ムーミン
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「ムーミン」のその他の用法については「ムーミン (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ムーミン(スウェーデン語: Mumin、フィンランド語: Muumi、英語: Moomin)は、スウェーデンフィンランド人の女性作家トーベ・ヤンソンの「ムーミン・シリーズ」と呼ばれる一連の小説と絵本、および末弟ラルス・ヤンソンと共に描いた[注 1]「ムーミン漫画」作品の総称、あるいはそれらとそれらを原作とする二次著作作品の総称。または、同作品に登場する架空の生物種族名であり、同時に主人公(主要な登場生物)の名前でもある「ムーミントロール」の略称あるいは愛称。
概要埼玉県飯能市にあるあけぼの子どもの森公園。ムーミン谷をモチーフにしており、ムーミン屋敷やムーミンに関する資料館「森の家」などがある。
設定

トロールは北欧の民間伝承に登場する、広い意味での妖精の一種である。「トロール」も参照

『ムーミン谷の十一月』(講談社刊/鈴木徹郎訳)の訳者解説によれば、「ムーミンは動物か、人間か?」と問われたトーベの答えは、スウェーデン語(トーベはスウェーデン語話者)の「Varelser」(存在するもの) でありトーベはムーミンのことを決して妖精とは答えなかったそうだ。 精霊や妖怪ではなく、目にははっきり見えなくてもすぐ近くで生きている存在だと、伝えたかったためかもしれない。

ムーミンの物語に登場するトロールは、名前こそ借りているもののこれとは異なる、トーベ・ヤンソンが独自に創造した架空のいきものである。人型の登場人物も人間ではなく、同様に架空の小人の一種である[注 2]。なお、原作中で登場するキャラのうち、『ムーミンパパの思い出』に登場するミムラたちが住む丸い丘の国の王様はミムラやムーミントロールたちよりわざわざ圧倒的に大きく描かれているので人間の可能性がある。

第一作である「大きな洪水と小さなトロール」では、こうしたトロールたちは人間と同じ世界で共存しているが人間には察知されない存在として描かれた。昔はタイルストーブの裏に隠れて住んでいたという記述があり、その大きさは人間よりも遥かに小さいものと設定されていた(終盤の籐椅子に乗っているシーンで猫の親子と比較するとムーミンママが子猫程度)ことがうかがえる。

ただしムーミン達の大きさは作者自身も細かく決めていたわけではないらしく、次作の『ムーミン谷の彗星』では子猫の肩高がスニフの足程度に描かれている(なお、この本は何度か改訂版が出されており、初版の『彗星追跡(KOMETJAKTEN)』ではこの生物は子猫ではなくキヌザル(マーモセット)であった[1]。ただしキヌザルもいちばん小さいピグミーマーモセットでさえ体長11?15cmなので子猫と比べて極端に小さいわけではない。)のに、同じ話内で実物は体長30cmほどのじゃこうねずみ(マスクラット)がスニフより大きいムーミンパパよりさらに大柄に描かれているという描写があるほか、コミックス版では何度か登場する「フィリフヨンカが飼っている牛」がムーミンたちと比べ現実における人間と牛ぐらいの比率になるなど、人間並みになっている描写もある。
舞台

ムーミントロールたちは、妖精たちの住む谷・ムーミン谷(: Mumindalen)に住んでいる。

ムーミン谷には、東に「おさびし山」(: Ensliga bergen、: Lonely Mountains。正しくは「お寂し山」)がそびえ、その麓から川が流れている。その川にはムーミンパパの作った橋がかかっていて、その橋の先にムーミン屋敷がある。ムーミン屋敷の北側には、ライラックの茂みがある。西は海に面しており、桟橋の先には水浴び小屋がある。
登場人物

ムーミンシリーズはキャラクターが多く情報量が膨大になるうえ、トーベ・ヤンソン本人によるものだけでも小説、絵本、新聞連載漫画、戯曲など様々なメディアで性格付けや人間関係などが異なることがよく見られ、レギュラーキャラクターもメディアごとに違うため、ここには主要キャラであっても名前などは記載しない。詳細は「ムーミンの登場人物」を参照
ムーミン・シリーズ (原作)

作者のトーベ・ヤンソン画家でもあり、ムーミンの原型となるキャラクターは小説執筆以前にも風刺雑誌『ガルム』などでたびたび描かれていた[2]。小説として初めて登場するのは1945年にスウェーデン語で著された『小さなトロールと大きな洪水』で、その後ムーミン・シリーズとして知られる計9作品に登場するようになる。

