マンション
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マンション(由来: mansion, : condominium)とは、日本語ではアパートよりも大型の共同住宅(集合住宅)を表す一般名詞として使われている。ただし、語源である英語圏ではコンドミニアムなどの意味で用いられ、共同住宅の意味はほとんどない(下記の他言語での表現も参照)。
概要と定義

マンションというは、日本デベロッパー昭和30年代初めより、一部の限られた階層を対象に、公団住宅などとは一線を画した高級路線の集合住宅を、高級感をイメージさせるために「マンション」と銘打って売り出したことに由来する。その後、対象とする層を広げて多様なものが開発・販売されるようになっても、「マンション」という呼び名が定着した[1]。ただし、英語では、Mansionは主に豪邸を示す言葉であり、日本語で言うような「共同住宅」を意味する一般名詞として用いられることはほとんどない。イギリスではより限定的に、Mansion Houseといった場合は市長公邸、Mansion blockといった場合は高級なアパートを指す。
日本日本におけるマンションを中心に構成された住宅地の例

日本で言うところのマンションは、比較的大規模な共同住宅で独立して住居の用に供することができる各室を有するものを指す。また、同じく共同住宅を指す「アパート」という言葉が、小規模なもの、木造や軽量鉄骨造のもの、賃貸物件を指していることが多いのに対し、「マンション」という言葉は比較的大規模で、構造としては基本的には鉄筋コンクリート造鉄骨鉄筋コンクリート造のような堅固なものという相違点がある[2]区分所有建物の区分所有等に関する法律、略称:区分所有法)されるもののうち分譲されたものを分譲マンション、個人が共同で建てたマンションは個人共同マンションまたはコーポラティブマンション、賃貸されるものを賃貸マンションという。なお、共同住宅は住宅の建て方を示す用語で、一戸建、長屋建(タウンハウス)と並んで分類されている[3]

マンションは、都市部における住居形態として重みをもつ。日本では、国土交通省が行った調査では、2009年末において、全国の分譲マンションストック戸数は約562万戸としている。なお該当調査におけるマンションとは、「中高層(3階以上)で分譲・共同住宅、鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリートまたは鉄骨造の住宅」を示す[4]

また住宅について、事業者の種類に応じて分譲、賃貸、コーポラティブハウスに分類される。このうち分譲とは、事業者が不動産会社(事業者宅建業法第3条第1項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者)であって、住戸ごとに区分し売買するものを言う。したがって「分譲マンション」とは、鉄筋コンクリート造ないし鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅のうち、事業主が不動産会社で住戸ごとに区分し売買するものを示している。

「マンション」は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律2001年施行)において、法令用語とされた。同法における定義では、「複数の店舗や事務所と居住となる専有部分が1戸以上ある建物で、区分所有者が最低2名以上いること」とされ、これには設備や土地も含まれる。これは、同法でいうマンションが区分所有法の適用対象でもあるということ、「この法律は、土地利用の高度化の進展その他国民の住生活を取り巻く環境の変化に伴い、多数の区分所有者が居住するマンションの重要性が増大していることに鑑み(以下略)」とされていることからもわかるように、分譲マンションにおける管理を想定したものであるため、オーナーが1人で賃貸に供されているマンションなどは、ここではマンションとされない。ただし、2人以上いた区分所有者が1人になった場合でも、区分所有法は適用される。

2004年、国土交通省は「中高層共同住宅標準管理規約」の改正にあたり、「分譲の中高層共同住宅を指す法令用語として『マンション』の用語が定着している状況」を理由に、名称を「マンション標準管理規約」と変更した[5]。2015年の国土交通省の調査による日本のマンションの総戸数は約600万戸で、うち団地にあるものは200万戸とされる[6]
他言語でのマンションの表現
英語

語源である英語では、集合住宅をアパートメント(apartment)と呼び、賃貸物件ならばアパートメント・レンタル(apartment rental(略:rental))、分譲物件ならば種類によって、主にコンドミニアム(またはコンドミニウム)(condominium(略:condo))、と(housing cooperative(略:coop))に区分。

