モロコシ属
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モロコシ属

分類

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 angiosperms
階級なし:単子葉類 monocots
:イネ目 Poales
:イネ科 Poaceae
:モロコシ属 Sorghum
L.


30種程度。本文参照。

モロコシ属 (Sorghum) は、約30のが分類される、イネ科のである。その内のいくつかは穀物として、また多くが飼料として世界中で栽培される。栽培には温暖な気候が必要で、野生では熱帯及び亜熱帯に分布する。乾燥に強く、アフリカサバンナからステップ地帯の主穀となっている。

なお、日本におけるモロコシには異名が多く、文献や機関によって異なる名前で記載されていることは珍しくない。一般的なものとしては、モロコシ、ソルガム、コーリャン(高粱)、タカキビなどの名がある。
分類と分布モロコシの全体写真。モロコシの在来種は非常に高くなり、3m以上にもなる。インド・マハーラーシュトラ州のモロコシ畑

モロコシ属は、アフリカやユーラシアの低緯度地域を中心に熱帯、亜熱帯に広範に分布する。地中海からインドにかけてはセイバンモロコシ(ジョンソングラス)が野草として分布し、東南アジアにはpropinquum種がやはり野草として分布していた。また、栽培種近縁の種はアフリカのサバンナ地域に分布していた[1]。そのうち、栽培種であるSorghum bicolor(ソルガム・ビコロ、モロコシ)は5000年ほど前にSorghum arundinaceumとスーダングラスとの交配によって、西アフリカのサバンナ地帯からエチオピア高原にかけての地域にて栽培化されたと考えられている。この地域はスーダン農耕文化と呼ばれる文化が広がる地域で、モロコシのほかにもフォニオテフトウジンビエシコクビエバンバラマメ、アフリカイネなどの穀物が栽培化された栽培化の一大センターであるが、ここで栽培化された穀物の中でもモロコシは最も世界中に広がり、また大量に生産されている穀物である。

ソルガムが栽培化されたのちも、従来の他のソルガム属と交雑が起こり、野生種や雑草としての交雑種が成立していった。ソルガムの畑として開発された開けた土地に、同じ環境を好む野生種が入り込むことで多くの交雑種が生まれた。栽培種は南下してアフリカ全土に広がる一方、北上して古代エジプトへと伝わり、そこから東進してメソポタミア文明にも伝わった。紀元前7世紀のアッシリア帝国においてすでに栽培の記録が残っている。紀元前4世紀にはインドへ、4世紀には中国に伝わり、日本にも平安時代までには伝来し広く栽培されるようになった。エチオピアから18世紀には奴隷貿易に伴い栽培種が南米へと導入され、1853年にはアメリカへと導入された[2]。この栽培種から再び雑草種が生まれ、アメリカに広がった。

野生種や雑草種も食用は可能であり、農耕に拠らない採集物として、また飢饉のときなどにも採集され食用とされる。野生や雑草種のソルガム属は脱粒性であるのに対し、栽培種は非脱粒性で収穫が容易になっている。一方で、栽培種との交雑種が多いことからもわかるように繁殖しやすく、駆除もしにくいため強害雑草となっているものも多く、とくにセイバンモロコシは世界最悪の10大雑草の一つに数えられている。[3]日本においても1945年ごろに侵入し、帰化植物として各地に繁茂している。上記のように交雑や変異が起こりやすい植物であるため、亜種や品種の分類は非常に複雑なものとなっている。
利用

モロコシ属の中で最も利用されている種はモロコシ(Sorghum bicolor)であり、小麦トウモロコシ大麦についで世界で5番目に多く栽培される穀物となっている[4]。その用途も広く、アフリカやインドなどでは主食用穀物としてパンに使用されるほか、アフリカや中国では醸造も行われる。ただしタンニンが含まれることから精白を強く行う必要があり、このため先進諸国では食用にはほとんど使用されず、飼料としての用途がほとんどである。飼料としては穀物の他、牧草として茎や葉も使用される。また、デンプンアルコール製造の用途も大きい[5]

牧草としての使用の場合、モロコシの他にスーダングラスなども使用される。ただしモロコシやセイバンモロコシ、スーダングラスなどモロコシ属のいくつかの種は、成長の初期にシアン化水素、ホルデニン、硝酸塩などの有毒物質を致死量含むことがあるので注意が必要である。さらに成長した個体でも、ストレスを受けるとかなりの量のシアン化物を作ることがある。日本など各地でセイバンモロコシが飼料用として使用されなくなったのは、この性質による。ただし青酸などこれらの毒素は青草に含まれるものであり、成長につれて毒素の量は減少していく[6]。成長のほか、乾燥させても青酸は減少するため、牧草として青刈した場合は十分に乾燥させれば危険性はほぼなくなり、干し草に危険性はほとんどない[7]



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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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