メントール
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この項目では、環式モノテルペノイドについて説明しています。

オデュッセイア』の登場人物については「メントール (ギリシア神話)」をご覧ください。

カメラメーカーについては「メントール・カメラファブリーク・ゴルツ&ブロイトマン」をご覧ください。

「メンソール」はこの項目へ転送されています。かつて「メンソール」の芸名で活動していたお笑い芸人については「メンソールライト」をご覧ください。

l-メントール

一般情報
IUPAC名p-メンタン-3-オール(許容慣用名より誘導)、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール(系統名)
別名(1R,2S,5R) -メントール
分子式C10H20O
分子量156.27
形状無色結晶
CAS登録番号[2216-51-5]
性質
密度0.890 g/cm3, 固体
融点42–45 °C
沸点212 °C
比旋光度 [α]D−50 (10% エタノール、18 ℃)

メントール (: menthol、: 薄荷醇) は環式モノテルペンアルコールの一種の有機化合物IUPAC命名法の系統名は 2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール (2-isopropyl-5-methylcyclohexanol) 、母骨格がp-メンタンというIUPAC許容慣用名を持つため、そこから p-メンタン-3-オール (menthan-3-ol) という名称も誘導される。和名では薄荷脳という。メンソールなどとも呼ばれる。

ハッカ臭を持つ、揮発性の無色結晶である。メントールにはいくつかのジアステレオマー鏡像異性体がある。そのうちの l-メントールは歯磨き粉チューインガムなどの菓子類、口中清涼剤などに多用されるほか、局所血管拡張作用、皮膚刺激作用等を有するため、医薬品にも用いられる。

ハッカ属の植物に多く含まれる。
歴史

日本では2000年以上前からその存在が知られていたとされる[1]。一方、西洋では1771年にガンビウス (Gambius) によって初めて単離された[2]。天然には (−)-メントールはハッカ油中に少量のメントン、酢酸メンチルなどと共に存在する。この異性体は l-メントール、(1R,2S,5R) -メントールとも呼ばれる。日本のメントールは1位のエピマーである (+)-ネオメントールも少量含んでいる。
構造

天然メントールは純粋なエナンチオマーとして存在し、ほとんどの場合 (1R,2S,5R) 異性体である(下図左下)。ほかの立体異性体として以下のようなものがある。

(−)-メントールのイソプロピル基はメチル基、ヒドロキシ基の両方に対し trans に位置し、下図のように表される。

6員環部分がいす型配座をとった場合に、3つのかさ高い置換基が全てエカトリアル位に位置する最安定配座をとることができるため、(−)-メントールとそのエナンチオマーは上図の8つの異性体の中で最も安定である。

ラセミ体のメントール(racemic menthol)は2つの晶形を持ち、融点はそれぞれ 28 ℃、38 ℃である。純粋な (−)-メントールは4つの晶形を持つ。最も安定なのは α 形で、これは幅の広い針状晶である。
生理作用

メントールを皮膚に接触させると冷やりとした感覚を得る。これは実際に温度が低下するためではなく、冷感を引き起こすTRPM8(transient receptor potential melastatin 8)と呼ばれる受容体活性化チャネルをメントールが刺激することによる。この機構はカプサイシンが同じファミリーのイオンチャネルであるTRPV1を刺激して発熱感をもたらす作用に類似している[3]。なお、人工的に合成されたイシリン(英語版)(1-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(3-ニトロフェニル)-3,6-ジヒドロピリミジン-2(1H)-オン)は、メントールの約200倍の冷感作用を持つ。

メントールは選択的にκオピオイド受容体を作動させることによって鎮痛作用を持つ[4]

イブプロフェンと共に外用薬に配合されたメントールは、局所血管拡張作用によって皮膚のバリア機能を低下させ、イブプロフェンの消炎鎮痛作用を増強する[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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