マンション(mansion)は米国と英国では邸宅や豪邸などを意味する(集合住宅を意図しない大規模な家屋や敷地という意味であるが、言語間で細部は異なる。)。

イギリスでは、集合住宅の中の一軒をフラット(flat)と呼ぶのがもっとも一般的である。その他に社会政策で普及したタワーブロック(Tower block)、逆に高級感を出したマンションブロック(Mansion block)などの語もあるが、イギリス以外では一般的ではない。日本語の「マンション」の語源となったMansion Blockの例としては、Devon Mansionsなどがある。
歴史
日本

日本独自呼称の「マンション」を「(3階建て以上の)高層鉄筋コンクリート構造集合住宅」と定義するならば、日本最古・日本初のマンション(3階建て以上の高層鉄筋コンクリート構造の集合住宅以下、マンション)は、1916年(大正5年)竣工の、軍艦島とも俗称された端島長崎県長崎市の島)の集合住宅群の30号棟(竣工時4階建て。後に7階建てに増築)である。

次に古いマンションは、関東大震災(1923年・大正12年)の復興支援として、1924年(大正13年)から1933年(昭和8年)の間に建設された同潤会アパートである。

ただし、当時まだマンションという呼称は存在せず、これらがかつてマンションと呼ばれた事実は全く無いことには留意が必要であろう。

日本マンション学学会『マンション学事典』では、マンション草創期(1950年代?1960年代前半)、マンション大衆化期(1960年代後半?1970年代)、マンション質向上期(1980年代?1990年代前半)、多様ストック形成期(1990年代後半?)の4期に分けられている。

マンション草創期は、「マンション」の語源にも関係するように一般庶民には無縁なデラックス志向のものに限られ、その一方で建物の区分所有が広まり始めたことを受け区分所有法の制定などがあった。マンション大衆化期は、マンションの普及が促されるにともない徐々に住宅ローン制度が広まる、その一方で後述する建設時などのトラブルが表面化し出した時期でもある。

マンション質向上期は、建築技術の進歩、バブル景気などの好景気を受けて、高層化の進展、居住性の向上も進んだ時期である一方で、マンション草創期などに作られたマンションの大規模修繕、建て替えの必要性の問題が表面化してきた。当時は都心での地価高騰の影響により、戸建住宅が中心であった郊外ベッドタウンへのマンション進出が相次いだ。スポーツクラブジムプール)やラウンジの設置、温泉をパイプラインで浴室に引き込んだ物件や、山間部のリゾートマンションなど多種多様なマンションが供給された。しかし、それらは区分所有者が維持管理しなくてはならず、修繕積立金高騰の一因となることがわかり、現在では人気は衰えている。

その後の時期は、単身世帯の増加、高齢化の進展などを背景に、想定される利用者層などがさまざまなタイプのマンションが市場に登場している。また、マンションにIoTを搭載した「スマートホーム」も話題になっており、マンションの先進化が進んでいる。21世紀には地価下落による土地仕入れコストの低下、超高層建築技術の発展にともない、全国的に大都市の都心部にタワーマンション建設が続いている。
旧ソビエト連邦・ロシア連邦

1960年代、ソビエト連邦(ソ連)政府はフルシチョフカロシア語: хрущёвка; IPA: [xr?????fk?])という集合住宅をソ連邦内に数多く建設した。低コストで、パネル工法あるいはレンガで作られており、3階から5階建てである。建設はその名前にある通り、ニキータ・フルシチョフ政権が推進した。

もともとこれらの建物は、成熟した共産主義によって住宅不足が軽減されるまでの一時的な住宅であると考えられていた。フルシチョフは20年以内に社会主義から共産主義に移行できると予測した。その後、レオニード・ブレジネフ政権は各家族に「1人1部屋の確保と1部屋分の追加」を約束したが、ソ連崩壊を経たロシア連邦では今日も多くの人がフルシチョフカに住み続けている。
イギリス「イギリスのタワー・ブロック」も参照

インナーシティの高密度開発のために住宅助成金制度を改正(1946年)。1967年まで高層住宅ブームだった[7]。しかしタワーは育児・防犯に問題が大きいとの一連の調査結果、そして上位7社で7?8割という建設会社の寡占から批判を集め、ローナン・ポイント高層住宅のガス爆発・崩落事故(1968年)を機に高層の公営住宅の建設は中止された[8]


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