モービル1モービル1
(SuperSyn表記のある海外仕様品)
種類エンジンオイル
考案者エクソンモービル
会社名エクソンモービル
ブランド名モービル
生産状況生産中
販売元エクソンモービル
オートバックス(OEM品)
ウェブサイトMobil 1 web site
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モービル1(モービルワン、Mobil 1)は、エクソンモービルが販売している化学合成高性能エンジンオイルである。 化学合成エンジンオイルの代名詞ともいえる商品。1977年から途中中断はあるものの、約10年近くに渡りオンエアされた、「マイナス[1]40度の世界では、バナナで釘が打てます。新鮮なバラも、ほら、この通り。こちらは普通の高級オイル――」というテレビCM(ナレーション:政宗一成→内海賢二)で一躍有名になった[2]。1960年代ごろ、極寒のもとで使用される航空母艦から発着艦する軍用機のベアリングを守るために開発された化学合成グリースがルーツである。1974年に「モービル1」の名で一般発売され、その後スーパーシンの配合により、高い油膜強度を保つオイルとして世界中で愛用されている。現在、日本で正規ルートにより販売されているモービル1は、SAE規格による粘度と、用途別に以下のライナップになっている。 (なお下記のリストにあるRPやFPなどといった名称はSM規格品以前まで設定されていた。SN規格品以降は名称が廃止) 以上の四輪車向けガソリン・ディーゼルエンジン共用8種類がある。 一時期、モーターサイクル(二輪車)用としてレーシング 4T 15W-50・10W-40の2種類があった。 二輪専用モービル1が販売される以前は、二輪車向け(オートバイ用オイル)としてDE、TURBOを推奨していた。四輪車向けSN規格化以後二輪車向けの正規品は廃止されている(四輪車向けの二輪車における使用の可否については明記なし)。 モービル1は販売国によって処方が異なり[3][4]、日本で正規販売されているモービル1シリーズは、神奈川県にあるエクソンモービル有限会社の鶴見潤滑油製造所でブレンドされていたが、2011年4月、SN規格品に切り替わるのを契機にアメリカ本国生産品になった。2012年にエクソン・モービル有限会社は日本から撤退し、EMGマーケティング合同会社が輸入・販売していたが、2017年1月の吸収合併に伴い、東燃ゼネラル石油、さらに同年4月の合併に伴い、ENEOS(当時の商号はJXTGエネルギー)子会社として設立されたEMGルブリカンツの販売となった[5]。サービスステーションのENEOSブランドへの統合に伴い2018年10月より従前よりENEOSブランドであったサービスステーションにおいても取り扱いを開始し、ENEOSブランドのオイル(2020年8月頃まではSUSTINAやFINE、同月以降はXシリーズ)との併売となっていた。 2022年3月31日を以てEMGルブリカンツでのモービル潤滑油製品の国内販売契約は満了し、4月よりエクソンモービル・ジャパン合同会社での販売に変更された[6]。併せてENEOSサービスステーションにおけるモービル1の取り扱いも終了した。
概要
5W-50 RF(ラリーフォーミュラ)
0W-40 RP(レースプルーブン)
5W-40 DE(ドライビングエクセレンス)
15W-50 TURBO(ターボ)
0W-20 EC(エコクルーズ)
0W-30 NA(ナチュラルアスピレーション)
5W-30 FP(ファインパフォーマンス)
10W-30 RM(ロードマスター)
エピソード
モービル1は長らくPAOを主成分とした100%化学合成油であることをアピールしてきていたが、現在では水素化分解による高粘度指数鉱物油(ハイドロクラッキング、超精製油、高度精製鉱物油と同義語)を配合しているため、単に化学合成油と表示している。水素化分解油はAPI(アメリカ石油協会)の基油(ベースオイル)の分類でグループIIIのカテゴリーになる。
従来、化学合成油といえばグループIVのポリアルファオレフィン(PAO・オレフィンオリゴマーとも呼ばれる)、グループVのエステル系(ジエステル、ポリオールエステル他)、アルキルナフタレン、ポリブデンなどを指していたが、アメリカにおいてカストロールがグループIII基油を用いたsyntecという名のオイルを化学合成油(フルシンセティック)として販売した。この事に対してモービルは、「グループIII基油をベースに用いたエンジンオイルは、化学合成油ではない」と主張し、アメリカの広告審議を担当するNAD(National Advertising Division)に異議を申し立てた。しかし、評決はカストロールの勝訴となり、グループIII基油の化学合成油の表示が認められた。以後モービル1も追従してコストが安いグループIII基油を配合し、化学合成油として販売している(日本でも化学合成油の定義がないため、以降多くのオイル会社が基油の全部、あるいは一部にグループIII基油を使用したエンジンオイルを化学合成油、部分合成油、全合成油、化学合成系、あるいは100%化学合成油などいろいろな名称で販売するようになった。しかし具体的な基油についてはMSDSが参考となる)。
