この項目では、伝説上の魔術師について説明しています。その他のマーリンについては「マーリン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
詩を口述筆記させるマーリン、13世紀のフランスの本の挿絵
マーリン(英語: Merlin)は、12世紀の偽史『ブリタニア列王史』に登場する魔術師。
グレートブリテン島の未来について予言を行い、ブリテン王ユーサー・ペンドラゴンを導き、ストーンヘンジを建築した。後の文学作品ではユーサーの子アーサーの助言者としても登場するようになった。アーサー王伝説の登場人物としては比較的新しい創作ではあるものの、15世紀テューダー朝の初代ヘンリー7世が自らをマーリン伝説に言う「予言の子」「赤い竜」と位置付けたため、ブリテンを代表する魔術師と見なされるようになった。 ラテン語で書かれた『ブリタニア列王史』ではアンブロシウス・メルリヌス(ラテン語: Ambrosius Merlinus)という名で現れる。これを英語読みするとアンブローズ・マーリン[1]もしくはアンブロジアス・マーリン(英語: Ambrosius Merlin)となる。ウェールズ語読みではマルジン・エムリス(ウェールズ語: Myrddin Emrys、マルジンがマーリンに、エムリスがアンブローズに対応)となる。このフルネームはどちらかが姓でどちらかが名という訳ではなく、アンブローズはマーリンの別名で、それを並べただけである[2]。 『ブリタニア列王史』では実在の人物であるかのように描かれるが、現在では著者のジェフリー・オブ・モンマスが、実在のローマ系ブリトン人の将軍アンブロシウス・アウレリアヌスと、半伝説的なウェールズの隠者マルジン・ウィストの物語を組み合わせて作った人物と言われている[要出典]。マルジンは、発狂して森に暮らすうちに予知能力や戦術を身に付けたと言われる人物である。 『ブリタニア列王史』では、ウェールズ南西部の小国ダヴェド
名前およびモデル
出生夢魔に犯される女、ド・ボロン『メルラン』13世紀の写本
一方で、1200年前後に書かれたロベール・ド・ボロンの『メルラン』では、夢魔は悪魔として描かれ、その息子であるマーリンは反キリストになるべくして生まれたが、すぐに洗礼を受けたため悪には堕ちなかった、とされている[要出典]。
『マーリンの予言』と赤い竜・白い竜「赤い竜」と「白い竜」の上でヴォーティガーンに予言するマーリン
生まれて後、母は尼僧となり、マーリンは父も知らぬままカーマーゼン(「マーリンの砦」)という街で暮らしていた[4]。ある時、暴君ヴォーティガンが、家臣の魔術師たちに唆されて、新しい塔の人柱とするために「一度も父がいたことがない若者」を連れてくるように部下に命じ、条件に合うマーリンとその母親が連れて来られた[4]。母親の供述と宮廷学者のモーガンティアスによってマーリンの出生が明らかになると、それまで黙っていたマーリンは口を開いて、宮廷魔術師たちを無能であると看破し、新しい塔の建築がうまくいかないのは、人柱がいないからではなく、塔の地盤の下に池があり、その池に穴の空いた二つの石があって、それぞれの石に竜が眠っているからだと予言した[2]。工事をしてみるとはたしてその通りであったので、人々は畏敬の念を抱いた[2]。なお、この逸話は『カンブリア年代記』ではアンブロシウス・アウレリアヌスのものとされており、ジェフリーはそこから剽窃したものと思われる[要出典]。
ジェフリーはさらに列王史の7巻をまるごと『マーリンの予言』という予言詩に当てている。ジェフリーは、リンカン司教アレグザンダーらから請われて、ブリトン語(ウェールズ語)からラテン語に「翻訳」したと主張している[5]。しかし、2007年時点で、この詩の原詩と思われるものは、ラテン語でもウェールズ語でも見つかっていない[6]。なお、ウェールズ文化では(およびおそらくコーンウォール文化でも)、政治的な予言詩の作者をマルジン(マーリンのモデルの一人とされる半伝説的人物)に仮託する場合が多かった[6]。
この巻では、ヴォーティガーンの眼の前で、前述の二匹の竜が目覚めて、白い竜と赤い竜が争い、赤い竜が負けて逃げ去る[1]。