モノレール
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世界最古の電動懸垂式モノレールであるヴッパータール空中鉄道

モノレール(: monorail)は、1本の軌条により進路を誘導されて走る軌道系交通機関。語源は、ギリシア語で「ただ一つの」を意味する語に由来する接頭辞「mono-」と、英語で「軌道」を意味する「rail」である。単軌鉄道(たんきてつどう)とも言われ[1]、跨座式(こざしき)と、懸垂式(けんすいしき)の2つに大別できる(後述)。

ただし、厳密には「1本のレール(走路)」ではないものも混ざっており、「一般の二条式鉄道とは異なるものの総称」として機能している。日本の営業路線については日本のモノレールを参照。モノレールは日本では高速交通網にはなっていない。
概要

二条のレールを持つ「鉄道」が最初に商用化されたのは1825年だった。それとほぼ同時期の1824年に、最初のモノレールであるパーマー式モノレールが登場している。

二条式鉄道が一般化する中で「モノレール」は、軌道系交通機関の多大な予算と労力を必要とする用地買収、線路の設置、および保守点検の簡素化をメリットとして軌道系交通機関の発展の中で生き延びてきた。21世紀初頭では、モノレールは、毎時9,000 - 28,000人程度の輸送力を持つ、新交通システムミニ地下鉄と同レベルの中量輸送システムとして位置付けられ、都市での営業路線コース構築の柔軟性や低騒音という側面からも注目されている。他の軌道系交通機関とはさまざまな利害得失があることから、主流とはなっていないものの継続的に新規路線が建設されている。
二条式鉄道との比較

モノレールと一般の二条式鉄道との利害得失は以下の通り。
モノレールの長所

高架化が容易であり(すなわち三次元構造が作りやすい)、占有する敷地面積が狭い。この点は、市街地が形成された後に軌道系交通機関を作るときに、大きなメリットとなる。

高架化する際の構造物の規模が小さくなり、建設費が安く済む。

ゴムタイヤを使用するものについては、鉄道の二条式レールを使うものと比べ、騒音公害が少なく、急勾配にも支障がない
[2]

走行輪に幅の狭いダブルタイヤを使用するため、鉄道より曲線半径の小さい曲線も走行が可能となり、線形の自由度が高い。

サフェージュ式は雨や雪に強い、ラックレールを採用した産業用モノレールは45度(1000パーミル)程度まで登れるなど勾配に強い、簡易型は極めて敷設費用が安いなど、形式によっては突出した長所を持つものがあり、要求と合致した場合は適切な選択肢となる。

モノレールの短所

走行路が軌道桁の1本であるため、走行装置である台車は走行車輪の他に案内車輪や安定車輪を必要とし、1つの台車にゴムタイヤを10個程度を装備して車両の機構がやや複雑となり、車両の価格も高価となる。

鉄道の二条式レールを使うものに比べて高速性能が劣り、ゴムタイヤを使用する場合は
転がり抵抗が鉄車輪よりも大きく、そのため動力費が嵩む。

ゴムタイヤを使用する場合は、鉄車輪式よりも単位走行距離毎の磨耗が早いので交換間隔が短く、交換費用がかかり、稼働率が下がり、維持費を押し上げる一因となる。

ゴムタイヤを使用する場合は、鉄道の鋼車輪より負担荷重が小さく、車両の収容力は普通鉄道より小さい。

跨座式モノレールでは踏切を作ることができない。高架化する場合は欠点にならないが、初期の地表近くに設けられる跨座式モノレールには重大な欠点となった。

高架路線の場合、車両故障などが起きた際に、乗客を避難させるのが難しい。避難路を設けることもできるが、その場合、構造物の規模が大きくなってしまう。

分岐器は重い軌道桁を移動させる方式であり、規模が大きく構造が複雑で転換に若干の時間を要する。分岐器への列車の冒進は大事故となり、その後の復旧も容易ではない。初期のモノレールに分岐器問題がついてまわったことは大きなイメージダウンを生んでおり、モノレール・ソサエティは反論のページ[3]を設けている。

