マルス_(システム)
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MARSによる発券の一例MR32型マルス端末

マルス(英語: MARS : Multi Access seat Reservation System)は、日本国有鉄道(国鉄)・JRグループ座席指定券類の予約・発券のためのコンピュータシステムである。
概要

JRの指定席券を主として、乗車券類・企画券などの座席管理・発行処理および発行管理(精算業務)を行う巨大なオンラインシステムであり、ホストシステム、端末ともに「マルス(端末)」と呼ばれることが多い。

名称について、元々は "Magnetic electronic Automatic seat Reservation System"(磁気的電気的自動座席予約装置)の略とされていたが、その後 "Multi Access seat Reservation System"(旅客販売総合システム)の略となり、現在では再び"Magnetic electronic Automatic seat Reservation System"の略となっている。ローマ神話の軍神マルスにかけたネーミングでもある。アルファベットでは"MARS"と書くが、一般には片仮名で「マルス」と表記される。

マルス1(マルスワン)が電子計算機技術のオンラインリアルタイムシステムへの応用の可能性を示したこと、現代でも実際に使われているシステムへの発展の基礎となったことが評価され、2008年平成20年)10月、電気学会の電気技術顕彰制度「第1回でんきの礎」モノ部門に選定された[1][2][3]

また、2009年(平成21年)には情報処理学会により「情報処理技術遺産」として認定された[4]
マルスシステム

マルス501の中央装置(ホストコンピュータ)は、2013年までは東京都国分寺市にあったが、その後住所を明らかにしない形で別の場所に設けられたシステムセンターに移転している[5]。このセンターは、震度7の横揺れにも耐えうる免震構造と、特定非営利活動法人日本データセンター協会(データセンター業界団体)による施設基準の格付けで最高水準(ティア4[6])の信頼性を確保したセキュリティ設備を備えている[5]。大規模地震などの災害が発生してもサービスを継続的に提供できるようになり、安全性信頼性が高まった[5]国鉄分割民営化以後は鉄道情報システム株式会社(JRシステム)が保有・運営している。

中央装置で一括管理する集中型を採用しており、中央装置は歴代日立製作所の大型コンピュータ・超大型コンピュータが採用されている。2020年(令和2年)時点で使用しているマルスは「マルス505」である。

もともとは鉄道切符(乗車券特別急行券急行券座席指定券特別車両券寝台券など)の発売のために開発されたシステムだが、現在では乗車券類だけでなく、宿泊券、遊園地展覧会などイベント入場券等の販売も行えるようになっており、かつては航空券を取り扱ったこともあった。

JR鉄道駅みどりの窓口旅行代理店に設置される端末(MR端末、東日本旅客鉄道(JR東日本)ではMEM端末。MEX端末はJR東日本の子会社であるJR東日本情報システムがJR東日本向けに開発した端末が主流)とは、鉄道情報システムが管理するJRネットなどを経由してホストと接続されている。また、JTB(旧日本交通公社)、日本旅行近畿日本ツーリストなど、大手旅行代理店の旅行業システムともオンラインで接続されており、旅行業側の端末でJRの指定券などを発売することが可能である。

端末で管理されている座席は、JRの新幹線特急列車や、急行快速普通列車の「座席指定席」を中心に、「ドリーム号」などJRバス各社およびこれらと共同運行する高速バスの座席指定席などである。バスの座席については、JRシステムなどで新たに開発された座席予約管理システムである「高速バスネット」に移行する方策が採られている(詳細は後述)。また2015年(平成27年)6月30日までは日韓共同きっぷを発売していた関係で、大韓民国KTXの座席も管理していた。

マルスのシステム稼働時間は、日本標準時で4時00分から翌日2時00分までである[7]
乗車券原紙

乗車券原紙については、偽造防止のため、原紙表面へJRマークと字模様(旅客鉄道会社別にアルファベットなどで一文字 … 北海道:北 / 東日本:E / 東海:C / 西日本:W / 四国:S / 九州:K。JRの駅以外のマルス〈JR貨物が過去に行っていた旅行代理業『JRエフツーリスト』を含む〉で発券される場合は当該地域のJR旅客会社の字模様が入ったものを使用)と「JRロゴ」が浮かび上がる潜像が施されており、カラーコピーをした場合において、真券と偽造券の識別が簡単に出来るように工夫されている。
定期券原紙(磁気/IC共通)

磁気定期券原紙については、前述のようなドラム型のロール紙タイプではなく、樹脂製の横85ミリメートルにカットされた用紙が用いられており、乗車券原紙以上の偽造防止策が施されている。また有効期限内であれば、劣化による券面の印字が不鮮明な場合などは購入駅で無償で交換してもらうこともできる。

旅行会社ではJR定期券の発売は行わないので旅行会社向け端末では削除されている[9]
マルス端末

マルスシステムに接続して各種切符を発券する端末は、駅員が操作するタイプ(鉄道情報システム(JRS)製品:MR型、JR東日本情報システム(JEIS)製品:ME型)と、顧客自身が操作するタイプ(MV型)の2つに分類できる。

これらは、JR各社のさまざまなニーズに応じることができるように、JR東日本におけるSuica、JR西日本におけるICOCAへの対応など、システムや機能が拡張されている。また、クレジットカード会社の信用照会ともオンラインで接続されており、カード決済による発券の際には、信用照会端末としての機能も併せて持つ。

なお、端末は日立製作所製のほか、一部に日立と同じく芙蓉グループに加盟する沖電気工業製のものも存在する。沖電気製機材はMV30端末やMV50端末、JR東日本のMEM端末、MEX端末、ME-4端末で主に使用されているほか、M型端末は日立製作所とともに2社で製造していた。
駅員操作型端末

JR鉄道駅や旅行会社のみどりの窓口の端末に、駅員や旅行会社係員が端末を操作し、列車や座席、条件等を指定することにより、端末に接続されたプリンターから自動的に切符類が発券される。端末から出力される切符は、ほとんどが磁気化券となっており、発売された切符の内容がマルス端末による自動控除(払戻処理)用と、自動改札機用の情報それぞれにエンコードされ記録されている。発売された切符のうち、定期券サイズで切符に丸印の中に×のマークが入った切符や、自動改札機を通過できない旨明記された切符以外は、原則として全国のJR各駅の自動改札機を通過することが可能である。

端末の種類としてはMR型、ME型になる。
顧客操作型端末

JR発足直後にも「TravelEDI端末」が試験運用されていたが、2000年代に入ってからは利用客が自ら操作できる指定席券の発券や座席の指定機能を持った指定券自動券売機(MV端末)が、主要駅に設置されるようになった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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