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ミュージカル(英語: musical)は、音楽・歌・台詞およびダンスを結合させた演劇形式。ユーモア、ペーソス、愛、怒りといったさまざまな感情的要素と物語を組み合わせ、全体として言葉、音楽、動き、その他エンターテイメントの各種技術を統合したものである。ミュージカル・シアター(演劇)の略語で、ミュージカル・プレイ、ミュージカル・コメディ、ミュージカル・レビューの総称である。 ミュージカルは、通常の演劇(ストレートプレイ)の中に演出として劇中歌が入っているものとは異なる。トレヴァー・ナン
概要
ミュージカルは、全編を通じて一貫したストーリーが進行するブックミュージカルと、ストーリーがないブックレスミュージカル(またはコンセプトミュージカル)に大別できる。通常ミュージカルと言えば、ブック・ミュージカルを指すことが多い。ブック・ミュージカルの代表作として、『マイ・フェア・レディ』『サウンド・オブ・ミュージック』『オペラ座の怪人』などが挙げられる。また、ブックレス・ミュージカルの代表例としては『CATS』や『コーラスライン』などがある。
ミュージカルは、映画、テレビ、テーマパークにおけるアトラクションなど舞台以外のメディア上でも展開されることが大きな特徴のひとつである。比較的新しい演劇形式であるため、その方向性やスタイル、音楽においては、定まった形式が決まっておらず、聾唖者の手話やパペットを取り入れるなど、前衛的な試みが常に行われている。また、ミュージカルという演劇形式そのものに自己言及する傾向があるのも大きな特徴である。いわゆるバックステージものと呼ばれる作品がミュージカルには多い。
ミュージカルは上演形式としては一幕または二幕からなる場合が多い。ダンス・歌唱・楽曲の各要素の比率や構成には特に定まった形式はなく、レビューのように踊り中心のものから、ストレート・プレイに近いものまで、さまざまな形式の作品がある。台詞や歌のないダンスのみで構成された作品や、サーカスのようなほかの作品との融合、シェイクスピアなどの古典劇のミュージカル化など、さまざまな形式のミュージカルがある。
舞台で上演するほかに、映画としても数多くのミュージカル作品がある。たとえば『サウンド・オブ・ミュージック』『南太平洋』『踊る大紐育』が代表的な例であり、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー・スタジオがこの分野を最も得意とする会社として大きなブランドを築いた。またディズニーも長編アニメーションでミュージカル作品を多数制作しており、実写とアニメーションを合成した『メリー・ポピンズ』のような異色作も生み出している。これらのミュージカル映画には舞台作品を映画化したものと、映画のためにオリジナルの作品を新たに作るものとの2種類がある。逆に有名な映画作品を舞台ミュージカル化する例も多く見られる。代表的な作品に『フェーム』『ヘアスプレー』『スクール・オブ・ロック』や、『カビリアの夜』のミュージカル化『スイート・チャリティー』などが挙げられる。
また最近では、既存のヒット曲をつないでミュージカル化した、いわゆるジュークボックス・ミュージカルという形式も流行しており、『マンマ・ミーア!』(ABBA)や『ウィ・ウィル・ロック・ユー』(クイーン)、『ジャージー・ボーイズ』(フランキー・ヴァリ&フォー・シーズンズ)、『ムーヴィン・アウト』Movin' Out(ビリー・ジョエル)、『Beautiful: The Carole King Musical』(キャロル・キング)、80'sロックのヒット曲で構成した『ロック・オブ・エイジズ』などが代表的である。
そのほか、コンピューターゲームの分野においても『マール王国の人形姫』シリーズのように、ミュージカルの要素を取り入れた作品が試みられている[2][3]。 ミュージカルの形成は、以下のような流れを経ている。パリで演じられていたオペラ・コミックを発端に、『地獄のオルフェ』(天国と地獄)を作曲したジャック・オッフェンバックに影響を受けたヨハン・シュトラウス2世がウィーンでオペレッタ(ウィンナ・オペレッタ)を近代化し、さらにハーバート、フリムル、ロンバーグらがアメリカ合衆国に持ち込んでニューオーリンズで行われていたショーとなり、ミュージカルが誕生したと言われる。第1次世界大戦後のオペレッタ作品とミュージカルを厳密に峻別することは困難だが、前者の、オペラ発声の歌手、クラシック編成の管弦楽団、バレエダンサーによる舞踊、ドイツ語歌詞といった要素が、後者の、地声による自由な歌唱と一体化したダンス(歌手とダンスを分担しない)、打楽器を多用した自由なバンド編成、英語歌詞といった形へと置き換えられていった。ベルリンオペレッタやロンバーグのミュージカルなど、過渡的な形態のものも少なくないし、現代でもドイツ語ミュージカルの制作は盛んであり、両者の区分は常に流動的である。また、ブダペスト・オペレッタ劇場のように、地声発声でクラシックのオペレッタを上演する団体も存在する。オペラとミュージカルの両方を書いているレナード・バーンスタインは、歌によってドラマが進行するのがオペラで、ドラマの中で高まった感情を歌に託するのがミュージカルと定義しているが、これもひとつの説にすぎない。音楽の比重が高いのがオペラ、オペレッタという区分も微妙である。さすがにオペラやオペレッタでセリフが過半というものは存在せず多くて3割程度の比率であるが、ミュージカルは数曲程度しか歌がないものから全編が歌でセリフなしというものまでかなり幅広い。 ミュージカルは通常、15分程度の休息を挟んだ2幕構成であり、上演時間は2時間から3時間ほどである。まれに1幕構成の作品も存在する。 出演者は小規模な作品では1人から4人程度だが、大規模な作品になると40人から50人にもなる。コストを圧縮するために、1人で何役も演じるアンサンブルもしくはノーボディーと呼ばれる俳優がいる場合が多い。たとえば『レ・ミゼラブル』海外公演では27人のキャストが100以上の役を演じた[4]。 音楽は基本的にオーケストラやバンドによって生演奏されるが、日本では興行的な問題などで劇団四季のようにしばしば録音による演奏が行われる。
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