ミノサイクリン
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名
(2E,4S,4aR,5aS,12aR)-2-(Amino-hydroxy-methylidene)-4,7-bis(dimethylamino)-10,11,12a-trihydroxy-4a,5,5a,6- tetrahydro-4H-tetracene-1,3,12-trione[1]
臨床データ
販売名ミノマイシン、Minocin, Akamin
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ミノサイクリン(英: Minocycline)は、広域スペクトル性のテトラサイクリン系抗生物質であり、静菌性の抗菌薬に分類される。テトラサイクリン系としては脂溶性が高く、組織移行性が良好で生体内半減期も長い。経口摂取時の生物学的利用能が100%に近い。動物用医薬品としても使用される。
アメリカ食品医薬品局は、2008年に甲状腺疾患、小児自己免疫疾患の重篤な副作用との関連が見出している。コクラン共同計画もある種の自己免疫疾患の発症リスクの上昇を見出した。
天然に存在する抗生物質ではなく、1966年にアメリカ合衆国のレダリー研究所(英語版)によって天然テトラサイクリンから半合成された物質[2]。 主に皮膚感染症やライム病の治療に使用され、テトラサイクリン系抗生物質の中でも第一選択薬である。これはドキシサイクリンと並び生体内半減期が長いため、1日の服薬回数が少なくて済むことと、テトラサイクリン系抗生物質に対する耐性菌にも効果が期待できるためである。β-ラクタム系耐性菌に有効な場合があり、β-ラクタム耐性アシネトバクターによる疾患や、一部のMRSA感染症の治療に使用されることもある。髄膜炎菌への活性も有するなど、他のテトラサイクリン系よりも幅広い抗菌スペクトルであるが、予防投与は副作用(目眩や光線過敏)の問題と薬剤耐性のつきやすさのため推奨されていない。 動物のリボソーム80Sには作用せず、細菌のリボソーム70Sに特異的に作用する[3]、細菌のリボソーム30Sサブユニットに特異的に作用することから、選択毒性を有する[4]。 妊娠中や妊娠の可能性がある場合は、他のテトラサイクリン系と同様に選択されない。小児に対しては第一選択とならない。特に8歳未満の小児において、歯牙の着色やエナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こす可能性があるためである。しかし薬剤耐性の問題で、本剤以外に選択肢がない場合は例外となる。 ミノサイクリンに感受性のある菌種は、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、シトロバクター属、クレブシエラ属(肺炎桿菌を含む)、エンテロバクター属、緑膿菌、梅毒トレポネーマ、リケッチア属、クラミジア属、マイコプラズマ、アメーバ性赤痢、炭疽症、コレラ、淋病(ペニシリンが投与できない場合)、融合性細網状乳頭腫症
特徴
静菌作用
適応
適応だけを見ればそうだが、実際には淋病で2016年には7-8割で薬剤耐性を持つため、推奨ではない[5]。
主な適応症
皮膚/骨格系
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、外傷・熱傷及び手術創による二次感染、乳腺炎、骨髄炎
呼吸器系
咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
泌尿器系/生殖器系
膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎、尿道炎、淋菌感染症、梅毒、外陰炎、細菌性膣炎、子宮内感染
消化器系/腹腔内臓器
腹膜炎、感染性腸炎