メルセデス・ベンツ・SLクラス
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SL 350 (R 231)初代 300SL クーペ (1955)(1956)

メルセデス・ベンツ・SLクラス(Mercedes-Benz SL-Class )は、ドイツ自動車メーカーであるメルセデス・ベンツ・グループメルセデス・ベンツブランドで展開しているクーペカブリオレクーペカブリオレタイプの高級スポーツカーである。
概要

SLクラスは2シーターオープンスポーツの最高峰に位置づけられ、下位にはSLKクラスが存在する。5代目はEクラスプラットホームをベースとしている。

「SL」はドイツ語で軽量スポーツカーを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字に由来する。

初代は1952年にル・マン24時間耐久レースを制覇した「300SL」(W194)をベースに、軽量クーペまたはカブリオレとして発展した。しかし、2代目(W113)より高級車・高性能車としての性格を強め、ラグジュアリー性や快適性を重視するコンセプトが現在に至るまで貫かれている。

4代目(R129)まではソフトトップを採用し、その上から装着するハードトップをオプションで販売していたが、その重さや大きさゆえに脱着は容易にできないものであった。しかし、5代目(R230)よりSLKクラスにも搭載されている「バリオルーフ」(電動格納式ハードトップ)を備え、クーペカブリオレとなる。

現在、メルセデス・ベンツが販売する車種の中で最も長い歴史をもっている。

また、「SL55 AMG」が2001年・2002年シーズンの、「SL63AMG」が2008年・2009年シーズンのF1セーフティカーを担当した。
初代 W198(1954年-1963年)初代 300SL詳細は「メルセデス・ベンツ・300SL」を参照
2代目 W113(1963年-1971年)2代目SLクラス(ロードスター)2代目SLクラス(280SL AUTOMATIC)

300SL、190SLに続く第2世代のSLとして1963年ジュネーヴ・モーターショーで機械式燃料噴射装置ボッシュ製)付き2.3L 直6SOHCエンジンを積んだ230SLがデビューした。車の性格としてはスポーツ性の高い300SLよりもツーリングカー的な要素の強い190SLに近いもので、自社製4速ATパワーステアリングも用意されていた。しかしながら、レーシングドライバー並みの腕前をもつ技術担当重役ルドルフ・ウーレンハウトが運転する230SLは、レーサーのマイク・パークス(Mike Parkes)が運転する3Lエンジン搭載のフェラーリ250GTが47.3秒で周回したサーキットを47.5秒で走るという実力ももっていた。スタイリングは当時のダイムラー・ベンツのデザイナーであったフランス人のポール・ブラック(Paul Bracq )によるもので、「パゴダ・ルーフ」と称される屋根の中央が左右より低い逆反り形状になっているのが特徴である。この屋根の形状は次の3代目 R107にも引き継がれる。

車体形状は、

車体に格納される幌が付いたロードスター

ロードスターに着脱可能なハードトップが付いたクーペ

ロードスターから幌とその収納部を取り去り、車室後部に簡易シートを備えた「カリフォルニア・ロードスター」(ハードトップ付もあり)

の3種類があった。

1967年、機械式燃料噴射装置付き2.5L 直6SOHCエンジンを積み、後輪もディスクブレーキ化した250SLへ移行。

1968年、機械式燃料噴射装置付き2.8L 直6SOHCエンジンを積んだ280SLへ移行。

高まる環境への配慮や安全性能の向上を目指して、1971年に後継モデルである3代目 R107へと移行する。

生産台数は230SLが19,831台、250SLが5,196台、280SLが23,885台である。

モータースポーツの分野では、1963年のスパ・ソフィア・リエージェ・ラリーにてオイゲン・ベーリンガー(Eugen Bohringer )の運転する230SLが優勝している。
3代目 R107(1971年-1989年)3代目560SL3代目450SLC 5.0

1971年に登場。シャシーコンポーネンツはミッドサイズのW114から転用され、エンジンはSクラス用のユニットを搭載している。着脱可能なハードトップ/ソフトトップを持つ2シーターのSLのほか、ホイールベースを10インチ(254mm)延長し、4シーター・クーペとしたSLC(C107)[1]が登場している。後者は生産終了となったSクラスクーペ(W111/112)の後継モデルとしての役割も兼ねていた。

