「コミュニティ放送」とは異なります。
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可聴範囲が極めて狭いため、商業的な放送は大概集客力のある場所で行っている(「国技館FM放送」両国国技館)
ミニFMとは、電波法に規定する免許を要しない無線局の内、微弱電波でFM放送の周波数帯を使用して放送するもののことである。微弱無線局であるため無線局免許状や無線従事者は必要なく、放送法上の放送局でもない[1]。
コミュニティFM(CFM)との混同を避け、マイクロFMと称することもある。目次 FM放送は地上基幹放送の一種であり、事業計画を策定し、地上基幹放送局の送信機や空中線(アンテナ)を設置し、予備免許の取得と落成検査の受検を経て免許を取得、無線従事者による管理のもとに運用するのが原則である。一時的な目的で開設する臨時目的放送のイベント放送局であっても同様で、法人格を有しない任意団体や個人は開設できない。 ミニFMはこれらの放送に該当しないもので多くはワイヤレスマイク一個で簡単に開設して児童館や大学生の課外活動、学園祭や運動会などの町の話題や地域のコミュニケーションの場としての実況放送、商店街や町興しやイベントの会場案内などに使われる。反面、時間的にも空間的に限定されたもので、内容としては個人又は同人の趣味やイベント会場の構内放送の延長上にあるものがほとんどである。 広範囲をカバーしようとしても空中線電力(出力)を大きくすることはできず、複数の場所から送信するとしても同一周波数を使う限り相互干渉は避けられないので不感地帯を設けざるを得ない。このような場合にはアンテナを漏洩同軸ケーブル(LCX、Leaky Coaxial cable)に置き換えて敷設する。LCXを施工できるのは、JRA競馬場でのグリーンチャンネルやAM放送の再送信、両国国技館での大相撲中継の再送信[2]、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、住之江競艇場での実況放送など一定以上の来場者が見込める施設であり、事業的な見地からもイベント開催時でないと行っていない。また、FM放送再送信や非常割込放送を行う道路トンネルや地下駐車場があるが、これもLCXによるのでミニFMの一種といえる。これは遮蔽された空間だからこそ地上基幹放送局と同一周波数で再送信できるのである。 地下街のように広範囲でノイズが大きくなるとLCXでは不十分となる。放送波遮蔽対策推進協会では実験試験局によりFM放送を再送信してきたが、地下街の管理会社に事業承継して解散した。この事業承継の際に実験試験局をギャップフィラー用地上基幹放送局に種別変更した。実験試験局には第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理を要するが、上述の通り適合表示無線設備を用いたギャップフィラーにば無線従事者が不要だからである。いずれにしても無線局の免許を要するのでミニFMとはいえない。 東海道・山陽新幹線、東北新幹線などの鉄道車両内でのAM放送・FM放送再送信のサービスは、車両単位のミニFMといえる。開始当初は沿線で地上基幹放送局が使用していない周波数を選定したものの、新規開局したものと周波数が一致又は近接していることがあり、受信に支障をきたすこともある。ドライブインシアターも初期はともかくカーラジオでFM放送が受信できるようになると映画上映の際の音響装置として使用されることとなり、これもミニFMといえる。 恒久的に送信しているものは、ハイウェイラジオ上三川(北関東自動車道壬生パーキングエリアで実施)などごく一部の路側放送のFM放送周波数に変換しての再送信および道路トンネルなどのFM放送再送信などの僅かな例しか見ない。 #沿革にもあるように話題になったのは、せいぜい1990年代前半までで、長引く不況から聴取者の限られるミニFMは経費削減の対象となりやすく、JRA競馬場のグリーンウェーブ(旧称ターフサウンドステーション(TSS))、横浜スタジアムのFMハマスタ、浅草花やしきのあさくさFM、両国国技館のどすこいFM[2]などのイベント施設や東海道・山陽新幹線のミュージックサービスなど独自放送をしていたミニFMが廃止またはラジオ放送の再送信のみに縮小している。