モンブラン_(ケーキ)
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日本で販売されるモンブランの典型例

モンブラン(Mont Blanc aux marrons)は、などを原料とするクリームを生地の上面に絞りかけたケーキモンブラン山の形に似ていることからこう呼ばれる。
概要生地を栗ペーストでつつむ様子

典型的には、カップケーキ型のスポンジ生地メレンゲタルト生地などで作った土台の上にホイップクリームを乗せ、それを螺旋状に包むように絞り袋小田巻[1]を使って絞り出した栗のクリームをあしらう[2]。その上に半分に切ったマロングラッセ、あるいは甘露煮の栗が一片載せられることもある[1]。形状や大きさ、土台となる生地部分には様々なバリエーションがある。上に降りかけられる白い粉砂糖は雪を表している[1]

その形はモンブラン山を真似てフランスでは山の丸みを帯びたドーム状の曲線が、イタリアでは氷河に削り取られた峻厳な岩肌がケーキに投影されたと考える者もいる[1]

栗のクリームとして、形の崩れたマロングラッセをつぶして使うこともある[1]
バリエーション

日本ではクリ以外にも、
サツマイモカボチャなどで代用したり、色付けし砂糖と香料を加えた白餡を乗せたケーキにも、同じ名称が冠されている[3]。また、栗のクリームに抹茶を混ぜ込んだ抹茶のモンブランや、ココアを混ぜ込んだチョコレートモンブランなどもある。更には栗を使用せず、生クリームいちごマンゴー等の果汁を混ぜ込こんで風味付けをしたモンブランもある。

北海道小樽市の一部では、ココアスポンジに生クリームを挟んだショートケーキが「モンブラン」と呼ばれている[4]


三越のモンブラン

ロールケーキ

のモンブラン

ムラサキ芋を使用

スイスの作品

スターバックスのモンブラン

由来

栗のペーストとホイップクリームを組み合わせたデザート「モンブラン」は1847年には販売されており、19世紀中旬に一時流行した。他にさまざまな呼称がある。小型のケーキタイプや、メレンゲ台を使ったタイプも1890年代初頭にはあった。

モンブランを看板メニューとするパリの老舗カフェ「アンジェリーナ」の2015年現在の製品は、メレンゲ上にホイップクリームを載せ、その上に栗のクリームを麺状に絞り出した構成である[5]。同店が「モンブラン」という名の菓子を発売した時期は1920年代以前である。
前史

ヨーロッパで栗の甘い菓子としては、17世紀には栗のシロップがけや糖衣のレシピがあり[6]、18世紀には栗ペーストのアイスクリームのレシピもあった[7]。19世紀初頭にNesselrode pudding(ネッセルロード[8]:601・プディング)という、栗と各種ドライフルーツを和えたアイスクリームが流行した[9]

栗を麺のように絞り出した菓子は1842年の記録がある[10]。ただしこれはホイップクリームに関する言及がない。
栗ペーストとホイップクリームの菓子「モンブラン」Chestnut puree with cream(1871年。ユルバン・デュボワの料理本より)[11]

モンブランの原型はフランス・サヴォワ県や隣接するイタリア・ピエモンテ州の家庭菓子という説がある[12]

1847年のフランスの広告記事はパリの菓子店Dessatが創ったという、栗とクリームの菓子"entremets du Mont-Blanc(モンブラン)を紹介している[13]。白いクリームと褐色のマロンピュレ(裏ごし)を組み合わせたバニラ風味の菓子で姿も良い、とうたっている[14]

1863年フランスの婦人雑誌のレシピnid de marrons(直訳:栗の巣)は、栗のペーストを麺状に絞り出して大きなドーナツ状の輪をつくり、中心の穴にホイップクリームを盛る[15]

1871年のユルバン・デュボワ(フランス語版)による挿絵付きレシピchestnut puree with cream(栗のピュレ、クリーム添え)も栗の巣タイプ[11]フランス語: Puree de marrons a la creme[16])。デュボワの別の本では同じレシピ名"Puree de marrons a la cremeだが構成が違い、栗のペーストを絞って山盛りにし、それをホイップクリームで覆う[17]

逆に下がホイップクリームの山で、その上に栗のペーストを細く絞ってかける構成は1874年のイギリスのレシピchestnut creamに見られる[18]

「モンブラン」の名が明記されたレシピとしては1885年の料理本がある。栗の巣タイプである[19]

1885年の投稿記事のアルザス地方料理torche aux marronsは栗のピュレの山の上にホイップクリームを載せるタイプだが[20]、同名で麺状の栗の巣タイプのレシピもある[21]

1889年の料理本のmarrons Chantilly(マロン・シャンテリー)は栗の巣タイプだが麺状ではない。ホイップクリームを岩か山のように立てる[22]。1901年のアメリカのレシピmarrons a la chantillyでは栗を漉し器で絞る[23]

1889年の雑誌に、過去60年間に流行ったデザートを挙げた随筆がある。それによれば、ある時パリのパティシエ(菓子職人)が「モンブラン」と称する、栗を潰したものにホイップクリームをたっぷりかけた菓子を一時流行らせたが、流行はあっという間に冷めたという[24]

19世紀後半にはDessat以外の店も「モンブラン」という菓子を売っていた: 1876年パリ[25]、1889年パリ[26]、1891年頃サヴォワ県シャンベリ[27]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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