マロニエ
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セイヨウトチノキ[マロニエ]
セイヨウトチノキ
保全状況評価
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))

分類

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 angiosperms
階級なし:真正双子葉類 eudicots
:ムクロジ目 Sapindales
:ムクロジ科 Sapindaceae
:トチノキ属 Aesculus
:セイヨウトチノキ A. hippocastanum

学名
Aesculus hippocastanum
L.
和名
セイヨウトチノキ(西洋栃の木)
英名
Horse-chestnut
Conker tree

セイヨウトチノキ(学名:Aesculus hippocastanum、: Horse-chestnut, Conker tree)は、大型の落葉樹である。マロニエ(: marronnier)ともいう[1]
名称

セイヨウトチノキは「マロニエ」ともいう[1]。また、英語で horse-chestnut、ドイツ語で Rosskastanie、フランス語でchataignier des chevaux すなわち「馬の栗」とも言われる。これは、「この木はの仲間である」という誤解と、の胸部疾患の治療に用いられたことに由来する[2]。馬への利用はトルコに始まりヨーロッパに伝えられた[1]
分布

バルカン半島からトルコの森林地帯が原産地とされている[1]ギリシアアルバニアマケドニア共和国セルビアブルガリア等、バルカン半島の山地の狭い地域に自生する[3]。また、温帯域では世界で広く栽培されている。
生育

成長すると36mの高さになり、ドーム状の樹冠が形成される。葉は、各々13cmから30cmの小葉が5から7枚向かい合って付き、7cmから20cmの葉柄を持つ60cm程度の手のひら型となる。葉が落ちた後に枝に残る葉痕は、7つの「爪」を備えた特徴的な馬蹄形になる。

花は通常白色で赤い斑点があり、春に咲く。20個から50個の小花からなる円錐花序で、高さは10cmから30cmになる。

それぞれの円錐花序からは、通常1個から5個の果実ができる。果実は緑色で柔らかいとげのあるカプセル状で、1つの(稀に2つか3つの)トチの実と呼ばれるナッツのような種子を持つ。トチの実は直径2cmから4cm、光沢のある茶色であり、底に白色の跡がある[4]
歴史

セイヨウトチノキはギリシアの山地には自生していたものの、ヨーロッパの他地方では知られていなかった。オーストリア大使としてオスマン帝国に駐在していたブスベックはヨーロッパにチューリップを伝えたことで知られているが、1557年、そのブスベックがコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)でセイヨウトチノキについて書いた文章が最古の文献となる。

ウィーンのマキシミリアン2世に仕えた庭師のクルシウスがヨーロッパに株を移入した[1]。1615年にはバシュリエがフランスに株を移入している[1]

17世紀、樹皮と種子が薬剤製造者から解熱剤として評価されるようになるとキナノキの代用品として用いられるようになった[1]。1806年のナポレオン1世の大陸封鎖令で製薬原料をフランス国内で調達しなければならなくなりセイヨウトチノキが見直された[1]。それでも信頼性の高いキナノキのほうが好まれた[1]

セイヨウトチノキの血行不全への効用が広く認知されるようになるとともに解熱剤の特性では利用されなくなった[1]
利用葉と幹

春に咲く美しい花のための栽培は、夏が暑すぎない気候の領域で成功している。その北限は、カナダエドモントンアルバータ[5]ノルウェーフェロー諸島[6]ハーシュタ等である。南方では、冷涼な山地が生育に適している。
実の利用種子芝生の上での発芽

若くて新鮮な実はアルカロイドサポニングルコシダーゼを含み、弱毒である。触れるだけでは危険ではないが、食べると病気になる恐れがある。

サポニンを含むうえに苦くてまずいため食用にはしない[1]。ただし北米の先住民族はサポニンを除去するため長時間かけて実を茹でてから食していた[1]。また静脈系疾患向けに乾燥エキス剤に加工されているものもある[1]。サポニンアエスシンは、静脈瘤浮腫捻挫等に対して健康目的で用いられ、食品添加物としても入手できる(→食用に関してはマロン (植物)を参照)[7]

シカ等のある種の哺乳類は、毒を分解し、安全に食べることができる。馬にとっては健康に良いと言われるが、証明はされておらず、馬に与えることは賢明ではない。

かつて、トチの実はフランススイス亜麻羊毛等の脱色に用いられていた。石鹸分を含むため、6リットルの水当たり20個の実の皮をむいてやすりをかけるか乾燥させ、石臼で挽いてリンネルや毛織物等の洗濯に利用されていた。

2つの大戦の間、トチの実はデンプンの原料として使われ、このデンプンはハイム・ヴァイツマンの考案したClostridium acetobutylicum 発酵法を用いてアセトンの合成に用いられた。アセトンはバリスタイトからのコルダイトの成形の溶剤として用いられた。

イギリスアイルランドでは、種子が子供の遊びに使われている。なお、トチの実は、客間に飾るとクモを避けるという迷信がある[8]フィンセント・ファン・ゴッホ 『花咲くマロニエの枝(英語版)』/1890年の油彩画ビュールレ・コレクション日本語では『花咲くの枝』の訳題でもよく知られているが、描かれているのは、フランス人にとって親しみ深いマロニエである。「名称」節も参照。
樹木の利用

1576年ウィーンで植樹されたのち、次々とヨーロッパの並木として、また公園樹木として利用されるという流行を見た。現在も並木として、また公園やレストランの中庭などで夏の木陰を提供していて、例えばフランスパリシャンゼリゼ通りの並木がよく知られている。


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