ドライブインシアターも映画興行の変化に伴い、21世紀初頭には常設施設は皆無となりイベントとして臨時に行うものしか見られない。一方、蓄積型放送も可能なインターネットラジオの台頭は、かつてならミニFMを開設したであろう企業・団体が利用することとなり、とって代られた形となった。エフエム・ギグ、ソラトニワ、渋谷クロスFMなどはミニFMが主体のように事業を開始したが、実態はインターネットラジオが主でミニFMは従あるいは廃止している。送信機も容易に入手できるのは組立てを要するキットかオーディオ機器用アクセサリーのFMトランスミッターしかなくなり、個人の趣味としても聴取者が限定され、その反応も得られない魅力の乏しいものとなった。 「微弱電波」とは、電波法第4条第1項に規定する「発射する電波が著しく微弱な無線局」によるもので、これをうけた総務省令電波法施行規則第6条第1項第1号に「無線設備から3メートルの距離において、電界強度が毎メートル500マイクロボルト以下のもの」と1986年(昭和61年)[3]から規定されており、この距離から微弱電波に係わる技術者などは3m法と称している。電界強度は出力のみではなくアンテナの形状や設置する高さが総合して関係するので、測定方法が総務省告示[4][5]として規定されている。この電界強度をダイポールアンテナを使った場合の送信電力に換算すると50nW[6]となる。試験場などの設備が無ければ告示の条件による試験は困難であり「微弱無線設備性能証明」を行う企業がある。電波法令上の義務ではないが違法性が無いことを証明するにはこれを利用すればよい。 1996年(平成8年)までは規則改正の経過措置[7]として、「100mの距離において15μV/m以下」が許容されていた。3m法と比較すると、自由空間での電波伝搬特性を基に100mでの値を3mでの値に換算した等価なものにみえるが、実際には100mの距離があると大地反射の影響を無視できず、伝搬減衰量は自由空間でのものより大きくなる。10m以上の距離で大地反射を考慮すると15μV/mの電界強度となるのは30m[6]と計算される。これは、実用感度が100μV/m程度(地上基幹放送局の放送区域の電界強度の最低限が250μV/mと定義されている[8]のもこのため)の市販の廉価なFMラジオでの到達距離におおむね相当する。 この微弱電波を超える出力で送信すれば電波法第110条第1項違反となり総合通信局(沖縄総合通信事務所を含む)による取締り、刑事告発の対象となる。 既存の無線通信や放送受信の妨害にならないように使用周波数を決定しなければならない。既設の地上基幹放送局およびその周辺の周波数はもちろん次のような周波数にも留意しなければならない。81MHzは第三次高調波が243MHzとなり、この高調波は遭難信号の受信妨害となる。81MHzの近辺の周波数であっても影響が考えられ80.8MHzから81.2MHzは使用されていない。周波数の逼迫している関東地方でもNHK-FM千葉(80.7MHz)とJ-WAVE(81.3MHz)の間が開放されているのは、これが理由である。電波法第105条第2項には、「遭難通信の取扱を妨害した者は1年以上の有期懲役に処する。」とあり電波法中で最も重罪とされる。この周波数帯は安易に使用してはならない。 一般的なFMラジオの中間周波数(IF)は10.7MHzなので、ミニFMの10.7MHz上の周波数が使用されていれば、ミニFMの10.7MHz下の周波数のイメージ周波数となり、イメージ混信となる。2012年(平成24年)まではFM放送の直上の周波数の90-108MHzにV-low帯と呼ばれるアナログテレビジョン放送の1-3chがあったが、ミニFMの周波数をどこに設定してもテレビ放送の映像周波数と音声周波数は既設のFM放送局受信のイメージ周波数となりうるものではなかった。しかし、2014年(平成26年)よりFM補完放送が90-94.9MHzで開始され、95MHzまでがFM放送の周波数帯と認識されるようになった。更に2016年(平成28年)よりi-dioの愛称でマルチメディア放送が開始された。マルチメディア放送の周波数は101.285714MHz又は105.571429MHz、占有周波数帯域幅は使用セグメント数によるが最大9セグメントで3.857143MHz(±1.978571MHz)である。