多数の方法が乱立しており、相互に互換性がない。多少の改造で車両の譲渡が可能な場合が多い二条式鉄道とは異なり、設備類の流用可能性がほとんどない。

歴史「#年表」も参照パーマー式モノレールの模式図。

モノレールが開発されたのは19世紀初頭である。たとえばヘンリー・ロビンソン・パーマー (Henry Robinson Palmer) が1821年イギリス特許を取得しており、このあたりがごく初期のものであると考えられている。このモノレールは、高い位置に一本のレールを通し、そこに両フランジ式の車輪をひっかけ、左右に荷台を振り分けてやじろべえのようにバランスを取るというものだった[4]

パーマー式は、荷物の量によって左右のバランスが変わるという欠点があった。その問題を解決するためにさまざまな模索が行われた。

一方で、「レールの真下に車体を持ってくることによって、左右バランスの影響を少なくする」というスタイルが考案された。初期のものである程度知られている実例は1886年アメリカ合衆国ニュージャージー州に実験線が作られた「エノス電気鉄道」[5][6][7]や、ドイツにて1901年に開通したヴッパータール空中鉄道に採用されたランゲン式モノレールなどである。これらはレールの真下に車体を配置することで、左右のバランスという問題を回避した。この「レールの真下に車体を配置する」という方法は懸垂式モノレールの定石となった。

もう一方で「振れ止めとして下方に別のレールを設け、1点支持から3点支持にする」方式が考案された。初期のものに、1876年にアメリカ合衆国フィラデルフィアで開催された「アメリカ合衆国建国百年博覧会」で発表されたリロイ・ストーン式モノレールや、1882年に開発されたラルティーグ式モノレール[8]がある。3点支持化によって左右のバランスは厳密さを要求せず、車体を上方に伸ばすことができるようになった。このレールにまたがり3点で車体を支持するという様式は、マイグス式モノレール逆T字方式モノレールを除く跨座式モノレールの基本形となった。1880年に開業したヴェズヴィアナ鋼索線(ケーブルカー)の軌道は開業当初モノレール方式であった。(のちに通常の方式に変更。)

他に、一本のレールをガイドウェイとして使う方式のものもあり、それらも「モノレール」と呼ばれている。ユーイング式モノレールラルマンジャ式モノレールである。前者についてはその後類例が出ていないが、後者はゴムタイヤ式トラムのTVRと似ているということもできる。

他に、レールは2本以上あるが一般の二条式鉄道とは明らかに異なることから、漫然とモノレールに分類されているものも数多くあり、古典的な方式の節に記す。

モノレールの基本的なコンセプトは、20世紀初頭におおむね出尽くしている。20世紀中盤になってからはアルヴェーグ式スカイウェイ上野式などを契機としてゴムタイヤが導入されたことが一番大きな変化であると言える。その後は規格の統一化や細かい改善が続けられたりしながら現在に至っている。なお、一世紀以上にわたって忘れられていたコンセプトを採用した「逆T字方式」を採用した新しいタイプの跨座式モノレールが20世紀末以降に登場している。
方式

方式として、懸垂式 (Suspended System) と跨座式 (Straddle-beam System) の、大きく二つに分類できる。ただし、過去に懸垂式にも跨座式にも分類できないものも存在した。今後も、たとえばレールから横に車両を突き出して支持する方法(カンチレバー式・片持ち式)など、この分類では区分できないものが登場してくる可能性はある。

電車線で使用される電力は、設置される電車線のスペースや輸送力の関係から直流の1500Vが標準となっている。
懸垂式懸垂式モノレール3種の模式図。左から「ランゲン式」「サフェージュ式」「Iビーム式」。

懸垂式(けんすいしき)とは、車両を吊るように上にレールがある(レールに車両がぶら下がっている)形態のモノレールである。歴史的に跨座式より古く、商業的に成功したのも懸垂式の方が先である。吊り下げ式、ぶら下がり式とも呼ばれる。

懸垂式は、車輪と軌道が車体の上にあり車体が屋根の上を支点に振り子のように揺れる[9][10]ため、横風に対して左右の揺れが大きくなるが、車両の重心が軌条面からかなり下に位置しており、最も安定した方式である。そのため、カーブでは遠心力による重心の移動にあわせて自動的に車体が傾く自然振り子式となり、速度制限が厳しくないという利点もある。積雪にも強い。

日本国内に現存する懸垂式モノレールは、東京都交通局日本車輌製造による上野式(上野動物園)・三菱重工業フランスから導入したサフェージュ式(湘南モノレール千葉都市モノレール)・神戸製鋼所と三菱重工業によるスカイレール、の3方式がある。


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