ミール_(深海探査艇)
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ミール

基本情報
船種深海潜水艇
船籍 ロシア
運用者ロシア科学アカデミー
経歴
竣工1987年
就航1987年
要目
排水量18,6t
長さ7.8m
幅3.6m
喫水3.0m
出力9kW (電動機)
速力5ノット
潜航深度6000m
乗組員3名
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ミール (ロシア語: "Мир", 世界 または平和)は自律推進型の深海潜水艇である。この計画は当初、ソビエト科学アカデミー(現在のロシア科学アカデミー)とラズリト設計局によって基本設計がなされ、後にフィンランドに2隻が発注された。詳細設計と建造はフィンランドのラウマ・レポラの海洋部門が担当し、ミール1とミール2は1987年に納入された。このプロジェクトはシルショフ海洋研究所から派遣された技術者の監督の下で進められた。
目次

1 特徴

2 フィンランドとソビエトの共同作業

3 探検

4 脚注

5 関連項目

6 外部リンク

特徴

船体は科学研究に使用する目的で設計された。潜水艦の救助作業をアシストするために使用することも想定されているが、潜水中に人が乗り移るだけのスペースはない。2隻のミールを運搬し、潜水作業中の指揮をとる母船は調査船アカデミク・ムスチスラフ・ケルディシュ。現在、2隻ともロシア科学アカデミーが運用している。

ミールは最大6000メートル(19,685フィート)まで潜水できる。3000メートル以上潜水できる有人潜水艇はミールの他には、アメリカのアルビン、シークリフ、ディープスター20000と日本のしんかい6500とフランスのノティールと中国の蛟竜号がある。世界の海洋の98%は6,000m未満の深度であることから、ほとんどの海域に対応できる。深海層まで潜水できるこれらの潜水艇は全て乗員が3人である。

従来の深海潜水艇は、チタンを溶接して耐圧殻を製造していたが、ミールの耐圧殻はチタンよりも引張り強度/重量比が10%優れているマルエージング鋼で作られている [1]。この合金は約30%のコバルトと少量のニッケルクロムチタンから構成される。2個の半球は鋳造、機械加工され溶接を避けてボルトで接合される。船体全体の比重は水の比重に近く、そのため異なる深度へと容易に移動できる。さらに浮力は容積8立方mのシンタクチックフォーム(直径数十?数百μmのガラスなどの中空球を合成樹脂で固めた材料)で得る[1]。他の深海潜水艇が海洋底に到達する為に鉄製のバラストを使用するのとは異なり、ミールはバラストタンクによって浮力と深度を調節する[1]

ミールは全長7.8m、全幅3.6m、全高3.0mで重量18,600kg(最大積載量290kg)である。耐圧殻の厚みは5cmで内径は2.1mである。耐圧殻には3箇所の観察窓が設けられており(窓の材料の厚みは18cm)、前方の窓が直径20cm、両側面の窓がそれぞれ直径12cmである。

動力は容量が100kWhのニッケル・カドミウム蓄電池である。電動機で油圧ポンプを駆動して油圧マニピュレータと3基のスクリューを駆動する。後部に設置された油圧式スクリューは9kWで駆動し、両側の2基のスクリューはそれぞれ2.5kWの出力を持つ。水中での最大速度は5ノットである。

縦方向のトリム調整は前と後ろの2個の球形バラスト水タンクを使用する。水は必要に応じて圧縮空気で外部へ排出可能である。

室内の空気圧は常に大気圧と同等に維持されている。宇宙船に搭載されている装置と似た水酸化リチウム濾過機で二酸化炭素を取り除き、空気は再利用される。

極超短波無線が水上での通信に使用される。250mまでの範囲内で対象物と距離を表示するイメージソナーを搭載している。着底する際、海底までの距離も正確に測定できる。


生命維持装置の容量は246人×時間または3人では3.42日分である。

ユニットは深度6,000mでの水圧に応じた設計がされており、125%での圧力で試験された。実地試験においてミール1は6,170mに、またミール2は6,120mに達した。

最初は、油圧式マニピュレーターは、ヘルメットのような収納可能な透過型バイザーで覆われていたが、1994年のオーバーホールで取り除かれた。

ミールは最大垂直速度毎分40mで深度を変える(潜る)ので、目的の深度到達まで数時間必要である[2]。これは日本の有人深海探査艇などでも変わらない。

フィンランドとソビエトの共同作業

2隻のミールの建造は、冷戦下におけるフィンランド-ソビエトの経済的、技術的な協力の重要な例になった。カナダ、フランス、スウェーデンからの応札は、おそらくは政治的圧力により、撤回された。後に、当時のラウマ・レポラの部門長であったピーター・ラクセルがSTT(フィンランドの通信社)に語ったところでは、「プロジェクトはどうせ失敗するとアメリカのココム委員会が思っていたことが前提となって、フィンランドは船体を納入する許可を得ることができた」と信じている。「我々が設計を成し遂げたことが彼らの目にも明らかになるや、どうしたらこんな技術をソビエトに売ることが出来るんだと大騒ぎになって、ペンタゴンにはたくさんの人が押しかけた」[3]

ココム規制のために、使用されているほとんどの技術をフィンランドで開発しなければならなかった。電装はホルミングが開発した。シンタクチックフォームは、業界首位の3Mが供給を断ってきたので、エクセルが製造した[1]


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