当初モービル1でグループIII配合はRMとFPだけであったが(PAO+Hydroprocessedと表記)、近年のコストアップを受けて、RF、TURBO、DE、EC、NAにも配合された(PAO+Catalytically processedと表記)。RPは粘度と規格の関係からPAOベースでモービル1を代表する看板商品だったが、2021年9月現在、RP のPAO 配合比率は10-20%に留まる。
モービル1では各基油の配合比率はMSDSにて確認できていた(MSDSではPAOは合成炭化水素、エステルはエステル基油、水素化分解油は石油系炭化水素と表記されていた。以前は基油と添加剤の割合は容量のパーセンテージで、のちに重量比となっていたが最新版では組成は不表記となっている)。
モービルはPAOを自社で製造できる数少ないオイル会社であり、世界で使用されるPAOの半分近くを製造している。現在、世界において商業規模でPAOを大量生産しているのはエクソンモービルケミカルの他、シェブロンフィリップス
Mobil 1の文字はF1の場でも多く目にするが、F1で使用されているオイルはイギリスのコリントン研究所でブレンドされており、市販品とは異なる。オートバックスがメインスポンサーとなってスーパーGT選手権に出場していたホンダARTA NSXには、市販品と同じモービル1 NA 0W-30を供給していると発表していた(マクラーレン供給油 Mobil 1 コンバイニング・グレーター・パフォーマンス・オイル)。
一時モービル1はTri-Synthetic (トリシンセティック)を謳い、PAO、エステル、そしてアロマ系のアルキルナフタレンを基油に用いた贅沢な処方になっていたが、現在ではコスト高になるためアルキルナフタレンの配合を止め、廉価価格のものではエステルの配合もしていない。代わりに添加剤SuperSyn(スーパーシン)による高性能をアピールしている。トリシンセティック時代はゴールド色の缶で売られていた。今でも「金缶の頃のモービル1は良かった」と懐かしむファンもいる。金色の缶になる前は銀色をイメージカラーとしており、ロングラン放映された有名なTVCMの影響もあって、未だに「モービル1=シルバー」のイメージを持っている人も多い。アメリカでは上級品であるMobil 1 Extended Performance がボトルに金色基調のラベルを採用し、スタンダードなMobil 1 は今でも銀色を基調としている。
ヨーロッパではスタンダードなモービル1シリーズに加え、ロングドレイン・Low Ash (低灰分)処方の低環境負荷ディーゼルエンジン対応のESPシリーズ(Mobil 1 ESP Formula、ESPはEmission System Protectionの略)があり、またアメリカでは同じくロングドレイン仕様の、エクステンドパフォーマンスシリーズ(Mobil 1 Extended Performance)や、過走行車向けにハイマイレージシリーズ(Mobil 1 High Mileage)など、豊富なラインナップが揃っている。日本で販売されているモービル1シリーズは、スタンダードクラスである(モービルブランドのトラック向けの化学合成油としてはデルバック1;Delvac Synがある)。なお、ヨーロッパ車のクリーンディーゼルモデルの輸入や国産車でも国内向けクリーンディーゼル車が増えたことに伴い、ESPシリーズが日本(JASO)とヨーロッパ(ACEA)の規格を両方持った商品として日本国内でも正規に取り扱われるようになった。
ディスカウントショップなどで販売されているプラスチックボトル入りのモービル1は、国産でなく並行輸入されたものである(ただし、SN規格化以前の正規ルートのモービル1は国産品であったため、厳密な意味での並行輸入では無い。化学合成ギヤオイルSHCに関しては、正規品でもEC製であり、プラボトルで売られている)。以前は4Lボトル入りのフランス製も流通していたが、現在見られる並行品はアメリカ製の1クォートボトル入りがほとんどである。
オートバックスセブンのオリジナルのプライベートブランド(PB)のオイルはモービルが供給している。その関係上、以前はオートバックスのPBオイルであるヴァンテージシリーズの化学合成油の中身はモービル1であった。しかし現在ではモービル1とヴァンテージでは処方が異なる。API SL認証の取得はヴァンテージの方が早かった。なおエクソンとモービルの合併に伴い、エッソブランドの化学合成油ウルトロンとウルトラフロー、ゼネラルブランドのUNO GXの製造販売は中止され、日本国内に於けるエクソンモービル、東燃ゼネラル系列のサービスステーションで販売される自動車用潤滑油も、すべてモービルブランドに統一された。なお、JXTGエネルギーとしてエッソ・モービル・ゼネラルがENEOSブランドに統合されるまでの間、ENEOSブランドのサービスステーションではENEOSブランドのオイル(SUSTINA、FINE等(当時))と併売されていた一方、旧EMGブランドのサービスステーションではモービル1のみの取り扱いとなっており、ブランド転換された店舗から順次併売となった。