メモリスタ
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「メミスター(英語版)」あるいは「メモトランジスタ(英語版)」とは異なります。

メモリスタイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校アメリカ合衆国エネルギー省傘下アメリカ国立エネルギー技術研究所(英語版)によって開発されたメモリスタ
発明蔡少棠 (Leon O. Chua, 1971)
電気用図記号

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メモリスタ (またはメモリスター。英語: memristor, [?m?mr?st?r]; メモリ抵抗器 のかばん語) は、電荷と磁束鎖交(英語版)に関係する非線形2端子(英語版)電気部品である。通過した電荷を記憶し、それに伴って抵抗が変化する受動素子である。過去に流れた電流を記憶する抵抗器であることからメモリスタ (memristor) と名づけられた。

1971年に蔡少棠(英語版)によって言及と命名がなされ、これにより、抵抗器コンデンサインダクタも含む基本的な電気部品の理論上のカルテットが完成した[1]抵抗器キャパシタインダクタに次ぐ新たな受動素子であるので、“第4の回路素子” と呼ばれる。

蔡(英語版)と姜(英語版、朝鮮語版)は後にこの概念をメモリスティブ体系に一般化した[2]。理想的なメモリスタ部品の主要な特性を複数の在来型の部品からなる回路で模倣するようなシステムも、一般にメモリスタと呼ばれる。 このようなメモリスタ・システム技術はいくつか開発されており、特にReRAMがその1例である。

電子デバイスのメモリスティブ特性の特定は論争を呼んでいる。実験的には、理想的なメモリスタはまだ実証されていない[3][4]
基本的な電気部品として

蔡は1971年の論文で、非線形抵抗器 (電圧対電流)、非線形コンデンサ (電圧対電荷)、および非線形インダクタ (磁束鎖交対電流) の間に理論上の対称性を特定した。この対称性から、彼は磁束と電荷を結び付ける第四の基礎的非線形回路要素の特性を推測し、これをメモリスタと呼んだ。線形 (または非線形) 抵抗器とは対照的に、メモリスタは過去の電圧または電流の記憶を含め、電流と電圧の間にダイナミックな関係を持っている。他の科学者は、バーナード・ウィドロー(英語版)のメミスター(英語版)のようなダイナミックメモリ抵抗器を提案していたが、蔡は数理的普遍性を導入した。抵抗器、キャパシタ、インダクタ&メモリスタの概念の対称図
由来と特性

メモリスタは、通過した電荷 q ( t ) {\textstyle q(t)} と端子間の磁束鎖交 Φ m ( t ) {\textstyle \Phi _{\mathrm {m} }(t)} が非線形関数関係であるような素子と定義される。すなわち、 f ( Φ m ( t ) , q ( t ) ) = 0 {\displaystyle f(\mathrm {\Phi } _{\mathrm {m} }(t),q(t))=0} と表わされる[5]。磁束鎖交 Φ m {\textstyle \Phi _{\mathrm {m} }} は、インダクタの回路特性から一般化される。ここでは磁場を表すものではなく、その物理的意味については以下で説明する。 記号 Φ m {\textstyle \Phi _{\mathrm {m} }} はすなわち、電圧の時間積分と見なすことができる[6]

Φ m {\textstyle \Phi _{\mathrm {m} }} と q {\textstyle q} の関係において、一方の他方に対する導関数は、一方または他方の値に依存する。そしてそれゆえ、それぞれの導関数は電荷を伴なう磁束の変化の電荷依存率を述べるメモリスタンス関数によって特徴づけられる。 M ( q ) = d Φ m d q {\displaystyle M(q)={\frac {\mathrm {d} \Phi _{\rm {m}}}{\mathrm {d} q}}} 磁束を電圧の時間積分として、電荷を電流の時間積分として代入すると、より便利な形式が得られる: M ( q ( t ) ) = d Φ / d t d q / d t = V ( t ) I ( t ) {\displaystyle M(q(t))={\cfrac {\mathrm {d} \Phi _{\rm {}}/\mathrm {d} t}{\mathrm {d} q/\mathrm {d} t}}={\frac {V(t)}{I(t)}}} メモリスタを抵抗、キャパシタ、インダクタに関連付けるには、デバイスを特徴付ける項 M ( q ) {\textstyle M(q)} を分離し、常微分方程式として記述すると便利。

素子特徴的性質(英語版) (単位)常微分方程式
抵抗器(R)抵抗 (V / A, or Ω) R = d V d I {\textstyle R={dV \over dI}}
キャパシタ(C)静電容量 (C / V, or ファラド) C = d q d V {\textstyle C={dq \over dV}}
インダクタ(L)インダクタンス (Wb / A, or ヘンリー) L = d ϕ m d I {\textstyle L={d\phi _{m} \over dI}}
メモリスタ(M)メモリスタンス (Wb / C, or Ω) M = d ϕ m d q {\textstyle M={d\phi _{m} \over dq}}

上記の表は I {\textstyle I} 、 q {\textstyle q} 、 Φ m {\textstyle \Phi _{m}} 、および V {\textstyle V} の微分の有意義な比率を全てカバーする。 I {\textstyle I} は q {\textstyle q} の導関数であり、また Φ m {\textstyle \Phi _{m}} は V {\textstyle V} の積分であるため、 d I {\textstyle dI} を d q {\textstyle dq} に、または d Φ m {\textstyle d\Phi _{m}} を d V {\textstyle dV} に関連付けることができるデバイスはない。このことから、メモリスタは電荷に依存する抵抗であると推測できる。もし M ( q ( t ) ) {\textstyle M(q(t))} が定数の場合、オームの法則 R ( t ) = V ( t ) / I ( t ) {\textstyle R(t)=V(t)/I(t)} が得られる。ただし、 M ( q ( t ) ) {\textstyle M(q(t))} が自明でない場合、 q ( t ) {\textstyle q(t)} と M ( q ( t ) ) {\textstyle M(q(t))} は時間とともに変化する可能性があるため、方程式は同等ではない。時間の関数として電圧を解くと、 V ( t ) =   M ( q ( t ) ) I ( t ) {\displaystyle V(t)=\ M(q(t))I(t)} が得られる。この方程式は M {\textstyle M} が電荷によって変化しない限り、メモリスタが電流と電圧の間で線形関係を定義することを示している。非ゼロ電流は時間変化する電荷を意味する。交流電流は(しかしながら)、 q {\textstyle q} の最大変化によって M {\textstyle M} に大きな(英語版)変化を引き起こさない限り — 正味の電荷の移動を伴わずに測定可能な電圧を誘導することにより回路動作の線形依存性を明らかにすることができる。

さらに、電流が印加されない場合、メモリスタは静的である。 I ( t ) = 0 {\textstyle I(t)=0} の場合、 V ( t ) = 0 {\textstyle V(t)=0} であり、 M ( t ) {\textstyle M(t)} は定数であることがわかる。これはメモリー効果の本質である。

同様に、 W ( ϕ ( t ) ) {\textstyle W(\phi (t))} をメモダクタンスとして定義できる[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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