モロコシ
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この項目では、標準和名モロコシの作物について説明しています。モロコシの地方名を持つ作物については「トウモロコシ」を、菓子については「もろこし」をご覧ください。

モロコシ
モロコシ Sorghum bicolor
分類

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 Angiosperms
階級なし:単子葉植物 Monocotes
:イネ目 Poales
:イネ科 Poaceae
:モロコシ属 Sorghum
:モロコシ S. bicolor

学名
Sorghum bicolor
(L.) Moench, 1794
和名
モロコシ
英名
Great millet
Sorghum
Sorghum bicolor Moderne

モロコシ(蜀黍、唐黍、学名 Sorghum bicolor)は、イネ科一年草C4植物穀物。タカキビ(高黍)とも呼ぶ。外来語呼称にはコーリャン[1]: 高粱, g?oliang[2]から)、ソルガム(: sorghum)、ソルゴー(: sorgo)がある。沖縄ではトーナチンと呼ばれる。

熱帯亜熱帯の作物で乾燥に強く、イネ(稲)やコムギ(小麦)などが育たない地域でも成長する。食用をはじめ飼料醸造、精糖、デンプンアルコールなどの工業用など非常に用途が広く、穀物としての生産量ではコムギ、イネ、トウモロコシオオムギ(大麦)に次いで世界第5位である[3]

同じくイネ科の穀物であり名称が似ているトウモロコシとしばしば混同される[4]が、モロコシはモロコシ属[5]、トウモロコシはトウモロコシ属に分類されている[6]ように、レベルで異なるまったく別の植物である。また、「タカキビ」との別名があるとおりキビとも混同されやすい[7]が、キビはキビ属であり[8]、これも属レベルで異なる。
特徴

野生や従来の栽培種では全長3メートル以上にも達するが、この高さでは機械での収穫に支障をきたすことや倒伏しやすいことから、アメリカ合衆国を中心に全長を低くする品種改良が行なわれ、現在では1.5メートル程度にまで低くなった品種も主力の一つとなっている[9]。葉も長さ1メートル以上で幅10センチメートル程度になり、茎は太さ3センチメートル程度で芯の詰まったものとなっている。夏になると茎の先端にが出る。穂はが10程あり(節は必ずしも明瞭ではないが、複数の穂枝が出ていることから逆に見分けられる)、各節より6本程度の枝が放射状に出ている。各枝は更に数十に枝分かれしており、最終的には一つの穂で3,000程の小さな穂を付ける[10]。なお、実の千粒重は25グラム程度[11]。その色は紫や赤に近い。

作物としては根が深く、吸水能力が非常に高いため主要穀物の中では最も乾燥に強い穀物である[12]。吸肥性も同様の理由で高い。その割には湿潤にもよく耐え、日本のような多湿地域でも栽培が可能である。ただし、湛水中の水田などの沼地では栽培はできない。連作は可能であるが、可能であるだけで地力は落ちるので輪作が行われることが多い[13]。栽培期間は、一般に早生が70日から80日程度、晩生で150日から160日程度で収穫となる[13]。日本の山間部においては日照時間や農業に適した期間の短さなどから極早生が好まれる傾向にあり、岐阜県飛騨地方山間部における調査では播種から2か月少々(70日程度)で収穫が行われていた[14]
品種と改良

モロコシは、ビコロ、ギニア、カウダツム、カフィア、デュラの5つの基本種と10の中間種に分類されている[15]。品種としての分類のほか、用途によって大きく穀物用モロコシ(グレイン・ソルガム)、糯モロコシ、飼料用モロコシ(グラス・ソルガム)、糖蜜用モロコシ(スイート・ソルガム、ソルゴー、サトウモロコシ[16])、用モロコシ(ブルーム・ソルガム)の5つの品種群に大別される。グレイン・ソルガムはさらにマイロ群やカフィア群などの群に分類されている[17]。モロコシには爆ぜるタイプの、いわゆるポップ・ソルガムも存在する。

モロコシは種間の交雑が起こりやすいため新品種の育成が行いやすく、原産地であるアフリカには野生や栽培、半野生や原種など様々な種類の種があり、さらにその中でも用途別・環境別にやや分化した多くの品種が存在する。20世紀に入ると近代的な品種改良がアメリカにおいて行われるようになり、さまざまな特性を持つ交雑種が育成され、さらに一代雑種が主流化するなかで、収量や病虫害・倒伏耐性などが大きく向上した[18]。しかしこれらの改良は主にアメリカなどで栽培される飼料用や糖蜜用のモロコシに限られており、インドやアフリカで栽培される主穀用のモロコシの改良は必ずしも進んでいない。
原産と伝播

原産地は熱帯アフリカで、エチオピアを原産地とする仮説が有力である[19]エジプトでは紀元前3世紀頃には栽培されていた[19]。早い時期に西アフリカ北アフリカインドへ伝播し、のちに中国東南アジアにも伝播して栽培種となった。中国に入った時期は諸説紛々として不明だが、DNAの分布からは950年頃と考えられている[20]。古くは「蜀黍」(しょくしょ)と呼ばれたが、現代の中国名は「高粱」(こうりゃん、カオリャン)である。伝播以前の文献にも蜀黍の名は見られるが、別の穀物を指したらしい。18世紀には新大陸にも伝播し、1853年にはアメリカ合衆国で栽培が開始された[21]

日本には室町時代に中国を経由して伝来した[19]。五穀(キビ)の一種としてモロコシ、タカキビ(高黍)という名前での食用栽培のほか、サトウモロコシ、トウキビ、ロゾク(蘆粟)という名で、糖汁採取目的の栽培も行われてきた[22]
生産
世界世界のモロコシ生産地域。赤が原産地、緑が主要生産地域。インドの穀物生産図。中央部の黄色がジョワール(モロコシ)を主に栽培する地域。エルサルバドルのモロコシ畑

モロコシ世界生産量(2008/09年)[23]
 順位 国名生産量 (千トン)割合
   1 アメリカ合衆国   11,99819.22 %
   2 ナイジェリア   11,00017.63 %
   3 インド   7,24011.60 %
   4 メキシコ   6,30010.09 %


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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