ここでミニFMの周波数を90.6MHz又は94.9MHzとすると79.9MHz又は84.2MHzを中心に最大±1.98MHzがイメージ周波数となり、これらの周波数でFM放送をしていたらイメージ混信となり受信妨害となる。2020年(令和2年)にi-dioは終了したが一部の市で災害情報伝達システムV-ALERT ミニFMを開設するには、送信機とアンテナが必要となる。 総務省は、微弱電波の範囲を超えるおそれがある無線機を一般市場で購入し測定を行い、この範囲を超えるものについて公表する無線設備試買テストをしている。試買テストにより電界強度が基準を超えると公表された機器[10]中にはFMトランスミッターもあり、製造・販売業者は自主回収[11]している。微弱無線マーク(ELPマーク)は、この状況に対応して民間の任意制度として開始されたもので微弱無線設備と証明された機器が登録されるが、登録されたFMトランスミッターはロッドアンテナやアンテナ線などの露出したアンテナがない埋込構造のものばかりである。これは、主に自動車の車室内での使用を想定したものであるが、安易に外部アンテナを接続できないようにして電界強度の基準を超えないようにすることでもある。一方で露出したアンテナを持つものは、かつては家電製品メーカーが製造し販売店で容易に入手できたが、すでに製造を中止している。 このような事情から、一般人が従前のような外部端子をもつ又はアンテナが露出した送信機の完成品を入手するとしたら、ガレージキットを製造するガレージメーカーに相当するような弱小業者が自社ウェブサイトで販売するものか、国内外の通信販売サイトに出品されているものしかない。しかし、電界強度は送信機の出力とアンテナの形状や高さが一体となって決定されるもので後述のように外部アンテナを接続すれば基準値を超えることは容易なこと、送信機の製造や販売に法規制は無いことから、基準値を超過すれば製造・販売業者ではなく使用者が責任を問われる。このことは業務用として事業者向けに受注生産するメーカーが存在しないという意味ではなく、使用する目的や場所などの仕様を明確にすれば違法性の無い機器を製造する。 完成品以外の送信機は組立キットしかなく、電子技術の知識が無い場合は製作が難しい。完全に自作するには、PLLシンセサイザーにより安定度が高く、高セパレーション(ステレオ送信時に左右の音が交わらない)の物が望ましい。PLLシンセサイザーで周波数変調すると、PLLの周波数引込特性により、変調波の低域周波数成分がカットされる。PLLシンセサイザーのVCOを安定に発振させると数μW?数mW程度の出力となるが、筐体輻射として外部に漏れるとこれだけで基準値を超えてしまうおそれがあるため、VCOをシールド構造にするか非常に小形に作らねばならない。後段についても基準値を超えない構造を要する。つまり、送信機製作の技術的な難しさは、いかに電波を安定に弱くし、基準値をクリアするかにある。 送信機とアンテナとの間の接続は同軸ケーブルを利用するが、一般に送信機の出力インピーダンスは50Ωのため受信用の75Ωより50Ωを用いるのがよい。インピーダンス変換はマッチングトランス(インピーダンス整合器)または簡易的には25Ωまたはその近似値の無誘導抵抗を直列接続にする。
1 概要
2 解説
2.1 微弱電波の定義
2.2 周波数の選定
2.3 送信機とアンテナ
2.4 運用
3 沿革
4 音声アシスト規格の災害用FM
5 ミニAM
6 ミニテレビ
6.1 ワンセグ用送信機
6.2 エリア放送
7 ミニFMをテーマにした映画
8 脚注
9 関連項目
10 外部リンク
概要
臨時災害放送局はその性質上、事前に手続きはできないが免許人となれるのは基礎自治体(市区町村)のみで、地元CFMを増力するか又は既存の県域放送やCFMの事業者の応援を得て実施する。
受信障害対策中継放送(通称ギャップフィラー)は、適合表示無線設備を用いれば無線従事者は不要であり、簡易な免許手続により予備免許や落成検査を経ないで免許される。但し文字通り受信障害対策として開設されるので、既存の放送の再送信しかできず、事前調査で共同受信施設で対応できると判断されたら開設できない。
解説
微弱電波の定義「微弱無線局」も参照
周波数の選定
送信機とアンテナ