メイラード反応
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ルイ・カミーユ・マヤール(メイラード)

メイラード反応(メイラードはんのう、: Maillard reaction)とは、還元糖とアミノ化合物(アミノ酸ペプチドおよびタンパク質)を加熱したときなどに見られる、褐色物質(メラノイジン)を生み出す反応のこと。褐変反応 (browning reaction) とも呼ばれる。アミノカルボニル反応の一種であり、褐色物質を生成する代表的な非酵素的反応である。メイラード反応という呼称は、20世紀フランスの科学者ルイ=カミーユ・マヤールがこの反応の詳細な研究を行ったことから名付けられた[注釈 1]

食品工業において、食品の加工や貯蔵の際に生じる、製品の着色、香気成分の生成、抗酸化性成分の生成などに関わる反応であり、非常に重要とされる。メイラード反応は加熱によって短時間で進行するが、常温でも進行する。ただし、その場合には長時間を要する。
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出典検索?: "メイラード反応" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2012年8月)

メイラード反応は非常に多くの素反応からなる過程であり、その全容は未だ十分には解明されていない。

アミノ酸と還元糖が反応し、窒素配糖体を経由してシッフ塩基を形成した後、アマドリ転位によってその反応生成物を生じるまでの反応を初期段階、アマドリ転位生成物(2,3-エナミノール型とケト形の2種)以降を中期段階と呼ぶ[1]

メイラード反応の進行には、反応系のpHが大きく関与することが知られている。特に中性から塩基性の条件下では中期段階以降でラジカルの生成が促進されて、褐色色素の生成が促進される。

また、反応中間生成物より分岐し、ストレッカー分解反応へ向かう経路も存在する。ストレッカー分解反応の生成物も、食品の加熱加工の際に生じる香気に大きく関与している。
初期段階

アミノ化合物と還元糖が縮合し、シッフ塩基と呼ばれる窒素配糖体を形成する[1]。シッフ塩基の二重結合(-N=C-)は転位し(アマドリ転位)、エノール形の生成物(1,2-エナミノール)を生じる[1]。1,2-エナミノールは互変異性化したケトン型構造との間で平衡状態となっている(ケト-エノール互変異性)。

生成物のエノール形(1,2-エナミノール)は還元性を示す、反応性の高い物質である。また、生成物のケト形は2,3-エノール形の物質(2,3-エンジオール)にも変化するが、これも還元性を示す反応性の高い物質である。
中期段階

アマドリ転位生成物が1,2-エナミノールまたは2,3-エンジオールを経由して分解していく過程で、この段階での反応の多くは脱水反応である。2,3-エンジオールを経由する反応は、焙焼においては主となる経路であると言われている。

この段階ではオソンや3-デオキシオソンなどの反応性に富んだケトアルデヒドや、ピロールアルデヒド、フルフラールなどを生成する。また、メチルジケトン中間体を経由して生成するピルブアルデヒドは非常に強い反応性を持つ。
最終段階

フルフラール、ピロール-2-アルデヒド、3-フラノン、オソン、3-デオキシオソン、メチルジケトン中間体(1-デオキシオソン)、アマドリ転位生成物などの反応中間体や生成物と、各種アミノ酸やペプチド、タンパク質などが重合してメラノイジンを生成する反応が終期段階であるが、その過程はまだ明らかにされていない。
反応生成物
メラノイジン

メイラード反応によって生じる褐色色素のことをメラノイジンと呼ぶ。メラノイジンは酸素や窒素を含む、多様な高分子化合物からなる混合物である[1]

メラノイジンは、それ自身がフリーラジカルであるが、同時にラジカル捕捉剤としての作用を持つため、食品の酸化を抑制する働きがある。この作用には、メラノイジンが金属とキレートを生成して封じ込めることが関与しているとも言われる。

メラノイジンは、in vitroでは抗酸化作用活性酸素消去活性、ヘテロ環アミノ化合物(発癌物質)に対する脱変異原活性などを有するとされている[2][3]。例えば、メイラード反応によって生じたトリプトファン・グルコース反応液の抗酸化能はビタミンEであるα-トコフェロールよりも強く、合成抗酸化剤のBHABHTに匹敵するものであることが明らかになった[4]

グルコースグリシンによるアミノカルボニル反応で生成した褐変物質による着色度が高いほどDPPHラジカル消去能も高くなる。着色度を示す440 nmにおける吸光度とDPPHラジカル消去能の間にはr=0.993の非常に高い正の相関関係が認められる。また、玉ネギを加熱し、黄色、あめ色、茶色と褐変が進行するにしたがってDPPHラジカル消去能が上昇する、との報告がある[5]

例えば、味噌は優れた抗酸化能力を有し、味噌のラジカル補足能力はその大半をメラノイジンが担っており、味噌の色調が濃いほどその能力が高まっているとする研究がある[6]。動物実験では、味噌の摂取で肺癌胃癌乳癌肝臓癌大腸癌の抑制効果が認められ、味噌の熟成度が高いほど効果が高かったとの報告がある[7]
香気成分の生成

メイラード反応に伴って特有の香気成分も生じる[1]。その香気は反応のもととなったアミノ酸や糖の種類、反応条件などによって変化し、焦げ臭、カラメル臭、ナッツ様の臭気、パン様の臭気、チョコレート臭、時にカビ臭やスミレ様の臭気など、様々な香気を生じる。

各種アミノ酸とグルコースを褐変反応させたときの香気は以下の通り。

アミノ酸100℃加熱時の臭気180℃加熱時の臭気
バリンライ麦パンの様な臭い刺激のあるチョコレートの臭い
ロイシン甘いチョコレートの臭いチーズを焼いた臭い
イソロイシンカビ
フェニルアラニンスミレの花の臭いライラックの花の臭い
メチオニンジャガイモの臭いジャガイモの臭い
スレオニンチョコレートの臭い焦げ臭
ヒスチジン-トウモロコシパンの臭い
アスパラギン酸砂糖菓子の臭いカラメル臭
グルタミンチョコレートの臭いバターボールの臭い
アルギニンポップコーンの臭い焦げた砂糖の臭い


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