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ミヤマクワガタ属
ヨーロッパミヤマクワガタ
Lucanus cervus
頭部耳状突起が発達している
分類
界:動物界 Animalia
門:節足動物門 Arthropoda
綱:昆虫綱 Insecta
目:甲虫目 Coleoptera
亜目:カブトムシ亜目 Polyphaga
上科:コガネムシ上科 Scarabaeoidea
科:クワガタムシ科 Lucanidae
亜科:クワガタムシ亜科 Lucaninae
属:ミヤマクワガタ属 Lucanus
学名
Lucanus
Scopoli, 1763[1]
亜属
Lucanus
Scopoli, 1763[2]
Pseudolucanus
Hope and Westwood, 1845[3]
ミヤマクワガタ属(ミヤマクワガタぞく)またはルカヌス属(Lucanus)は昆虫綱甲虫目クワガタムシ科の属の1つ。学名(属名)の Lucanus は、ラテン語で「森(森林)」を意味する単語 lucus に接尾辞 -anus? を付したもので、「森に住む虫」を意味する[4]。
ユーラシア大陸全般の、殊に冷涼な気候の地域に広く分布し、その中でもヒマラヤ地方にて種分化が進んでおり、この地域で発生したのではないかと考えられている。クワガタ属、ノコギリクワガタ属と並んで雌雄二形が著しいクワガタムシの代表属であるが、分子系統解析などから、ミヤマクワガタ属の雌雄二形はこれら2属と同一起源ではなく、雌雄の形態差がそれほど極端ではないオニクワガタ属と非常に近縁で、これと共通の雌雄差が著しくない形態の祖先から、オスが樹液などの餌場を縄張りとして防衛し、そこにやって来る雌を獲得する方向に収斂進化したものと考えられている。
飼育技術の発達著しいクワガタ属やノコギリクワガタ属の属する系統と異なり、土に産卵するタイプで、幼虫も多くは腐植土状にまで分解が進んだ朽木を摂食していること、大型の成虫を得るためにはそこまで分解が進んだ朽木で栄養価に富んだものを幼虫に与えなければならないことに加え、全般的に高温を嫌う傾向が明らかで、季節による気温変動の大きい我が国において人為的に適温を維持することが難しいこともあり、飼育繁殖は若干難しい部分がある。他にもこれらの系統と異なる性質を多く有する。 雄の頭部が隆起して冠のようになっており、これは(頭部)耳状突起と呼ばれるが、原始的な種の中にはこれを欠くものも存在する。また、通常は耳状突起を持つ種でも、大顎が発達しない小型個体では発達が悪い。雄の大顎の内側には大きい内歯が2-3本見られ、その間とそれより根元にかけて細かい内歯が生えることが多い。多くの種は顎の先端が二股に分かれる。 茶色または黒色のものが多いが、一部前翅に黄紋ができる種も存在する。80mm-100mmに達する大型の種も多い。 本属は中・後脚の脛節に3-4本ほどの棘を持ち、クワガタ属やノコギリクワガタ属では中・後脚の脛節に棘が0-1本しかないことと比べて際立った特徴と言える。これと似たような形状の脚を持つのはチリクワガタ属やタランドゥスオオツヤクワガタにコロフォンクワガタの類である。このうち、チリクワガタは冷涼環境を好んだりする点など共通点が多い。 また、幼虫の生態面などについては、オニクワガタ属、マルバネクワガタ属、ツヤクワガタ属、ホソアカクワガタ属などが本属と共通の性質を持つ。
体の構造
ヨーロッパミヤマクワガタ Lucanus cervus
小型個体では耳状突起が発達しない。
ヨーロッパミヤマクワガタの雌
種
日本ミヤマクワガタ70mm
(エゾ型)
ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus
日本でお馴染みのクワガタムシである。暑さと乾燥とに弱いため、標高の高い地域や北海道のような高緯度で冷涼な地域でよく見られる。細かい体毛を有し、茶色く見える。脚の腿節は黄色い。昼間にも活動する。
原名亜種 L. m. maculifemoratus
本土一帯。DNAレベルでの変異は確認されていないが、幼虫期の環境温度によってオス成虫に下記の3種類の型が発生する事が知られている。
エゾ型
大顎先端の二股が著しく発達し第一内歯が殆ど発達しない。標高の高い地域や北海道で良く見られるが、幼虫期に低温を体験させると何処の産地のものでもエゾ型の表現型を示す。エゾ型が多く発生する北海道でも、近年の温暖化の影響か、道南では基本型・フジ型が、道央でも基本型がエゾ型に混じって発生している。
基本(ヤマ)型
大顎先端の二股はエゾ型程発達せず第一内歯は第三内歯とほぼ同等の大きさ。エゾ型を親とする幼虫でも低温期を設けないと成虫時に基本型を示す。
フジ(サト)型
大顎先端の二股の発達が悪く小さい。第一内歯の発達が著しく第三内歯とは桁違いな大きさ。幼虫期に高温で飼育をすると出現し易い。比較的標高が低い地域では良く見られる。
イズミヤマクワガタ L. m. adachii
伊豆諸島の大島・利島・新島・神津島・三宅島。オオバヤシャブシ
チョウセンミヤマクワガタ L. m. dybowskyi
朝鮮半島・アムール・中国北部
チュウゴクミヤマクワガタ L. m. boileaui
中国湖南省・四川省・陝西省・雲南省・チベット
タカサゴミヤマクワガタ L. m. taiwanus
台湾
L. m. jilinensis
中国吉林省
アマミミヤマクワガタ L. ferriei
奄美大島。オス成虫の大顎の湾曲が弱く、頭部の耳状突起も日本のミヤマクワガタのものとは形状が異なる。分類上、日本のミヤマクワガタよりはタイワンミヤマクワガタに近い。準絶滅危惧種指定。
ミクラミヤマクワガタ L. gamunus
御蔵島・神津島。2?3cm程にしかならない。その特異な分布や形態・色彩には謎が多い。オス成虫の大顎や頭部の耳状突起の発達が悪く、これらは原始的な特徴と考えられる。それに加えて、近縁種が中国内陸部にしか分布していないため、大陸から隔絶された洋上の小島に分布する本種は学術的に貴重な種とされ、アマミミヤマクワガタと同じく、準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)に指定されている。地元では土鍋で飼育している。