造形的には、トーベが10代の頃、次弟ペル・ウーロフ・ヤンソンとの口ゲンカに負けたときに、トイレの壁に悔し紛れに描いた『SNORK(スノーク、とても醜い生き物)』として描いたものが、ムーミントロールのルーツであるとされる。ネーミングは叔父の家へ下宿をし学校へ通っている時代、勉強の合間に冷蔵庫から食べ物を失敬しては夜食にしていたのだが、あるときに叔父から注意され「この裏にはムゥーミントロールというお化けがいるからつまみ食いはやめなさい。首筋に冷たい息を吹きかけてくるぞ。」と言われたことがきっかけである。

小説は子供向けの作品の体裁をとっているが、その内容は必ずしも子供向けではない。第二次大戦の戦中・戦後に執筆された初期の作品には、洪水や彗星の襲来など自然災害が繰り返し描かれる。新聞連載漫画の大成功によってもたらされた「ムーミンブーム」にほとほと疲れ果てた頃に書かれた第6作『ムーミン谷の冬』を契機として、後期の作品はよりはっきりと内観的であり、おとぎ話の体裁をとった純文学といってよい内容を備えている。また、小説の挿絵もトーベが行っており、初期はインクの濃淡で描かれていたが、次第に細かな線のみで表現されるようになった[3]。朝日新聞の千葉恵理子によると、トーベはこの作風の変化を画家としての進歩だと受け取り、改訂する際に初期作品の挿絵を線による挿絵に差し替えたとされている[3]

1954年からイギリスの大衆紙「イブニング・ニュース(英語版)」 にムーミントロールの漫画が週に6日掲載された[3]。トーベ・ヤンソンが漫画を描きスウェーデン語のセリフをコマに書くと、語学が堪能な末弟のラルス・ヤンソンがセリフを英語に翻訳した原稿が印刷に回る。途中ラルスが作品のアイディア自体を提供する時期を経て、1960年以降はラルスが引き継ぎ、1975年まで合計73作品が連載された[3]。うち21作はトーベの絵である。
小説作品

小説作品は長編・短編集あわせて9作品が刊行されている。ムーミンの原作はスウェーデン語で書かれた。以下、日本語題名は講談社の全集による。

『小さなトロールと大きな洪水
(英語版)』 : Smatrollen och den stora oversvamningen - 1945この作品のみ邦訳が大きく遅れたため、講談社全集では「別巻」として以後の巻番号が1巻づつくりあがっている。ただし内容的には外伝やパラレルものではなくそのまま以後の巻に話が続いている(『たのしいムーミン一家』のありじごくのエピソードで「前にママに砂をかけた」説明など)。

ムーミン谷の彗星: Kometjakten / : Mumintrollet pa kometjakt / : Kometen kommer - 1946(1956年改訂・1968年三訂)

たのしいムーミン一家: Trollkarlens hatt - 1948

『ムーミンパパの思い出(英語版)』 : Muminpappans bravader /: Muminpappans memoarer - 1950 (日本語版、講談社 1969年 のち講談社文庫 新版2011年、翻訳者:小野寺百合子)

『ムーミン谷の夏まつり(英語版)』 : Farlig midsommar - 1954

ムーミン谷の冬: Trollvinter - 1957国際アンデルセン賞作家賞受賞作品。(あらすじ)ムーミン一家では11月から4月までの長い冬、冬眠をすることが先祖からの慣わしであった。しかしある年、なぜかムーミントロールだけが眠りから覚めてしまう。ムーミントロールにとって初めての冬は、たくさんの不思議で溢れていた

『ムーミン谷の仲間たち(英語版)』 : Det osynliga barnet - 1962

『ムーミンパパ海へいく(英語版)』 : Pappan och havet - 1965 (日本語版、講談社1968年 のち講談社文庫 新版2011年、翻訳者:小野寺百合子

『ムーミン谷の十一月(英語版)』: Sent i november - 1970

日本における受容(小説作品)

最古の日本語訳は1964年講談社から出版された『少年少女新世界文学全集 第27巻』所収の「ムーミン谷の冬」(翻訳:山室静、挿絵:池田龍雄)である[4]。同作の挿絵ではムーミンはマフラーを巻いている[4](以後、特記なきものはすべて講談社からの出版)。

続いて1965年には、偕成社の『世界の子どもの本』シリーズから『ムーミン谷はおおさわぎ』(翻訳:矢崎源九郎、挿絵:赤星亮衛。『ムーミン谷の夏まつり』の日本語訳)が出版された[4]


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