モラハラ
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モラルハラスメント(: harcelement moral)とは、モラル道徳倫理)に反した精神的ハラスメント(嫌がらせ)。モラハラと略される精神的虐待

職場上の力関係を背景に行われた際のパワーハラスメントセクシャルハラスメントも、モラルハラスメントの一種である[1]
概要

フランス精神科医たるマリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱した言葉。

外傷が残るなど顕在化(見える化)しやすい肉体的な暴力と違い、言葉や態度等によって行われる精神的暴力は見えづらい。パワハラやセクハラとの違いは曖昧で以下のとおり定義が定まらない。

イルゴイエンヌは、社会は精神的な暴力に対しては対応が甘いが、精神的な暴力は肉体的な暴力と同じ程度に、場合によっては肉体的な暴力以上に人を傷つけるもので犯罪であると述べる。フランスにおいては、1998年時点では、社会は精神的な暴力に対しては対応が甘く、肉体的な暴力に対して厳しいので、その点が問題だという [2]。イルゴイエンヌは、セラピストとしてたくさんの被害者に接してきた結果、被害者が加害者の攻撃から身を守ることがいかに難しいか、よく知っている[3]。ストレスは行き過ぎなければ心身に深い傷を与えないが、これに対してモラル・ハラスメントは、心身に深い傷を与えるのが普通の状態なのである[4]。「モラルハラスメントがどれほど被害者の心身の健康に破壊的な影響を与えるのか、その恐ろしさを嫌と言うほど見てきた。モラルハラスメントは精神的な殺人である」とも述べている。[5]

安冨歩は「moral(モラール)」というフランス語の「精神の、形而上学の」という意味を考慮に入れ、「harcelement moral(アルセルモン・モラール)」を「身体的ではなく、精神的・情緒的な次元を通じて行われる継続的ないじめ、いやがらせ、つきまといなどの虐待」と解釈している[6]。「モラル・ハラスメント」が成立するためには、「いやがらせ」が行われると共に、それが隠蔽されねばならない。「いやがらせ」と「いやがらせの隠蔽」とが同時に行われることが、モラル・ハラスメントの成立にとって、決定的に重要である。[7]

加藤諦三は、「愛」だと思い込んで相手を支配する「サディズムの変装」を、モラルハラスメントをする人自身が「愛」だと思い込んで理解できない側面であると指摘している[8][要ページ番号]。

また、被害者の支援者は肯定的な対応を行い、加害者と離れることを勧めたり適切な支援機関を紹介をしたりすることが大切である[9]
マリー=フランス・イルゴイエンヌによる定義

加害者にとり、被害者は人間ではなく「モノ」[10]である。とはいっても、モラル・ハラスメントの被害者に選ばれる人物にも傾向が存在する。被害者は、起こった出来事に対して「自分が悪いのでは」と罪悪感を持ちやすい[11]、誰かに与えることを欲している[12]という性格が利用される。自己愛的な変質者が欲しているが持っていないものを持っているか、自身の生活のなかから喜びを引き出しているという性格の場合も被害者に選ばれやすい[13]

加害者は道徳家のように振舞うことが多い。妄想症の人格に近いところがある[14]。しかしながら、加害者が人を支配しようとするのに、妄想症の人間が自身の「力」を用いるのとは対照的に、モラル・ハラスメントの加害者は自身の「魅力」を用いる[15](婉曲的な表現や倒置法を好んで使うなど)。次に、ひとつひとつを取ってみればとりたてて問題にするほどのことではないと思えるようなささいな事柄・やり方により、被害者の考えや行動を支配・制御しようとする。この段階では、加害者は被害者に罪悪感を与え、周囲には被害者が悪いと思わせようとする[16][17]

被害者が自立しようとすると、中傷や罵倒などの精神的な暴力を振るい始める[17]。だが、モラル・ハラスメントのメカニズムが機能しているかぎり、加害者の心には安寧がもたらされるので、被害者以外の人には「感じのいい人」として振る舞うことが出来る。そのため、その人が突然モラル・ハラスメントの加害者として振る舞ったとき、周囲には驚きがもたらされ、時にはハラスメントの否認さえなされる[18]。故に、被害者は自分のほうが悪いのではないかと逡巡し、暴力行為自体は相手が悪いが、原因は自分にあると思考してしまう[17][19]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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