メチルフェニデート
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メチルフェニデート

IUPAC命名法による物質名
IUPAC名

methyl phenyl(piperidin-2-yl)acetate

臨床データ
胎児危険度分類

C

法的規制

AU: Controlled (S8)

CA: Schedule III

UK: 処方箋のみ (POM)

US: スケジュールII

投与経路経口、舌下、皮下、静脈、経鼻
薬物動態データ
生物学的利用能11–52%
血漿タンパク結合小児15.2%、成人16.2%[1]
代謝肝臓
半減期2?4時間
排泄尿
識別
CAS番号
113-45-1
ATCコードN06BA04 (WHO)
PubChemCID: 4158
DrugBankDB00422
ChemSpider4015
KEGGD04999
化学的データ
化学式C14H19NO2
分子量233.31 g/mol
SMILES

COC(=O)C(C1CCCCN1)c1ccccc1

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メチルフェニデート(英語: Methylphenidate)は、ドーパミン及びノルアドレナリン再取り込み阻害作用によって前頭前皮質線条体を刺激し、脳機能の一部の向上や覚醒効果を主な作用とする精神刺激薬である[1]。日本ではナルコレプシーの治療薬にリタリン(Ritalin[2])と、ADHDの治療薬に徐放製剤のコンサータ(Concerta[3])が認可されている。同効薬として、精神刺激薬のアンフェタミンペモリンモダフィニルなどがある[1]

日本でのリタリンの適応症はナルコレプシー、コンサータの適応症は注意欠陥・多動性障害(ADHD)である。

リタリンとコンサータについて、それぞれ流通管理委員会が設置され、流通が厳格に管理されており、登録された病院薬局でしか処方、薬の引き渡しができない。

第一種向精神薬麻薬及び向精神薬取締法)と処方箋医薬品劇薬医薬品医療機器等法)に指定されている。

メチルフェニデートは、アンフェタミンメタンフェタミンと比較し依存形成しにくいものの、精神的依存の報告がある[1]。一般的な副作用は、眠気、不眠、頭痛・頭重、注意集中困難、神経過敏、性欲減退、発汗、抗コリン作用(口渇、排尿障害、便秘、食欲不振、胃部不快感、心悸亢進、不整脈、筋緊張など)などである[1]
世界での歴史リタリンの錠剤メチルフェニデートの消費量 約85%がアメリカ合衆国で消費されている。単位は100万錠(国連による統計)

メチルフェニデートはスイスのチバ社(Ciba Pharmaceutical Company, 現ノバルティス社)によって1944年に合成され[4]、1954年に特許が取得され、ドイツで発売された。当初はアメリカにおいて、うつ病、慢性疲労、ナルコレプシーなどの治療薬として定められていた。1960年代の初頭に、当時、多動症や微細脳機能障害 (minimal brain dysfunction, MBD) として知られていた ADHD の子供に対して、ほかの中枢神経刺激薬による先行研究[5]に基づきながら、使用され始めた。今日ではメチルフェニデートは世界で最も一般的に認められている ADHD の治療薬である。概算ではメチルフェニデートの 75% 以上は子供に処方されており、男児は女児の4倍の量である。1990年代には、特にアメリカ合衆国において、メチルフェニデートの生産量・処方量は著しく上昇した。ADHD がより理解され、医療や精神医療の分野でより一般的に受け入れられるようになったためである。

最も有名なメチルフェニデート製剤であるリタリンは、開発したチバ社が1954年から発売している商品で、商品名「Ritalin」は開発者レアンドロ・パニゾンの妻マルゲリータ(Margherita)の愛称「Rita」に由来している[6]。現在は後身のノバルティス社によってアメリカ合衆国で生産、販売が続けられている。メチルフェニデートはメキシコアルゼンチンの契約薬品製造メーカーにおいても製造されており、アメリカ合衆国では、メチリンなど様々なメチルフェニデートのジェネリック医薬品がいくつかの製薬会社によって販売されている。リタリンは日本をはじめ、イギリスドイツなどヨーロッパ諸国でも販売されているが、8割以上はアメリカで消費されている[7]

2000年4月にアメリカ合衆国で認可されたコンサータは1日1回服用型の徐放性のメチルフェニデート製剤である。研究によって、コンサータのような長期作用型の調合は、速放性の処方と同等かそれ以上の効果があることが示されている[8][9]。処方できる医師、調剤できる薬局を限定する登録制にするなど流通を管理する仕組みの導入を完了したことにより、日本においても2007年12月19日よりコンサータがヤンセンファーマより発売開始となった。コンサータのカプセル外皮の一方にはレーザーで開けた孔があり、内部に薬物層2層、孔の反対側にプッシュ層がある。カプセル周囲も薬物でコーティングされている。服用すると1時間以内に表面コートが溶け投与量の22%を放出し[10]、素早く血中濃度を上昇させ、次にプッシュ層が水分浸透で膨張し薬物層を穿孔から押し出すことで12時間にわたり持続的に効果を保つしくみである。放出を終えたカプセルは便中に排泄される。

アメリカ合衆国、日本などでは、コンサータはヤンセンファーマが製造している。アメリカではいくつかのコンサータのジェネリック製剤もあるが、先発品との治療効果の違いが認められる製剤があることからFDAは認可撤回を提案している[11]。ただしアクタビス(英語版)のオーソライズドジェネリック製剤は、先発品と同一とみなされ撤回対象に含まれなかった[12]

2006年4月7日、シャイアー(Shire plc)は、1日1回のメチルフェニデート経皮パッチ製剤デイトラーナ(Daytrana) がFDAに承認されたことを発表した[注釈 1][13]
日本での歴史

1957年(昭和32年)10月8日にリタリン錠としてうつ病・抑うつ性神経症で承認され、1958年(昭和33年)3月1日にリタリン散としてうつ病・抑うつ性神経症、1978年(昭和53年)10月3日にナルコレプシーにも承認、薬価基準収載日は1961年(昭和36年)11月1日である。1998年(平成10年)9月、再評価結果通知に伴い軽症うつ病、抑うつ神経症を抗うつ薬で効果の不十分な難治性うつ病、遷延性うつ病に対する抗うつ薬との併用に変更になる[14]。2005年(平成17年)3月6日には厚生労働省告示第107号により1回30日間分までの処方に制限され、2015年現在もなお同じ制限が課されている。
リタリン騒動

2007年(平成19年)9月18日、リタリンを服用し続けていた25歳男性が、薬物依存症になった末、2005年(平成17年)に飛び降り自殺する事件が起きたことが報道された。当該男性は、愛知県名古屋市の男性医師によって、リタリンを処方されたことが毎日新聞の報道で明らかになり、リタリンに関する問題が日本において広く知られるようになり、以降、テレビや新聞によるリタリン使用に関する報道が過熱していった[注釈 2][16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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