「マルムジー」はこの項目へ転送されています。マルムジーの名でも知られるハンガリーのワイン用ブドウ品種については「フルミント」をご覧ください。
「カガサル」はこの項目へ転送されています。カガサルの名でも知られるスペインのワイン用ブドウ品種については「カイエタナ
」をご覧ください。「スビラ」はこの項目へ転送されています。スビラの名でも知られるスペインのワイン用ブドウ品種については「マカベオ」をご覧ください。
17世紀の美術史家については「カルロ・チェーザレ・マルヴァジーア」をご覧ください。
マルヴァジーア
ブドウ (Vitis)
枝に実ったマルヴァジーアの果実
色白
種ヨーロッパブドウ
別名別名節を参照
原産地 ギリシャ
主な産地地中海地域、カリフォルニア州
VIVC番号7256
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マルヴァジーア (Malvasia、イタリア語発音: [malva?zi?a]、Malvaziaとも) は、地中海地域、バレアレス諸島、カナリア諸島、マデイラ島で歴史的に栽培されてきた複数のワイン用ブドウ品種を一括りにした名称であり、現在では世界中のワイン生産地域の多くで栽培されている。かつてはマルヴァージア種主体のワインにも互換的にマルヴァジーアやマルムジー (Malmsey) の名が使われていたが、現代のワイン学においては、「マルムジー」の名はマルヴァジーア種から作られた甘口のマデイラワインのみに現在のところほぼ限られている。マルヴァジーアの系統に入る品種は、マルヴァジーア・ビアンカ (Malvasia bianca) 、マルヴァジーア・ディ・スキエラーノ (Malvasia di Schierano) 、マルヴァジーア・ネグラ (Malvasia negra) 、マルヴァジーア・ネーラ (Malvasia nera) 、マルヴァジーア・ネーラ・ディ・ブリンディジ (Malvasia nera di Brindisi) 、マルヴァジーア・ディ・カンディア・アロマティカ (Malvasia di Candia aromatica)[1] 、マルヴァジーア・オドロシッシマ (Malvasia odorosissima) [1]など多数にのぼる[2]。
マルヴァジーアのワインを生産しているのは、イタリア (フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州、ロンバルディア州、プッリャ州、シチリア島、リーパリ島、エミリア=ロマーニャ州、サルデーニャ島など) 、スロベニア、クロアチア (イストリア半島など) 、コルシカ島、イベリア半島、カナリア諸島、マデイラ島、アメリカ合衆国 のカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州など 、オーストラリア、ブラジルである。マルヴァジーア各品種はその品種名を冠した白 (稀ながら赤) ワイン、デザートワイン、酒精強化ワインの生産に使用されるほか、ヴィン・サント用のブドウのブレンドに含まれる場合もある。
歴史モネンヴァシア島の要塞を描いた17世紀の地図
ほとんどのブドウ品種学者は、マルヴァジーア系統のブドウの起源は古く、ギリシャのクレタ島が発祥の地である可能性が高いと考えている[3]。おそらく「マルヴァジーア 」という名称は、イタリア語で「マルヴァジーア (Malvasia) 」として知られていた、ラコニアの海岸にある中世・ルネサンス初期の東ローマ帝国の要塞、モネンヴァシア (Monemvasia) に由来すると思われる。というのも、同地の港はペロポネソス半島東部産ワインの(あるいはキクラデス諸島産ワインの一部も)交易拠点として機能していたらしいからである。 中世のあいだ、ヴェネツィア人は「マルヴァジーア・ワイン」の交易を盛んに行なったため、ヴェネツィアの酒商店は「マルヴァジーエ (malvasie) 」の名で知られていた[3]。 ときおり、クレタ島イラクリオン県のマレヴィジ (Malevizi) に由来するのではという説が唱えられることがあるが、学者たちのあいだで真剣に受け止められることはない[4][5]。
いずれにせよ、マルムジーは中世にギリシャが輸出していた3つの主要なワインのひとつであった (他の2つについてはルムニー・ワイン(英語版)およびクレタ・ワイン(英語版)を参照) 。一説ではイングランドのエドワード4世が弟ジョージ・プランタジネット初代クラレンス公を大逆罪とした際、彼の非公開処刑は「大酒樽のマルムジー・ワインで溺死」させるというものであったと云われており、このことはシェイクスピアの『リチャード三世』で戯曲化された。マルヴァジーアの果房
モネンヴァシアもカンディア (イラクリオンの別名) も、さまざまな現代のブドウ品種に名称を貸してきた。ギリシャにはモネンヴァシアの名で知られる品種があり、明らかにこの港にちなんで名付けられたものだが、現在では主にキクラデス諸島で栽培されている。西ヨーロッパでは、一般的なマルヴァジーア品種のひとつが、原産地といわれる地域にちなみマルヴァジーア・ビアンカ・ディ・カンディア (クレタの白いマルムジーの意) の名で知られている。モネンヴァシア種は西ヨーロッパのマルヴァジーア各品種の祖先であると長らく考えられていたが、近年のDNA型鑑定によると、モネンヴァシアとマルヴァジーアのいかなる品種とのあいだにも近い類縁関係はないということが示された。しかしながら、DNA型鑑定では (ギリシャ全土で広く栽培されている) アティリ(英語版)というブドウ品種がマルヴァジーアの祖先にあたるということが示された[6][7]。 ほとんどのマルヴァジーア種は、マルヴァジーア・ビアンカと近い類縁関係にある。例外のなかで有名なものは、マルヴァジーア・ディ・カンディアの名で知られる品種であり、マルヴァジーアの亜種としてははっきりと特徴が異なる。マルヴァジーア・ビアンカは、イタリア、カリフォルニア州サンホアキン・バレー、ギリシャのパロス島やシロス島、カナリア諸島、スペインのリオハ州およびナバラ州など、世界各地で広く栽培されている[3]。イタリア中部では、ワインのアロマと質感を増すために、よくマルヴァジーアがトレッビアーノにブレンドされる。リオハでは、マカベオとのブレンドで同様のはたらきをする[8] 。 マルヴァジヤ・イスタルスカ (Malvazija Istarska) マルヴァジヤ・イスタルスカはクロアチア領・スロベニア領・イタリア領に分かれるイストリア半島にちなんで名付けられた (イタリアの品種・スロベニアの品種も参照) 。これはクロアチア領イストリアおよびダルマチア地方北部の主要な白ワインのひとつとなっている。
ブドウの各品種と生産地域
クロアチアの品種マルヴァジヤ・イスタルスカの高品質ワインのボトル