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数学や理論物理学において、ミラー対称性(mirror symmetry)はカラビ・ヤウ多様体と呼ばれる幾何学的な対象の間の関係であり、2つの カラビ・ヤウ多様体が幾何学的には全く異なっているにもかかわらず、弦理論の余剰次元としてそれらを扱うと等価となる対称性のことを言う。この場合、多様体は互いに「ミラー多様体」であると呼ばれる。
ミラー対称性はもともとは、物理学者によって発見された。数学者がミラー対称性に興味を持ち始めたのは1990年頃で、特に、フィリップ・キャンデラス
(英語版)(Philip Candelas)、ゼニア・デ・ラ・オッサ(Xenia de la Ossa)、パウル・グリーン(Paul Green)、リンダ・パークス(Linda Parks)らによって、ミラー対称性を数々の方程式の解の数を数える数学の分野である数え上げ幾何学で使うことができることが示されていた。実際、キャンデラスたちは、ミラー対称性を使いカラビ・ヤウ多様体の上の有理曲線を数えることができ、長きにわたり未解決であった問題を解明できることを示した(参照項目:ミラー対称性の応用)[1]。元来のミラー対称性へのアプローチは、理論物理学者からの必ずしも数学的には厳密(mathematical rigor)ではないアイデアに基づいているにもかかわらず、数学者はミラー対称性予想のいくつかを数学的に厳密な証明に成功しつつある[2]。今日では、ミラー対称性は純粋数学の主要な研究テーマであり、数学者は物理学者の直感に基づくミラー対称性を数学的に深く理解しつつある[3]。ミラー対称性は弦理論の計算を実行する際の基本的なツールでもある[4]。ミラー対称性への主要なアプローチは、マキシム・コンツェビッチ(Maxim Kontsevich)のホモロジカルミラー対称性予想のプログラムやアンドリュー・ストロミンジャー(Andrew Strominger)、シン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau)、エリック・ザスロフ(英語版)(Eric Zaslow)のSYZ予想[5]を含んでいる。
オーバービュー
ミラー対称性のアイデア弦理論の基本的な対象物は開弦(英語版)と閉弦である。
物理学では、弦理論は、その中では素粒子を点状の粒子とは考えずに、弦(英語版)と呼ばれる 1次元の対象で置き換えた理論的フレームワーク(英語版)(theoretical framework)である。これらの弦は通常の弦のループや小さな区分のように見える。弦理論は、どのように弦が空間の中を伝搬するか、互いに相互作用するかを記述する。弦のスケールよりも大きな距離スケールでは、弦は通常の粒子のように見え、質量や電荷を持ち、弦の振動状態によりきめられる他の性質を持っている。弦が分裂したり結合したりすることには、粒子の輻射や吸収が対応し、粒子の間の相互作用を惹き起す[6]。
弦理論の記述する世界と日常の世界の間には、確かに差異がある。日常生活では、3つの空間次元(上下、左右、前後)と、1つの時間次元(以後以前)が存在する。このように、現代物理の言葉では、時空は4次元である[7]。 弦理論の特別な有様の一つに、数学的な整合性のために時空の余剰次元(extra dimensions)を要求される。超弦理論である超対称性と呼ばれる理論上の考え方と両立する理論のバージョンでは、毎日の体験の中で慣れ親しんでいる4次元に加えて、6次元の時空の余剰次元がある[8]。
弦理論の現在の研究の目標のひとつは、高エネルギー物理実験で観察される粒子を、弦が再現するようなモデルを構成することである。観察と整合性を持たせるためには、そのような時空の次元は4である必要があるので、通常の距離スケールでは弦理論の余剰次元を消し去る方法を見つけなくてはならない。弦理論を基礎とする最も現実的なモデルでは、コンパクト化と呼ばれる過程を通して行われる[9]。コンパクト化の考え方は、弦理論の特定の次元が円をなして自分で「閉じている」ようなものかもしれない。次元が巻きあがっている極限では、非常に小さくなり、有効理論ではより低い次元となっている理論を得る。このことの標準的な類似物は、庭のホースのような多次元の対象を考えることである。ホースを充分に遠い距離で見ると1次元となり、長さしか持っていないように見える。しかし、ホースに近づくにつれ、第二の円周という次元を持っていることが分かる。このようにして、ホースの表面を這う蟻は2次元的に動くことができる[10]。実 3次元でのカラビ・ヤウ多様体の断面を平面へ射影した図形
コンパクト化は、時空の有効次元が4次元となるようなモデルを構成することに使うことができる。しかし、余剰次元をコンパクト化する全ての方法が、自然を記述する良い性質を持つモデルを作り出すとは限らない。素粒子物理学で確認できるようなモデルを構成するためには、コンパクトな余剰次元はカラビ・ヤウ多様体の形をしている必要がある[9]。カラビ・ヤウ多様体は複雑な(典型では)6次元の形をしていて、あるテクニカルな条件を満たす。それらは、数学者のエウジェニオ・カラビ(Eugenio Calabi)とシン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau)の名前から命名された[11]。
1980年代後半、弦理論のそのようなコンパクト化をすると、対応するカラビ・ヤウ多様体が一意に再構成されることが可能ではないことが分かった。代わりに、2つのカラビ・ヤウ多様体が同じ物理を持つことが発見された[12]。 これらの多様体はたがいに「ミラー」といわれる。全部の双対性はいまだ予想でしかないが、位相的弦理論の脈絡でのミラー対称性のバージョンがある。位相的弦理論はエドワード・ウィッテン[13] により導入された簡素化された弦理論のバージョンであり、このバージョンは数学者により厳密性(en:mathematical rigor)を持っている[2] 。位相的弦理論の脈絡では、ミラー対称性は、2つの理論、A-モデルとB-モデルがある正確な意味で等価であることを主張する[14]。
弦理論のこれらのカラビ・ヤウコンパクト化が自然の正しい記述をもたらすかどうかは別として、異なるカラビ・ヤウ多様体の間のミラー対称性関係の存在は、重要な数学的結果である[15]。 弦理論に使われるカラビ・ヤウ多様体は純粋数学的には興味深く、ミラー対称性は、ミラーカラビ・ヤウと同等な問題を解くことで数え上げ代数幾何学の多くの問題を数学者が解決できるようにした[16]。 今日、ミラー対称性は数学の研究の活発な領域であり、数学者たちは今も物理学者の直感に基づくミラー対称性の数学的理解を深めようと努力している[17]。
複素幾何学詳細は「複素幾何学」を参照トーラス
ミラー双対の片側に現れる幾何学の一種を理解するためには、ここで複素平面の点を同一視することで、トーラス(ドーナツのようにひとつの穴のあいた閉曲面)の構成を考える。このトーラスを構成するためには、最初に商 ω 1 / ω 2 {\displaystyle \omega _{1}/\omega _{2}} が実数ではない複素数のペア ω 1 {\displaystyle \omega _{1}} と ω 2 {\displaystyle \omega _{2}} を選ばねばならない. この最後の条件は、これらの点が一直線上にない(en:collinear)ことを確かなものとしている.従って、選択された点は、もう他の頂点が 0 と ω 1 + ω 2 {\displaystyle \omega _{1}+\omega _{2}} である平行四辺形を決定する。