ムペンバ効果(ムペンバこうか、英: Mpemba effect)は、特定の状況下では高温の水の方が低温の水よりも短時間で凍ることがあるという物理学上の主張である。必ず短時間で凍るわけではないとされている。
(英語版) (Erasto B. Mpemba) が発見したとされる[1]が、古くはアリストテレス[2]やフランシス・ベーコン[3]、ルネ・デカルト[4]など近世の科学者が既に発見していた可能性がある。科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」[5]はこの現象を確認したい場合、効果が最大化されるよう摂氏35度の水と摂氏5度の水で実験を行うことを推奨している[6]。
2020年8月5日刊行の科学雑誌「ネイチャー」にて発表されたサイモンフレーザー大学の物理学者、アビナッシュ・クマールとジョン・ベックホーファーの研究により、ムペンバ効果の条件の一部が解明された[7]。 ムペンバ効果は、タンザニアの中学生エラスト・B・ムペンバ(Erasto B. Mpemba)が発見したとされる。ムペンバは、マガンバ中学校の3年次当時の1963年に、調理の実習中、アイスクリームミックスを熱いまま凍らせたところ冷ましてから凍らせたものよりも先に凍る現象を発見した。その後、ムペンバはイリンガのムカワ高校に進学した。ムカワ高校では校長がダルエスサラーム大学の科学部長だったデニス・オズボーン 古代のアリストテレス[2]やフランシス・ベーコン[3]、ルネ・デカルト[4]など近世の科学者が気付いていた可能性がある。アリストテレスは彼がアンチペリスタシス 科学ライターのフィリップ・ボールは、2006年に雑誌フィジックス・ワールド ムペンバ効果が起こる環境下ではさまざまな要素が関わっているものと考えられる。
経緯
前史
21世紀初頭現在の捉えられ方
原因
凍結の定義 - 「凍結」を水の表面に氷の層が確認できた段階とするのか(表面凍結)、完全に氷の固まりとなった段階(全体凍結)とするのか。
なお実験によっては、凍結や過冷却を実験対象から除外し、前段階の温度変化や温度勾配に的を絞っているケースもある。その場合は、氷点下到達 や 凍結開始 を測定終了の目安にしている。
実験設定
実験素材 - アイスクリーム素材、水道水、純水(蒸留水、イオン交換樹脂処理水、等)、etc. その他: 脱気処理の有無
冷却方法 - 直冷式冷凍庫(底面冷却)、ファン式冷凍庫(上面冷却)、低温室、氷点下の野外(→発見の前史)、etc.
冷却効率
蒸発 - 蒸発は吸熱反応である(水の蒸発熱: 45.2 kJ/mol (0℃,1atm))。また蓋のない容器では、蒸発により水の分量が減る[12]。
有力な説だが、これだけで現象全体を説明するのは難しい[13]。
対流 - 熱輸送が促進された。水は摂氏4度以下で密度が減少し、(上面冷却で)下部の冷却を担う対流が抑制される。一方、より密度の低い高温の水では、この抑制は起こりにくいと考えられるので、初期の急速冷却がそのまま持続するだろう。訳注: (英語版
霜 - オリジナル実験当時一般的だった直冷式冷凍庫は、底面冷却部に霜が発生しやすく、これが底面断熱材として機能した。高温の水を庫内に入れると、底面の霜が溶けて冷却効率が改善され、下側および横から凍りやすい。これに対し低温の水は上側から凍りやすく、全体凍結過程では 上面からの放射や空気対流が妨げられて冷却効率が低下する。
凍結プロセス - 不均一核生成
凍結開始の偶発性 - 通常の実験環境でバルクの純水は、下限約-10℃前後の過冷却状態から偶発的に急速凍結するため、凍結開始時間に統計的なばらつきが生じる。ばらつきが0℃までの冷却時間と比較して充分大きい場合、水と湯の凍結時間の逆転現象が起こりうる。この偶発性は、何らかの外部擾乱(物理的刺激)をきっかけに界面や容器表面で発生する不均一核生成が原因と推測される。
(この説は 経験に裏づけられた示唆に富む指摘だが、その反面 現象の本質である凍結現象の解明を遠ざける可能性もあるので注意を要する。)
過冷却 - 仮説として、低温の水は高温の水と比較して過冷却が深くなりやすく、高温の水より凍りにくいと考えられる[15][16]。