ミサ
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「ミサ」のその他の用法については「ミサ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
チリでの最初のミサの描写、Pedro Subercaseaux(英語版)作

ミサ(ラテン語: missa, : mass)は、カトリック教会においてパンぶどう酒聖別して聖体秘跡が行われる典礼(祭儀)。司教または司祭が司式し、信者全体が捧げるものとして位置づけられており[1]、カトリック教会で最も重要な典礼儀式である。

カトリック教会における他の典礼や、キリスト教の他教派における礼拝公祈祷)一般をまとめて「ミサ」と呼ぶ事例がマスメディアや書籍などで散見されるがこれは誤りである[2][3]。「ミサ」とは、本項で詳述するカトリック教会における聖体の秘跡にかかる典礼だけを指す語彙である[4]。カトリック教会のミサは、正教会では聖体礼儀に、聖公会[5]およびプロテスタント[4]では聖餐式に相当する。なお、カトリック教会以外(正教会[2]およびプロテスタント教会)では「ミサ」という表記は全く使われない。教派や祈祷の種別を問わない場合は「礼拝」という表現を使うのが無難である。                      

ミサの様式は世界共通で、大多数の地域のカトリック教会で「ラテン典礼」と呼ばれる様式によって行われ、『開祭』『ことばの典礼』『感謝の典礼』『閉祭』という四つの部分で構成される。

古代以来1960年代までラテン典礼におけるミサはすべてラテン語で行われていたが、第2バチカン公会議以降の典礼改革により各国語でも行われることになった。

日本では、1978年に日本語版『ミサ典礼書』が教皇庁典礼秘跡省より部分認証され、暫定的に日本語で行われたが、2002年に『ローマ・ミサ典礼書』ラテン語規範版第3版が発行され、2021年5月に「ミサの式次第と第一?第四奉献文」、「ミサの結びの祝福と会衆のための祈り」、「水の祝福と灌水」が、同省より認証され、それに従い日本語では『開祭』『ことばの典礼』『感謝の典礼』『閉祭『という四つの部分で構成されたミサが行われる。
名称
教派用語

「ミサ」はラテン語から転写されたカトリック教会用語であるが、片仮名で(日本語で)「ミサ」と言えば、本項で詳述しているカトリック教会における主の晩餐最後の晩餐)に由来する聖体秘跡聖変化)が行われる典礼(祭儀)のみを指す名称であって、カトリック教会における他の典礼をも「ミサ」と呼ぶのは誤りである。たとえばカトリック教会における時課も、典礼ではあるが、ミサではない。

なお、外国においては「マス」(: mass) という表記は聖公会ルーテル教会復古カトリック教会で使われる。日本で片仮名表記で「ミサ」と書くのは日本聖公会では稀であり、日本のルーテル教会に至っては皆無である。聖公会、ルーテル教会では、主の晩餐に由来する礼拝をふつう「聖餐式」と呼ぶ。

教会で行われている祈祷について、キリスト教教派や祈祷内容が不明な場合は、単に「礼拝」と呼ぶのが無難である。

ミサと礼拝の教派別対照表
教派・組織カトリック教会聖公会プロテスタント正教会
礼拝一般礼拝
典礼礼拝礼拝礼拝
奉神礼
主の晩餐に由来する礼拝ミサ
御ミサ
ミサ聖祭
感謝の祭儀聖餐式聖餐式聖体礼儀

日本語名

カトリック教会において、ミサは「感謝の祭儀」とも言いあらわされる。これは「イエス・キリストの死と復活を記念し、その復活の恵みに与る、喜びに満ちた感謝の祭儀」であることを示しており[1]、ミサ式文の最後の部分では「感謝の祭儀(またはミサ聖祭)を終わります。」という言葉が司式司祭によって唱えられる。このほかにミサを意味する言葉としては「主の晩餐」「聖餐式」がある。「主の晩餐」は、ミサが最後の晩餐に起源をもつこと、「聖餐式」は聖なる会食であることを示している[1]。また、日本のカトリック教会では「ミサ聖祭」[6]や「御ミサ(ごみさ)」[注釈 1]と呼ばれることもある。

