メチオニン
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メチオニン


IUPAC名

Methionine
別称2-amino-4-(methylthio)butanoic acid
識別情報
略称Met, M
CAS登録番号59-51-8 (DL体), 63-68-3 (L体), 348-67-4 (D体)
PubChem876
ChemSpider853
5907 (L体)
UNII73JWT2K6T3
EC番号200-432-1
KEGGD04983 (医薬品、DL体)
C00073 (L体)
ChEMBLCHEMBL42336
ATC分類V03AB26,QA05BA90 (WHO), QG04BA90 (WHO)
SMILES

CSCCC(C(=O)O)N

CSCCC(C(=O)O)N

InChI

InChI=1S/C5H11NO2S/c1-9-3-2-4(6)5(7)8/h4H,2-3,6H2,1H3,(H,7,8)Key: FFEARJCKVFRZRR-UHFFFAOYSA-N

InChI=1/C5H11NO2S/c1-9-3-2-4(6)5(7)8/h4H,2-3,6H2,1H3,(H,7,8)

特性[2]
化学式C5H11NO2S
モル質量149.21 g mol?1
外観白色結晶粉末
密度1.340 g/cm3
融点

281 °C(分解)
への溶解度可溶
酸解離定数 pKa2.28 (カルボキシル基), 9.21 (アミノ基)[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

メチオニン(: methionine)は、側鎖に硫黄を含んだ疎水性アミノ酸である。
概要

対応するコドンが単一なアミノ酸は2つだけであり、1つはAUGでコードされるメチオニン、もう1つはUGGでコードされるトリプトファンである。コドンAUGはリボソームmRNAからのタンパク質翻訳を「開始」させるメッセージを送る開始コドンとしても重要である。結果として真核生物および古細菌では全てのタンパク質N末端はメチオニンになる。しかしながら、これは翻訳中のタンパク質に限るものであり、普通は翻訳完了後に修飾を受けて取り除かれる。メチオニンはN末端以外の位置にも出現する。なお、ヒトにとってメチオニンは必須アミノ酸の1つである。
性質

血液中のコレステロール値を下げ、活性酸素を取り除く作用がある。ピルビン酸へと代謝する経路が存在するため、糖原性を持つ。

硫黄移動経路によりシステインカルニチンタウリンの生合成や、レシチンリン酸化などリン脂質の生成に関与する。メチオニンが不適切な変換を受けると動脈硬化症が起こることがある。メチオニンはキレート剤でもある。メチオニンの誘導体である S-アデノシルメチオニン (SAM) はメチル基の供与体としてはたらく。
存在

メチオニンを多く含む食物として果物野菜ナッツマメ科の植物があげられる。特にホウレンソウグリーンピースニンニク、ある種のチーズトウモロコシピスタチオカシューナッツインゲンマメ豆腐テンペに豊富に見られる。肉類では鶏肉牛肉魚肉など大部分のものに含まれる。
生合成

メチオニンはヒトの体内で作り出せない必須アミノ酸である。一方、植物微生物アスパラギン酸システインから生合成を行う。まずアスパラギン酸はβ-アスパルテートセミアルデヒドに変換されるが、これはリシンスレオニンの生合成経路でも重要である。次にホモセリンアシルトランスフェラーゼによってホモセリンに良い脱離基が付加され、システインと反応してシスタチオニンとなる。これが開裂させられてホモシステインを与え、N5-メチルテトラヒドロ葉酸(N5-methyl-THF)でメチル化されてメチオニンとなる。補因子として、シスタチオニン-γ-シンターゼとシスタチオニン-β-リアーゼは共にピリドキシル-5'-ホスフェートを、ホモシステインメチルトランスフェラーゼはビタミンB12を必要とする。

テトラヒドロ葉酸(THF)による代謝とビタミンB12によるTHFの再生産、de:Folsaure=葉酸、DHF=ジヒドロ葉酸、THF=テトラヒドロ葉酸、Vit.B12=ビタミンB12、Methyl-Vit.B12=メチルコバラミン、Methionin=メチオニン、Methionin Syntase=5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、Homocystein=ホモシステイン、N5-Methyl-THF=5-メチルテトラヒドロ葉酸、N5,N10-Methylene-THF=5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、N10-Formyl-THF=10-ホルミルテトラヒドロ葉酸、dUMP=デオキシウリジン一リン酸NADPHDNA
他の生化学的過程

哺乳類はメチオニンを生合成できないが、様々な生化学的過程において利用している。メチオニンはメチオニンアデノシルトランスフェラーゼによってS-アデノシルメチオニンに変換され、これはメチルトランスフェラーゼによるメチル基移動(メチル化)に用いられる。メチル基の移動後は S-アデノシルホモシステイン (SAH) となり、アデノシルホモシステイナーゼホモシステインに変換される。

ホモシステインの行く先は2つある。1つはメチオニンシンターゼまたはBHMTによってメチオニンに戻る経路で、もう1つはシステインに変換されるスルフレーション経路である。後者では、まずシスタチオニン-β-シンターゼでセリンと結合されてシスタチオニンとなる。次に(上記の生合成過程ではシスタチオニン-β-リアーゼで分解されるが)、シスタチオニン-β-リアーゼによってシステインと α-ケト酪酸になる。さらにα-ケト酸デヒドロゲナーゼによってα-ケト酪酸はプロピオニルCoAに変換され、最終的にはスクシニルCoA(コハク酸CoA)へと代謝される。

プロピオニルCoAはビオチン依存性酵素であるプロピオニルCoAカルボキシラーゼによって (S)-メチルマロニルCoAに変換される。この生成物はさらにメチルマロニルCoAエピメラーゼによって (R)-メチルマロニルCoAに変換される。(R)-メチルマロニルCoAは、メチルマロニルCoAムターゼによってスクシニルCoAに変換されるが、この酵素は炭素-炭素結合の移動を触媒するためのコバラミンビタミンB12)を要する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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