この項目では、2001年の映画について説明しています。シリーズ全体については「モンスターズ・インクシリーズ」をご覧ください。
モンスターズ・インク
Monsters, Inc.
監督ピート・ドクター
共同監督
デヴィッド・シルヴァーマン
リー・アンクリッチ
脚本ダン・ガーソン
『モンスターズ・インク』(原題:Monsters, Inc.)は、2001年に公開されたディズニーとピクサー製作の長編フルCGアニメーション映画。ピクサーの長編アニメーション作品としては第4作目となる。日本では2002年3月2日に公開された。ピクサー作品では初めてジョン・ラセターが製作総指揮に回り、ピート・ドクターが初監督を務めた。
2001年のアカデミー賞では作曲賞、主題歌賞、音響効果賞、長編アニメ賞にノミネートされ、そのうち主題歌賞を受賞した。 多種多様な姿形のモンスターたちが暮らすモンスターワールド。彼らの生活を豊かにするエネルギーの源は「人間の子供の悲鳴」である。大企業モンスターズインク(通称MI)では会社が無数に保有する人間の子供の部屋へ通じるドアを通じて怖がらせ屋のモンスターを送り込み、怯える子供たちの悲鳴を集めエネルギーへ変換し、モンスターワールドへ供給する。しかし昨今の子供たちは映画やゲームなどの影響で簡単には怖がらず、MIの業績は悪化を辿り、モンスターワールドのエネルギー不足が深刻化していた。同時にモンスターたちの間では、人間の子供は恐るべき病原菌を持っていると言い伝えられる恐怖の対象であった。人間の子供からモンスターワールドを守るため、街は常に子供検疫局(通称CDA)によって監視されていた。特にMIは子供と最も密接に関わる場所であるため頻繁にモンスターと人間の子供の接触が発生し、その度CDAの介入が起こり、作業の停滞によってまた業績が悪化するのだった。 屈強な体で毛むくじゃらの青いモンスターサリーと、緑色のひとつ目モンスターマイクは、MIへ勤める名物コンビ。サリーが怖がらせ屋で、マイクは彼のアシスタントを担っていた。特にサリーはMIの大社長ウォーターヌースに仕込まれた業績ナンバーワンの怖がらせ屋で、社内で誰からも尊敬されていた。そんなふたりを敵視するのは、サリーに次ぐ2番手の怖がらせ屋ランドール。彼はトップを奪取するのに固執し手段を選ばない、卑劣で意地悪いモンスターだった。 ある日、サリーはマイクから恋人のセリアとの約束を理由に書類の提出代理を頼まれ、誰もいない怖がらせフロアへ戻る。そこで業務外時間にもかかわらず出入り可能状態となっている白地に花柄のドアを見つける。不思議に思ったサリーが誰かが残業しているのではとドアの中を確認すると、偶然にもその部屋の主である人間の女の子ブーが、モンスターワールドへ入り込んでしまう。狼狽したサリーはブーをカバンへ押し込め、セリアとのレストランデート中のマイクの元へ向かい、このことを打ち明ける。しかし目を離した隙にブーは逃走、レストラン中の客が彼女に気付き、街は大混乱へ陥ってしまう。ひとまずブーを自宅へ匿ったサリーは、当初彼女を恐ろしがってばかりだったが、やがて彼女に危険がないのだと知る。 ブーを人間の世界へ返すべく、サリーとマイクはモンスターに変装させた彼女を会社へ連れて行くと、昨晩のパニックによるCDAの煩雑によって会社は混乱に陥っていた。そんな中ブーが迷子になってしまい、サリーは会社中を必死に探す。ブーへ愛着を覚えたサリーと、彼女を人間の世界へ一秒も早く戻そうと焦るマイク、徐々にふたりの相違が生まれてゆく。 その頃、ランドールがブーを攫うべく社内をうろついていた。昨晩仕事場で例のドアを出していたのはランドールで、彼が目を離したすきにブーが逃げてしまったのだった。ランドールがドアを出したのは仕事のためではない。社内では秘密裏に悲鳴吸引器が作られており、その実験材料にブーを使おうとしていたのだった。