ミツクリザメ
ミツクリザメ Mitsukurina owstoni
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ミツクリザメ(箕作鮫、学名:Mitsukurina owstoni、英: Goblin shark)は、ネズミザメ目ミツクリザメ科に属するサメ。ミツクリザメ科はミツクリザメ属 Mitsukurina 1属で、本種のみを含む。希少種。日本の東京湾、駿河湾、相模湾などをはじめ、世界各地で散発的に報告されている。表層から水深1,300 m、あるいはそれ以上の深海に生息する。推定全長6m。ブレード状の長い吻が特徴である。写真や図では顎が飛び出した状態のものが多いが、通常遊泳時は奥に引っ込んでいる。 学名 Mitsukurina owstoni は発見者アラン・オーストン
名前の由来
英語では Goblin shark と呼ばれているが、これは本種の別名、テングザメの翻訳である[3]。 世界各地から報告があるが、出現はまれ。これまでの報告はほとんどが日本からのものである[1]。とくに駿河湾や相模湾など水深が1,000 m以上になる深海湾でよくみられる。また千葉県沖の東京湾海底谷(とうきょうかいていこく)の入り口で多くの幼魚が見つかり漁の網にかかることがある。2003年にはそれまで報告がなかった台湾の北西沖で、100尾を超える非常に多数のミツクリザメが漁獲されている[1]。他には、太平洋西部のオーストラリアや大西洋のギアナ、ビスケー湾、マデイラ諸島、インド洋の南アフリカなどの周辺海域で生息が確認されている。生息水深帯は30 - 1,300 m以深[1]。 最大全長は推定540?617 cm[1]。生存時の体色はやや灰色がかった薄ピンク色で、死後は褐色、さらに時間が経過すると灰色になる。やや透明な皮膚の下には血管が走っており、それが生きているときの独特なピンク色を生み出している。 背には比較的小さな背びれを2基、また胸びれ、腹びれ、臀びれを備える。尾びれは上葉(上半分)が長く、下葉(下半分)は上葉に比べてかなり短い。このタイプの尾鰭を持つサメは底生性であることが多く、あまり速くは泳げないと考えられる。体には古代のサメの特徴を残しており、生きている化石などとも呼ばれる。大きく突出した扁平な吻(頭部先端のとがった部分)が特徴である。吻には電気受容器のロレンチニ瓶を多数備えており、海底の餌を探すのに役立っている。吻は軟骨性で柔軟なため、カジキ類の吻のように攻撃や防御を行うには適していない。 ミツクリザメは顎が前方に突出した姿で描かれることが多いが、突出自体はサメ類が共通して持っている性質であり、さほど驚くに値しない。本種の場合は顎が容易に、しかもかなり顕著に突出して目立つため、そのように描かれるのであろう。上顎は湾曲し、鳥のくちばしのような形をしている。口の前半部の歯は長くとがり、表面は滑らかで内側に向けて曲がっている。それに対して後半部の歯はやや短く、ものを噛み砕くのに適している。 ミツクリザメは船上で逆さに吊り上げられると顎が飛び出し、くちばしのような口には多数の鋭い歯がむき出しになる。自身の体重で顔は膨らみ、ブヨブヨした軟らかい体はみるみる褐色に変色、さらに大量出血により全身が赤く染まる(深海棲息のため、水揚げに伴う周囲の水圧の有無・変化に因るとされる)。
地理的分布・生息環境
形態白亜紀に生息していたスカパノリンクス。ミツクリザメに非常によく似た形態をしている。口部分の模型ミツクリザメ(模型)