なお、ミサのことを漢字では「弥撒(彌撒)」と書き、中国のみならず古くは日本でも漢字で書かれることがあったが[7]、現代の日本のカトリック教会ではこのような漢字表記が使用されることはない[注釈 2]
ラテン語

「ミサ」という名称は、式の最後のラテン語の言葉「Ite, missa est.」(ite = 行きなさい、missa est = 派遣である)というフレーズの中の語に由来し、missa(ミサ)は、ラテン語で「派遣」を意味する missio(ミッシオ)に由来すると言われる[1]

このミサの最後の「Ite, missa est.」という言葉の意味については、近年「行きましょう、ミサを終わります」と訳されることがあるが、ラテン語の文法を正確に理解するならば、この文章には、二人称複数(あなたたち)に対する命令形として「ite」(行け)がまずあり、次に、三人称単数の女性を主語とした「missa est」(送られた)という過去形の命題が続いている。

トマス・アクィナスは、「missa est」(送られた)の主語は「hostia」(いけにえ)であると断言している。まず「ミサ」という名称の由来を神学大全の中で次のように言っている。「このためにもミサと呼ばれている。その理由は、会衆が司祭を通して天主に祈りを送るように、司祭は天使を通して祈りを送るから、或いはキリストは私たちのために送られたいけにえ(hostia nobis missa) であるから。故に、ミサの終わりに、助祭は祝日に会衆にこう言う「行け、送られた」(ite, Missa est) と、すなわち、天主に受け入れられんがために、いけにえは天主に天使を通して送られた、との謂いである。」[8]

また「ヴェディングハウゼンのリカルドへのミサの解説」の中では「諸聖人のためのミサの終わりに、「行け、送られた(ite, Missa est)」という言葉を通して、あたかも「我々のために聖父によっていけにえは送られた、或いは我々によって聖父へと再び送られた、故に、かの安息に早く入るように急げ」と言われ、聖人達がそこにおいてすでに憩っているかの栄光へと我々は見いだされる。」と説明している[9]
概説ミサを司式する教皇ベネディクト16世

キリスト教はもともとユダヤ教の中から生まれたため、聖体祭儀(ミサ)もユダヤ教のシナゴーグで行われていた礼拝の形式(聖書の朗読と説教、祈り)に、キリスト教徒がイエス・キリスト最後の晩餐を記念して行っていた聖体の典礼と会食が組み合わされて出来たものである[10]

キリストは最後の晩餐の席でパンを取り、「これはわたしの体である」と言い、またぶどう酒について「これはわたしの血」と言った。キリスト教徒は二千年にわたって、キリストの復活を祝うために毎週日曜日に集まり、この「主の晩餐」を行ってきた。これがカトリック教会で「ミサ」(感謝の祭儀)と呼ばれる礼拝集会である。ミサはキリストの生涯、特にその死と復活を思い起こし、キリストをとおして実現した救いの恵みに感謝し、パンとぶどう酒のしるしによってキリスト信者がキリストと一つに結ばれるもので、カトリック信者にとってもっとも大切な秘跡(神の恵みのしるし)とされている[11]

聖体祭儀には地方・時代においていくつかの形式が生まれたが(ミラノ典礼、アンティオキア典礼など)、通常ミサというときはローマ典礼を表す。そもそも「ミサ」という語自体がローマ典礼のラテン語典礼文に由来する。ローマ典礼は教皇庁バチカン)の配下にある司教区(つまりは世界中のほとんど)で行われている。日本のカトリック教会もローマ典礼である。

カトリック教会の典礼は1960年代の第2バチカン公会議を反映して改革され、典礼言語としてラテン語以外に各国・各地域の言語を使うことができるようになった。日本のカトリック教会でも、昭和40年代前半までミサはラテン語で行われていた。また、それまではミサは司祭1人で執り行い、司祭が信徒に背を向ける形で祭壇に向かう形(背面式)だったが、第2バチカン公会議以降の改革でミサ本来の意味が再検討され、数人の司祭によるミサの挙行(共同司式)も認められ、式自体も司祭が信徒に向かう形(対面式)で行われるようになった。詳細は「新しいミサ」を参照

なお、この改革以前の「トリエント・ミサ」と呼ばれるミサ形式から、聖公会の聖餐式やルター派、ドイツの合同教会の礼拝が生まれた。


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