メラトニン
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名
N-[2-(5-メトキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]エタンアミド
臨床データ
法的規制
AU: 処方箋薬(S4)
UK: 処方箋のみ (POM)
US: OTC
投与経路ヒトでは経口投与(カプセル、錠剤、液体)またはパッチで経皮吸収。実験動物では注射。
薬物動態データ
生物学的利用能30 ? 50%
代謝肝臓でCYP1A2により6-ヒドロキシル化
半減期35 - 50 分
排泄尿
識別
CAS番号
73-31-4
メラトニン(英: Melatonin)は、動物、植物、微生物に存在する内因性ホルモンであり[1][2]、また化学的にN-アセチル-5-メトキシトリプタミン (N-acetyl-5-methoxytryptamine) として知られる[3]。日本では、これまで公に小児に対して使用できる睡眠薬がなかったが、2020年に商品名メラトベルで処方箋医薬品として「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」の適応で初めて承認された[4]。動物では、メラトニンの血中濃度は1日の周期で変化しており、それぞれの生物学的な機能における概日リズムによる同調を行っている[5]。メラトニンによる多くの生物学的な効果は、メラトニン受容体(英語版)の活性を通して生成され[6]、他にも広範囲にわたる強力な抗酸化物質としての役割によって[7]、特に核DNAやミトコンドリアDNAを保護する[8]。
メラトニンはアメリカ食品医薬品局(FDA)によってサプリメントに分類されており、医薬品ではない[9]。メラトニンの徐放製剤は、2007年に欧州医薬品庁によって55歳以上の人々に対して処方箋医薬品としてCircadinが承認されたが、小さな効果しか示していない[10]。メラトニン徐放製剤が症状を呈するオーストラリアでは2009年に承認された[11]。ヒトが長期間にわたり外部から補給することによる完全な影響はまだ判明していない[12]。また、2018年に欧州医薬品庁によって小児用メラトニン徐放製剤Slenytoが「小児及び青年期の自閉スペクトラム症及びスミス・マギネス症候群を伴う不眠症」の適応で承認された[13]。 メラトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンからセロトニンを経て体内合成される。 日中、強い光を浴びるとメラトニンの分泌は減少し、夜、暗くなってくると分泌量が増える。メラトニンが脈拍・体温・血圧などを低下させることで睡眠の準備ができたと体が認識し、睡眠に向かわせる作用がある。また朝日を浴びて規則正しく生活することで、メラトニンの分泌する時間や量が調整され、人の持つ体内時計の機能、生体リズムが調整される。[14]そのため不規則な生活や昼間、太陽光を浴びないような生活を続けるとメラトニンがうまく分泌されず、不眠症などの睡眠障害の原因となる。[14]またメラトニンは幼児期(1?5歳)に一番多く分泌され、歳を重ねる毎に分泌量が減っていく。そして歳を取るとメラトニンの分泌量が減るため、眠る時間が短くなる傾向になる。 服用した場合、0.5mgまでが生理学的な作用で、それ以上が薬理学的な作用となるため、通常の3mgの錠剤では生理学的な量の10倍となる[15]。生体からのメラトニン分泌時間を移動させることができ、0.5mgを午前11時から午後7時に服用することで、メラトニン分泌時間は前進し、午前4時から11時では後退する[15]。前日に入眠できた時間のおよそ6-7時間前の服用で最も前進することが期待できる[15]。 血液脳関門も容易に通り抜けることができて、体全体に行きわたる抗酸化物質であると言われている。メラトニンの抗酸化作用により生殖細胞が保護(活性化)され、またホルモンバランスも改善されるため、不妊症の治療に有効であるとの報告がある[16][17]。ただし、メラトニンには後述の「性腺抑制作用」もある。 メラトニンが増加すると性腺刺激ホルモンが抑制されて生殖腺の発達と機能を抑制し(性腺の退化)、逆にメラトニンが減少すると性腺刺激ホルモンが増加し、性腺刺激ホルモンの過剰分泌が思春期早発につながる。 人間にはその作用は認められなかったが、カエル等の両生類では退色作用が認められている。 ヒトでは、メラトニンは松果体によって生成され、それは小さな内分泌腺であり[18]、脳の中心部にあるが血液脳関門の外側である。メラトニンの信号は、化学的に眠気を起こし体温を低下させることによって睡眠覚醒周期を調節する系の一部を形成するが、中枢神経系(特に視交叉上核、またSCNとも)は[18]、(1度仮定された)メラトニンの信号よりも傍分泌と内分泌系における多くの成分において1日の周期を制御している[19][20]。 乳幼児のメラトニンの濃度は、出生後約3カ月で深夜から午前8時の間に最高濃度が計測され定期的となる[21]。 ヒトでは、メラトニンの90%は肝臓を通して単一通過で除去され、小量は尿中に排泄され[22]、小量は唾液中に見つかる。 ヒトのメラトニンの生成量は年齢に伴って減少する[23]。また子供が10代になるまで、メラトニン放出の毎晩のスケジュールは遅れており、後になって睡眠と起床の時刻を統制する[24]。 松果体によるメラトニンの生成は、網膜への光によって阻害され、暗闇によって可能となる。毎晩のその開始は、薄明かりのメラトニンの開始(dim-light melatonin onset、DLMO)と呼ばれる。 波長が約460から480nmの主に青色の光によってメラトニンが抑制され[25]、それは光の強さと曝された時間の長さに比例する。ハーバード大学医学院では夜の青色光が体内時計を狂わせて数種類のがん(乳がん、前立腺がんなど)や糖尿病、心臓病、肥満などさまざまな生活習慣病の発症リスクが高くなる可能性があることも分かってきた[26]。
合成
作用
催眠・生体リズムの調節作用
抗酸化作用
性腺抑制作用
色素細胞に対する退色作用
ヒト
概日リズム
光依存性・電磁波との関係
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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