常に広いハスモンヨトウ Spodoptera litura のような広食性の種から、限られた種の植物しか食べない狭食性・単食性の種までさまざまである。鱗翅目においては幼虫が同種他個体を摂食する共食い行動が観察されることがあるが本科も例外ではなく、たとえばオオタバコガ Helicoverpa armigera の四齢幼虫を対象にした野外飼育実験において共食いによる死亡が全死亡率の約40%にも及んだ例がある[15]

成虫は花蜜や樹液、果汁などを吸汁する。こちらも種や分類群によって餌とする対象が異なる傾向があると考えられる。また、吸蜜を行う蛾は花粉を媒介する送粉者としてふるまい得るため、植物種と蛾の分類群(本科を含む)との間に相関関係が存在し、特異性が生じる可能性[16]が示唆されるが、いずれも野外における夜間の採餌行動の観察の困難さと種数の多さによって研究はあまり進んでいない[17]

哺乳類の汗や涙を吸汁する行動は本科を含む鱗翅目の複数のグループにおける観察例があるが、哺乳類からの吸血および鳥類からの涙の吸汁を行うことが知られているのは現在エグリバ亜科とEulepidotinae亜科に属する種のみである。動物の体液を吸汁するこれらの行動は雄成虫のみに見られ、花蜜などからは摂取しにくいナトリウムを摂取し雄の繁殖成功率を高めるためのものである可能性が示唆されているが、特に現状本科にのみ特異的に観察されている後者の行動に関しては観察が困難なこともあり解明が進んでいない[18][19]

成虫は夜行性の種が多いが、ツメクサガ Heliothis maritima のように昼にも活動する[20]種も知られる。化性や季節消長も種によって異なり、中には、6月頃に羽化するが翌春まで活動しないという一風変わった季節消長[21]で知られるプライヤキリバ Goniocraspidum pryeri などの例もある。




日中訪花する Heliothis viriplaca
ドイツ

マルーラ果実から吸汁する Eudocima materna
南アフリカ

イチゴ偽果を摂食するオオタバコガ Helicoverpa armigera
オーストラリア

アマリリスを摂食する Polytela gloriosae
インド

人との関係

代表的な種もあわせて紹介する
農業

植食性の昆虫のため、穀物野菜果樹園芸植物といった人間が栽培する植物を餌として利用する(食害する)種は農業害虫として扱われる。本科には農業上重要な害虫とされる種が複数含まれる[22]
幼虫

幼虫が農業害虫となる種のなかで代表的なものは以下のとおりである。ハスモンヨトウ S. litura 成虫

ウリキンウワバ Anadevidia peponis

オオタバコガ Helicoverpa armigera

スポドプテラ属 Spodoptera


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:41 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef