ミッドサマー
Midsommar
監督アリ・アスター
脚本アリ・アスター
製作ラース・クヌーセン
『ミッドサマー』(原題: Midsommar)は、2019年のサイコロジカルホラー映画。監督はアリ・アスター、主演はフローレンス・ピュー。アメリカの大学生グループが、留学生の故郷のスウェーデンの夏至祭へと招かれるが、のどかで魅力的に見えた村はキリスト教ではない古代北欧の異教を信仰するカルト的な共同体であることを知る。この村の夏至祭は普通の祝祭ではなく人身御供を求める儀式であり、白夜の明るさの中で、一行は村人たちによって追い詰められてゆく。 心理学を専攻する大学生のダニーは、ある冬の日に双極性障害をわずらっていた妹が両親を道連れに一酸化炭素中毒で無理心中して以来、深い心的外傷を負っていた。家族を失ったトラウマに苦しみ続け、恐怖の底に追い詰められているダニーを恋人であるクリスチャンは内心重荷に感じながらも、実は一年以上前から別れを切り出せずにいた。 翌年の夏、ダニーはクリスチャンと一緒にパーティに参加した。席上、彼女はクリスチャンが友人のマーク、ジョシュと一緒に、同じく友人であるスウェーデンからの留学生ペレの故郷であるホルガ村を訪れる予定であることを知った。クリスチャンはペレから「自分の一族の故郷で、今年夏至祭が開催される。夏至祭は90年に1度しか開催されないので、見に来てはどうか」と誘われていたのである。大学で文化人類学を専攻するクリスチャンは、学問的関心もあってホルガ行きを決めたが、スウェーデン行きをダニーに隠していた負い目もあり、話の流れから仕方なくダニーも誘う。 ダニーらはスウェーデンへ渡り、ペレの案内でヘルシングランド地方に位置するコミューンであるホルガを訪れた。一行は、森に囲まれた草原という幻想的な風景と、白い服を着た親切な村人たちに初めは魅了される。一行はペレの兄弟分のイングマールに誘われてロンドンからホルガにやってきたというサイモンとコニーのカップルと合流し、イングマールからマジックマッシュルームを勧められる。キノコによる幻覚の中で、ダニーは妹の幻を見る。村には夜が訪れるが、白夜のため、いつまでも昼のような明るさのままである。翌日から始まる夏至祭はただの祝祭ではなく、ペイガニズムの祭りであった。そうとは知らずに参加したダニーは、不安と恐怖に苛まれていく。 草原のテーブルでの全員そろっての食事など夏至祭の儀式が粛々と進むが、アッテストゥパン
ストーリー
なにも考えずについてきたクリスチャンだったが、ホルガ村独特の風習を論文のテーマにすることをとっさに思いつく。しかし、長年文化人類学を真剣に学んできたジョシュは、テーマを盗むつもりかと怒り、二人の関係が険悪になる。焦るジョシュは、ルーン文字で書き継がれてきた村人の指針となる聖なる書「ルビ・ラダー」(Rubi Radr)の紙面を写真に撮りたいと村の長老に頼んでみるが、写真はだめだと頑として断られる。しかしルビ・ラダーを代々書く者はルベンと呼ばれ、意図的な近親婚によって障害を持って生まれた者であること、近親婚を避けるためにときどき外部の者の血を入れることがこのとき明かされる。
夕食時、マークは村の女性に誘われてどこかへ消える。一方、クリスチャンの食事の中には女性の陰毛が混ぜられていた。誰かが彼と結ばれることを願って、陰毛と経血を混ぜるまじないをしたのだ。その夜、ジョシュは聖域に忍び込んでルビ・ラダーを盗撮するが、マークから剥ぎ取られた顔の皮をかぶり人間の下半身の革(ナブローク)をはいていた男にハンマーで殴打され、どこかに引きずり出されてゆく。
翌日、ダニーは幻覚作用のあるハーブティーを村人から勧められる。彼女は村の女性総出のメイポール・ダンス(英語版)の大会に参加させられ、全員で手をつないでメイポールの周りを何周も何周もする。最後までダンスを続け立つことができたダニーが優勝し、メイクイーンとして花の冠をかぶせられ、村を行進する。一方クリスチャンは精力剤を飲み、村の建物内で性的な儀式に参加する。彼は服を脱がされ、全裸の女性たちに取り巻かれながら、彼の子種を孕むことを望む村の女性に従事する。女性たちの囃子声を聞いて建物に近寄ったダニーは儀式を見てパニック発作を起こし、ついてきた女性たちもダニーをまねて一緒に泣き叫ぶ。儀式後、クリスチャンは全裸で飛び出して村をさまよう。やがて、地面に埋められたジョシュの脚、背中から取り出された肺を翼に見立てて吊るされるという「血のワシ」と呼ばれる処刑をされたサイモンの姿を発見するが、再び気を失う。
メイクイーンとなったダニーは集まった村人たちから、コミューンから悪を追い払うために9人のいけにえが必要だと説明される。ペレとイングマールに誘われたよそ者であるジョシュ、マーク、コニー、サイモンの4人。最初に身を投げた老人2人と、自らいけにえに志願してこれから死ぬイングマールとウルフの2人。ダニーはあと1人のいけにえを、よそ者のクリスチャンにするか、それとも抽選で選ばれた村人のトービヨンにするか、選択を迫られる。彼女は恋人のクリスチャンをいけにえに選択する。半ば意識を取り戻したクリスチャンは、自分が腹を裂かれた熊の体に全身をくるまれ、イングマールとウルフとともに黄色い三角屋根の神殿の中にいることを知る。やがて神殿に火が放たれる。体に火が付いたウルフの絶叫を、外にいる村人たちも模倣して叫ぶ。ダニーははじめこそ恐怖で泣いていたが、神殿が焼け落ちてゆくにしたがい、徐々に笑顔になっていく。 本作のラストシーンについては様々な解釈がなされているが、アスター監督は「ダニーは狂気に堕ちた者だけが味わえる喜びに屈した。ダニーは自己を完全に失い、ついに自由を得た。それは恐ろしいことでもあり、美しいことでもある」と脚本に書き付けている[16]。 登場人物のうち、ホルガの住人たちは主にスウェーデン人俳優が演じており、そのうちの何人かにはスウェーデン語を話す場面がある。また、ダニーの家族などの脇役数名はハンガリー人が演じている。
ラストシーンの意味
キャスト