マラリア
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この項目では、感染症について説明しています。バンドについては「マラリア (バンド)」をご覧ください。

マラリア

マラリア原虫電子顕微鏡写真
概要
診療科感染症
分類および外部参照情報
ICD-10B50-B54
ICD-9-CM084
OMIM248310
DiseasesDB7728
MedlinePlus000621
eMedicinemed/1385 emerg/305 ped/1357
Patient UKマラリア
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世界の疾病負荷(WHO, 2019年)[1]順位疾病DALYs (万)DALYs(%)DALYs
(10万人当たり)
1新生児疾患20,182.18.02,618
2虚血性心疾患18,084.77.12,346
3脳卒中13,942.95.51,809
4下気道感染症10,565.24.21,371
5下痢性疾患7,931.13.11,029
6交通事故7,911.63.11,026
7COPD7,398.12.9960
8糖尿病7,041.12.8913
9結核6,602.42.6857
10先天異常5,179.72.0672
11背中と首の痛み4,653.21.8604
12うつ病性障害4,635.91.8601
13肝硬変4,279.81.7555
14気管、気管支、肺がん4,137.81.6537
15腎臓病4,057.11.6526
16HIV / AIDS4,014.71.6521
17その他の難聴3,947.71.6512
18墜死3,821.61.5496
19マラリア3,339.81.3433
20裸眼の屈折異常3,198.11.3415

マラリア(麻剌利亜[2]、麻拉利亜[3]ドイツ語: Malaria、英語: malaria、語源は「悪い空気」を意味する古いイタリア語: mala aria)は、熱帯から亜熱帯に広く分布するマラリア原虫による感染症である。雌のハマダラカが媒介するマラリア原虫が病原体であり、原虫の違いにより5種類に大別される(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア、サルマラリア)[4]

蚊に刺されてマラリア原虫が体内に入ると、潜伏期間(1週間?4週間程度)を経て、発熱悪寒(寒気)、頭痛関節筋肉の痛み、関節痛筋肉痛嘔吐下痢といった症状が現れ、脳や内臓に合併症を引き起こすこともある。防蚊対策のほか、予防薬や治療薬もあるが、熱帯熱マラリアでは発症から24時間以内に適切な治療を施さないと重症化して、死亡することもある[4]。悪性の場合は脳マラリアによる意識障害腎不全なども起きる。

全世界ではマラリアに年間2.16億人が感染し、うち44.5万人が死亡している(2016年)[5]日本でも輸入感染症として年間60人程度の発症届け出がある[4]新型コロナウイルス感染症の世界的流行による国際的往来制限前)。近代以前の日本でもしばしば発生しており、古典などで出てくる瘧(おこり)とは、大抵このマラリアを指していた。?瘧(かいぎゃく、がいぎゃく)はマラリアの意[6]

感染者や死者が多いことから、医学公衆衛生でも重大な関心が払われており、世界保健機関(WHO)は4月25日を「世界マラリア・デー」に定めている。結核ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とともに「世界三大感染症」と呼ばれる[7]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
症状

マラリアを発症すると、40近くの激しい高熱に襲われるが、比較的短時間で熱は下がる。しかし、三日熱マラリアの場合48時間おきに、四日熱マラリアの場合72時間おきに、繰り返し激しい高熱に襲われることになる(つまり発熱の二日後あるいは三日後に再発熱する格好となり、最初の発熱日を一日目として数えると、三日目、四日目に次の発熱が起きる。これが三日熱、四日熱と呼ばれる所以である)。卵形マラリアは三日熱マラリアとほぼ同じで50時間おきに発熱する。熱帯熱マラリアの場合には周期性は薄い。

熱帯熱マラリア以外で見られる周期性は原虫が赤血球内で発育する時間が関係しており、たとえば三日熱マラリアでは48時間ごとに原虫が血中に出るときに赤血球を破壊するため、それと同時に発熱が起こる。熱帯熱マラリアに周期性がないのは赤血球内での発育の同調性が良くないためである。

いずれの場合も、一旦熱が下がることから油断しやすいが、すぐに治療を始めないとどんどん重篤な状態に陥ってしまう。一般的には、3度目の高熱を発症した時には大変危険な状態にあるといわれている。

放置した場合、熱帯熱マラリア以外は慢性化する。慢性化すると発熱の間隔が延び、血中の原虫は減少する。

三日熱マラリアと卵形マラリアは一部の原虫が肝細胞内で休眠型となり、長期間潜伏する事がある。この原虫は何らかの原因で分裂を再開し、再発の原因となる。四日熱マラリア原虫の成熟体は、血液中に数か月 - 数年間潜伏して発症させることがある[8][9]
合併症

合併症は一般的に熱帯熱マラリアに起こる。
脳マラリア

原虫に寄生された赤血球の表面に形成された突起(Knob)が、血管内皮に固着して血流を阻害するなどして発症する[10]。脳や他の臓器の毛細血管が多発的に閉塞し、急性腎不全意識低下、言語のもつれなどの神経症状が起こる。進行すると昏睡状態に陥り、死亡する。
黒水熱

急速な溶血により、ヘモグロビン尿黄疸などが発症する。
その他の合併症

脾臓肥大と低血糖肺水腫などが発症する可能性がある。また、妊婦が感染すると妊娠に影響を与え、また原虫が胎児に移行する可能性もある。
原因マラリア原虫を媒介するハマダラカマラリアのライフサイクル

病原体は単細胞生物であるマラリア原虫(Plasmodium spp.)。ハマダラカ(Anopheles spp.)によって媒介される。

マラリア原虫はアピコンプレクサ門 胞子虫 コクシジウムに属する。微細構造および分子系統解析からアルベオラータという系統に属する。ここには他に渦鞭毛藻類が知られ、近年マラリア原虫からも葉緑体の痕跡が発見された。そのため、その全てが寄生生物であるアピコンプレクサ類も祖先は渦鞭毛藻類と同じ光合成生物であったと考えられている。ヒトの病原体となるものはながらく熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)の4種類であったが、近年サルマラリア原虫(P. knowlesi)が5種目として大きな注目を集めている。サルマラリアは顕微鏡検査では P. vivaxと区別が難しいため従来ほとんど報告例はなかったが、近年の検査技術の発達によりPCRで確実な判断ができるようになったため、多数症例が報告されるようになった。マレーシアサラワク州では今日のマラリア症例の70%がサルマラリアによるものであることも報告されている[11]


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