R107系は1971年から1989年までの長きに渡って生産され、総生産台数は237,000台に上る。このうち約2/3はアメリカ(主に西海岸)で販売された。これらは先代モデルに比べ大きく、重く、豪華になったことで、SLの頭文字は300SL(W198)時代の「シュポルト・ライヒト」から「スポーツ・ラグジュアリー」に変わったことを意味していた。

1971年4月に350SLが、同年10月には350SLCが生産を開始。なお、アメリカ仕様は発売当初の1972年モデルを350SL/SLCとして販売しているが、450用の4.5リッターエンジンを搭載している(1973年モデルから450SL/SLCに改称)。1973年3月より欧州地域でも450SL/SLCを発売。1974年7月には石油ショックに対応したモデルとして280SL/SLCを前倒しで追加。

1977年9月には高性能版450SLC 5.0を追加している。搭載されるエンジンは450系をベースにストロークを延長した5リッターのユニットでシリーズ最強の240馬力を発生させる。これは同じ馬力ながらも後の500系とは違う専用ブロック(鋳鉄製)である。450SLC 5.0についてはボディにもいくつかの改良が見られ、トランクリッドが軽量タイプに変更されるほか、フロント/リアには大型のスポイラーが装備されている。

1980年には大規模なマイナーチェンジが行なわれ、V8エンジンがW126と同じ新開発の軽量アルミブロック・ユニットに変更された。これに伴い350、450、450 5.0の各V8モデルは380SL/SLCおよび500SL/SLCとなる(M110/直6DOHCエンジンの280系は継続)。同時にATも3速から4速に改良されている(350の欧州仕様はデビュー時より4速AT)。しかしながらSLCは1981年にSクラスクーペ(C126)が登場するとその役目を終え生産を終了。SLCの総生産台数は62,888台であった(うち450SLC 5.0は1,636台、500SLCは1,133台)。残ったSLシリーズ(ロードスター)のうち、アメリカ市場向けのモデルは厳しい排ガス規制に合わせてV8エンジンに改良が施され、排ガスのクリーン化にともない大幅なパワーダウンを余儀なくされる圧縮比の低減(9.0:1→8.3:1※380SL)を行った。

1986年には最後のビッグ・マイナーチェンジを行い、280SLは新しい直6OHCエンジン(M103)の300SLに、380SLはトルクをアップさせた420SL(欧州仕様のみで、米国では560SL)に置き換えられた。エンジンに型式変更がない500SLも出力が向上している。同時に外装はエアスポイラーが付加(オプション)され、アルミホイールが14インチから15インチの新デザイン(通称マンホール型)に改められている。これはパワーアップによりブレーキローター/キャリパーが大型化されたためによる。なお、サスペンション・ジオメトリーの見直しも行なわれ、アームの変更によるトレッドの拡大も行われた。

1989年に後継のR129系へモデルチェンジし、18年間にわたる生産に終止符を打った。最終生産車の500SL(アストラル・シルバー色)はドイツ・シュトゥットガルトのメルセデス・ベンツ・ミュージアムに保管されている。

日本仕様車はウエスタン自動車(現ヤナセ)より輸入され、外装はヨーロッパ仕様車と同一であるが、1970年代の度重なる排ガス規制によりエンジンはアメリカ仕様と同様に大幅なパワーダウンを余儀なくされた。初年度の1972年には350SLと350SLCを導入。翌1973年には450SL/450SLCに置き換えられる。1981年の380SEC導入に伴いSLCの販売が終了し、450SLは380SLとなる。そして1986年より380SLに代わり560SLを導入している。なお、560SLはアメリカ、日本、オーストラリアのみで販売され、ドイツ本国を含むヨーロッパ各地では販売されていない。
ラリー競技ワルデガルドが駆る450SLC 5.0(2008年 Rallye Deutschlandより)

1978年からのWRCにおいて過酷であったマディラウンドであるサファリラリーからはサビエスト・ザサダ、ジョギンダ・シン、アンドリュー・コーワン、トニー・フォークスらによるGr.2の280E[2]が選出され、スポット参戦でありながらポイントを獲得していた。

1979年のサファリ[3]、ラリー・コートジボワール[4]において、ダイムラーの地元ディーラーによるセミワークス体制でビヨン・ワルデガルドハンヌ・ミッコラ、ヴィック=プレストン・ジュニアといったワークスとの掛け持ち勢がスポット的に加わりはじめ、Gr.4エントリーではAT車である450SLC5.0とこれまでの280Eの2グループ体制とし、サファリではミッコラ、コーワン、ワルデガルドが2、4、6位に入る。


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