メタボリックシンドローム
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メタボリックシンドローム

肥満
概要
診療科内分泌学, 内科学
分類および外部参照情報
ICD-9-CM277.7
OMIM605552
DiseasesDB31955
Patient UKメタボリックシンドローム
MeSHD024821
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メタボリックシンドローム(: Metabolic syndrome)とは、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖高血圧脂質異常症のうち2つ以上の症状が一度に出ている状態をいう。日本語に訳すと代謝症候群という。単にメタボとも言われる。

以前では別の用語で、高血圧症・肥満・高脂血症・糖尿病[1] などが併発したものをシンドロームX[1]、死の四重奏[1]インスリン抵抗性症候群[1]、マルチプルリスクファクター症候群、内臓脂肪症候群などと呼称されてきた病態を、メタボリックシンドロームは統合整理した概念である。国際的な診断基準は確立しておらず[2]世界保健機関(WHO)、アメリカ合衆国日本ではそれぞれ診断基準が異なる。
概要

高血糖や高血圧はそれぞれ単独でもリスクを高める要因であるが、これらが多数重積すると相乗的に動脈硬化性疾患の発生頻度が高まるため、リスク重積状態を「より早期に把握」しようという試みが考えられてきた。このようなリスクの集積は、偶然に起きるのではなく、何らかの共通基盤に基づくと考えられている。日本では特に内臓脂肪の蓄積による肥満が共通の基盤として着目され、腹部肥満(男性型肥満、上半身型肥満、リンゴ型肥満)に対して注意が呼びかけられている。特に日本人は民族的特徴から、米国人よりこのメタボリックシンドロームに悪影響を受けやすいとされる[3]

2008年4月から始まる特定健診制度(糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査)では、メタボリックシンドロームの概念を応用して糖尿病対策を行う事を目指し、40歳から74歳までの中高年保険加入者を対象に健康保険者に特定健診の実施を義務化すると共に、メタボリックシンドローム該当者、または予備軍と判定されたものに対して特定保健指導を行うことを義務づける。

5年後に成果を判定し、結果が不良な健康保険者には、財政的なペナルティを課す事によって実行を促す。厚生労働省は、中年男性では.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄2の発生率を見込むなど、約2000万人がメタボリックシンドロームと予備軍に該当すると考えており、これを平成24年度末までに10%減、平成27年度末までに25%減とする数値目標を立てている。これにより医療費2兆円を削減する。「医療制度改革大綱」(平成17年12月1日 政府・与党医療改革協議会)の数値目標をなぞったもの。
経緯

1951年、Jouve、Vagueらは男性型肥満が心血管疾患の原因になることを指摘したが、1981年、Rudermannらは正常体重でも肥満の人と同様に心血管疾患になりやすい(MONW)人が存在し、これが高インスリン血症によるであろうと報告した。そして、1988年、Reavenによって生活習慣病の三大要素(高血圧・糖代謝異常・脂質代謝異常)がインスリン抵抗性を基礎に集積して、心血管疾患を引き起こすという学説が、「Syndrome X」として報告され、その翌年にKaplanが男性型肥満を加えて「死の四重奏」と命名したのを契機に、インスリン抵抗性症候群の研究が盛んとなり、1993年、Hotamisligilが肥満とインスリン抵抗性の間に炎症が介在することを指摘し、1998年にWHO(世界保健機関)が『メタボリック症候群』という名称でその診断基準を発表した事により、「メタボ」としても一般に知られるようになった。

2001年に簡便なNCEP-ATPIII診断基準ができて、これが世界的に普及したが、2004年にRidkerらが、炎症マーカーであるCRPを診断項目に加えることを提唱し、2005年に、国際糖尿病連盟(IDF)は、腹部肥満を必須項目とする、メタボの世界統一診断基準を作成している。

2005年、アメリカ循環器学会と国立心臓肺血液研究所は、IDF診断基準よりもNCEP-ATP III診断基準の方が優れている、という共同声明を発表し、アメリカ糖尿病学会とヨーロッパ糖尿病学会は、どの診断基準も問題であり、人々に「メタボリックシンドロームというレッテル」を貼ってはいけない、という共同声明を発表した。
診断基準

基準日本肥満学会(2005年)国際糖尿病連合(2005年)改訂NCEP-ATPIII(2005年)
腹囲男性85cm、女性90cm以上男性90cm、女性80cm以上
中性脂肪
HDL150 mg/dL以上
40 mg/dL未満150 mg/dL以上
男性40mg/dL、女性50mg/dL未満
血圧収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上
空腹時血糖値110 mg/dL以上100 mg/dL以上


その他

九州大学(久山町研究グループ)の提案(2006年)日本肥満学会の基準の腹囲を男性90cm、女性80cm以上に置換したもの。

腹囲をCRPに置換した提案(2006年)改訂NCEP-ATPIIIの基準の腹囲をCRP0.65 mg/L以上に置換したもの。

治療と予防体脂肪は密度が低く、体積が大きい。体脂肪が数値上ではたった1kg(ウエスト-1cm)の減少でも、500mlペットボトル2本分と乳酸菌飲料3.5本分が人体から減少している。[4]

「自覚症状の緩和」ではなく、合併症予防に目標がおかれ、動脈硬化の発生・進展防止が治療目標となり、脂肪蓄積の進行防止・解消を目的に食事療法による摂取カロリーの適正化と、脂肪燃焼を促す目的での運動療法が基本となる。

また、食事・運動といった生活習慣の改善により解消されない危険因子(耐糖能異常脂質代謝異常高血圧など)に対しては薬物療法を並行して実施する場合もある。また、喫煙は個別の動脈硬化の危険因子である事が疫学的に証明されているので、禁煙努力も並行して行うべきとされている。

人間ドックなどの健康診断で無自覚のまま動脈硬化の進行が検査などにより発見されたり、虚血性心疾患脳卒中などを発症した場合は、それに基づく治療が行われる(詳細は虚血性心疾患および脳卒中を参照)。

また、メタボリックシンドロームを予防するために、肥満者の「流行」を予防する事が重要視されている。現在、ボディマス指数(BMI)で30以上は、アメリカでは30%以上、日本では3%である。
問題点

このメタボリックシンドロームに関して異論があり、下にそれを記す。
定義に関する問題

近年、心血管疾患と糖尿病は、肥満の流行する先進文明諸国の主要な疾患および死因となっており、その原因の解明と危険因子の同定のために多くの努力がなされてきた。危険因子の同定が進むにつれて、それらが同一個人に集積する傾向があることが明らかとなり、この危険因子の集積はメタボリック症候群と呼ばれるようになった。

メタボリック症候群の主要な機序は、インスリン抵抗性[5][6]、腹部肥満[7][8]、炎症[9][10] と考えられ、他に、食事[11][12][13]、喫煙[14]、運動不足[15]、加齢[16]、社会経済的要因[13]、ホルモン失調状態[17] などが考えられる。

1981年、Rudermanらは代謝的に肥満だが正常体重(MONW)の人々が存在し、高インスリン血症と脂肪細胞の肥大化が特徴であることを指摘し[18]、1988年、Reavenはインスリン抵抗性と高インスリン血症、高中性脂肪血症、低HDL血症、高血圧が集積して糖尿病と心血管疾患に至るとするsyndrome Xという概念を提唱した[5]


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