マンガン団塊(マンガンだんかい、英: manganese nodule)、多金属団塊 (英: polymetallic nodule) とは、深海の海底に存在する球状の凝結塊であり、コアの周りに同心円状に水酸化鉄と水酸化マンガンが層状に凝結したものである。コアは、微化石(放散虫や有孔虫)の殻[1]や、燐灰石などのリン酸塩鉱物に置換されたサメの歯[1]や、玄武岩のデブリ、さらには既に形成されていた別の団塊(ノジュール)の破片であることもある。 コアは顕微鏡的大きさであることもあり、結晶化作用により完全にマンガン鉱物に置換されていることもある。マンガン団塊(写真の幅は20 cm) マンガン団塊には様々な大きさがあり、小さいものは顕微鏡で観察するような微粒子、大きいものは20cm以上の大きさとなるが、直径5cm-10cm程度の大きさのものが最も多い。マンガン団塊の表面は通常平滑であるが、粗面やブツブツした乳頭状や不規則なものも存在する[1]。底面側は、海底の堆積物に埋まっているので、上部より粗面となる。 マンガン団塊の成長は地質学的な現象の中でも遅いものの一つで、放射性同位体元素 海水からの化学的沈殿には、マンガン団塊に含まれる酸化鉄が触媒として働いていると考えられている。生物起源には有孔虫の底生群集によるものと、バクテリアによるMn2+の酸化が考えられている[3]。複数の過程が並行的に作用することもあるし、ある過程の後に別の過程を受けてマンガン団塊が成長することもある。 マンガン団塊中のMnO2は主に轟石、バーネス鉱
外観
成長と化学組成
マンガン団塊の化学組成は、マンガン鉱物の種類や大きさ、コアの種類によって変化する。経済的観点から価値がある種類について言えば、マンガン(27%-30%)、ニッケル(1.25-1.5%)、銅(1-1.4%)、コバルト(0.2-0.25%)を含む。また、別の種類のマンガン団塊は鉄(6%)、ケイ素(5%)、アルミニウム(3%)とそれより少ない量のカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、チタン、バリウムを主に水酸化物として含む。 マンガン団塊の多くは半分もしくは完全に堆積物に埋もれた状態で海底に存在する。その量は場所により大きく異なり、多い場所ではマンガン団塊が互いに接しあうようになっていて海底の70%を占めていることもある。 団塊の総量は、ロンドン地質博物館のAlan A. Archerの見積り(1981)によれば、5,000億tとされる。どの深さにも分布しうるものであり、湖にも存在する[6]。しかし、最も高密度に分布するのは深度4,000-6,000mの深海平原である。 マンガン団塊は1868年に北極海のシベリア沖、カラ海で発見された。チャレンジャー号(HMS Challenger)の科学探検航海 (1872?1876)により、世界中の大洋のほとんどに分布することが判った。 マンガン団塊の開発への関心の高まりは、1960年代と1970年に鉱業団体の間で大きな活動を起こした。有望な資源を調査し、採掘と精錬の技術を研究開発するために数億ドルもが投資された。初期の実験は、アメリカ合衆国、カナダ、イギリス、西ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、日本が参加する四つの国際団体(国際コンソーシアム)と、フランスと日本の私企業と機関によって主になされた。また、公的資金が投入されている機関がソビエト連邦、インド、中国にあった。 1970年代の中盤、7,000万ドルの国際合弁事業は数トンものマンガン団塊を東赤道太平洋の深海平原(深さ5,500m以上)から採取することに成功した。集められたマンガン団塊から、多くの量のニッケル(このプロジェクトでの一応の目的金属)と銅、コバルトが乾式冶金と湿式冶金の両方で抽出された。この8年間のプロジェクトにはいくつかの開発が付随して実施され、これには、曳航されたサイドスキャンソナーの配列でシルト上の団塊の数密度を評価し、同時に垂直向きの誘導低周波音響ビームによるサブボトムプロファイリングを行ったことなどがある。
分布
資源としてのマンガン団塊