子供の悲鳴を直接吸い出し、かつてよりもスムーズにエネルギーを集められるといった代物だが、子供をショック死させる可能性さえある危険なものだった。 ランドールの企みを知ったサリーは、すべてを白日の下に晒すべくウォータヌースへ掛け合う。しかし、丁度新人怖がらせ屋の研修会中で、サリーはウォーターヌースから手本を見せてほしいとせがまれる。サリーは渋りつつも恐ろしい形相で吠え、その様子を見ていたブーはサリーを恐れてしまう。 その後、騒動の全ての経緯を聞いたウォーターヌースは、ブーを人間の世界へ返すよう指示。しかし、サリーたちの前へ出現したのはブーのものではなく、豪雪のヒマラヤ山脈へ続くドアであった。実はウォーターヌースはランドールの実験を指揮した黒幕で、すべてを隠蔽するべく事情を知るマイクとサリーを追放してしまう。 ブーに嫌われたと落ち込むサリー。サリーがブーへ肩入れするあまりに自分の人生を破滅に導いたと恨むマイク。雪の中で仲違いするふたりは、かつてモンスターワールドから追放されたイエティに助けられる。ブーを助けるべく、サリーは一人イエティの洞窟にあったスキーセットを改造したそりに乗って、山の麓にある子供のいる村を目指す。丁度村ではMIの怖がらせ屋の仕事が行われており、そこからサリーはモンスターワールドへ戻りブーの元へ急ぐ。実験室ではウォーターヌースとランドールがブーを実験に使おうとしていたが、すんでのところで間に合ったサリーがブーを助け出す。サリーは擬態したランドールに追い詰められるが、その場面に丁度サリーを追って戻ってきたマイクが現れ、たまたま投げつけた雪玉が図らずもランドールに命中、サリーは助かった。 マイクと共にブーを人間の世界へ戻そうとするサリーは、ブーのドアを追ってドアの保管庫へ侵入する。彼らを追ってきたランドールの手をかいくぐりつつ、無数のドアを移動し続けどうにか目当てのドアへたどり着く。ランドールを人間の世界へ追放することにも成功した。しかし、彼らはCDAを味方につけたウォーターヌースによって追い詰められてしまう。マイクを囮に逃げたサリーとブーは研修室へ逃げ込み、そこへ備え付けられたドアの接続機でブーのドアを起動するが、そこへウォーターヌースがやってくる。彼は業績悪化で傾きかけの会社を救うためなら「千人の子供を誘拐することも厭わない」と言い放ち、再びブーを攫おうとするが、そこで研修室に照明が灯った。ブーの部屋と思われていたそれは研修に使われる擬似的な子供の部屋で、その内部で行われていたウォーターヌースとサリーとのやりとりはすべて、マイクが呼び寄せたCDA局員によって確認されていた。 陰謀を暴露されたウォーターヌースは局員によって逮捕された。彼が去った後、サリーとマイクの前へCDAの首領であるロズが現れる。彼女は会社の職員を装い、2年半前からMIへ潜入して今回の事件について調査していたのだった。彼女はブーを人間の世界へ返すというサリーの意志を汲み取る。サリーはブーの部屋で彼女に別れを告げた。ドアはドア・シュレッダーによって処分され、事件のすべては混乱を避けるためにCDAによって隠蔽された。サリーはシュレッダーから出たドアの破片を握りしめた。 ウォーターヌースの逮捕によって会社は倒産し、社員たちは不安に苛まれる。MIの消滅によるエネルギー不足の陰は計り知れない。こんな状況を一周回って「結構笑えただろう」と揶揄したマイクの一言をヒントに、サリーはこの状況の打開策をひらめく。サリーはMIの社長を継ぎ、会社の方向性を子供を怖がらせることから笑わせることへシフトさせた。実はサリーは、モンスターに変装させたブーが社内で笑い声を上げた際に蛍光灯が強烈に光ったことや、ドア保管庫の冒険の最中にマイクのギャグを見たブーの笑い声が大量のドアを反応させたことから、「人間の笑い声は悲鳴を遥かに凌駕するエネルギーを秘めている」と確信していたのであった。実際、笑い声は悲鳴の10倍も効率が良いエネルギー供給源となり、会社の業績はV字回復、エネルギー不足にも改善の兆しが見えていた。
あらすじ