マズルローダー
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この項目では、前装銃を用いた射撃競技について説明しています。マズルローダー全般については「前装式」をご覧ください。
狩猟用インライン・マズルローダーで鹿猟(英語版)を行うアメリカ陸軍のデビッド・グレン軍曹(左)。グレン軍曹は傷痍軍人社会復帰プログラムの一環で、インディアナ陸軍州兵(英語版)への再雇用の為、同州兵のステファン・スペンサー大尉(右)の指導の下、農業職員として必要な技能の習得を行っている。(2011年)

マズルローダーとは、銃口(マズル)から弾を装填するタイプの銃のことで、主に火縄銃フリントロック式パーカッションロック式等の先込め式古式銃や、米国における狩猟用前装銃を指すが、本稿ではこうした銃を用いた射撃競技(マズルローディング競技)についても記述する。
歴史マズルローディング射撃に興ずるボーイスカウトアメリカ連盟ヴァーシティスカウト(英語版)の少年達。ヴァーシティスカウトは、日本のボーイスカウトにおけるベンチャースカウトに相当する。(2004年)詳細は「火縄銃」、「マスケット銃」、「ゲベール銃」、および「ミニエー銃」を参照

14世紀、銃砲が歴史に登場して以来、その装填方式は19世紀の半ば頃までは、概ね「先込め式(前装式)」であったが、それ以降は「元込め式(後装式)」となって現在に至っている。マズルローダーは一旦廃れた歴史的遺物の旧式銃ではあるが、その操作方法や射撃ノウハウの人間臭さに親しみを覚えてか、欧米及びオセアニア地域では現在でもマズルローダー競技が盛んである。その競技で古式銃を使用するのは勿論であるが、古式銃に限らずその競技に使用するためだけの、撃鉄が下部にある新式の前装銃が現在も作られており、それら競技の「レプリカ部門」に使用するための古式銃のレプリカも作られている。米国ではいくつかの州で猟銃としてのマズルローダー銃に対する猟期の優遇策(マズルローダー・シーズン)が採られている事もあり、狩猟用の新式マズルローダー銃の需要が現在でも一定数存在し続けている[1]
インライン・マズルローダーライマン・プロダクツ社にて復刻製造されたトラディショナル・マズルローダーのホーケン・ライフルホジドン・パイロデックス。モダンなマズルローダーの為に開発された黒色火薬代替品である。実証試験中にニトロセルロース粉末を装填された結果、銃身破裂を起こしたトラディショナル・マズルローダー・ピストルの銃身。この銃身は現代の技術で複製されたものであるが、現代の推進薬の高圧には耐えられなかった。

米国では1970年よりマズルローダーや弓矢(コンパウンドボウリカーブボウクロスボウ)などの前近代的な猟具(英語版)を使った狩猟において、いくつかの州で特別な猟期が設定され、この期間中は一般的な狩猟銃(散弾銃ライフル銃)や空気銃拳銃など)での狩猟が禁止されている[2]

後装式や反復式小銃などの近代的な銃器が全く排除された環境の中で、大型獣の狩猟をまともな形で行う必要があるため、米国のモダンなマズルローダー・ライフル(英語版)は狩猟用弓矢と同様に威力と同時に射程の面においても、近代的な後装式猟銃に決して引けをとらない性能が与えられている。マズルローダー・シーズンが設定された州での狩猟では、はじめは古式銃に相当するマスケット銃ミニエー銃(ライフルド・マスケット(英語版))、あるいはトンプソン/センター・アームズ(英語版)やライマン・プロダクツ[3]などが、1970年代のマズルローダー・シーズンの制定に呼応して再生産を開始したホーケン・ライフル(英語版)などの古式銃レプリカ(トラディショナル・マズルローダー)が使用されていたが、パーカッションロック式では早合(紙製薬莢)を用いたとしても素早い連続発射は難しく、古式銃で一般的なサイドハンマー方式では銃身に斜め方向からの衝撃が加わる為狙点がぶれやすく、たとえ弾道特性に優れたミニエー弾(英語版)を用いたとしても、照準器を用いた遠距離の狙撃には技術的・構造的な限界がある状況だった。

マズルローダー・シーズンの始まりは米国内での黒色火薬の需要をにわかに増大させたが、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(BATF)は静電気により容易に発火事故を起こす伝統的な黒色火薬を爆発物と規定しており、1970年組織犯罪管理法(英語版)において、5ポンド(約2.27kg)以上の商業保管を規制。1975年に非商業利用の場合50ポンド(約22.7kg)までの保管を認める緩和策が採られたが、なおマズルローダー向けの黒色火薬の安定供給には課題が残る状況であった[4]。そんな中、同年に火薬メーカーのホジドン・パウダー・カンパニー(英語版)は、世界初の黒色火薬代替品(英語版)であるホジドン・パイロデックスを発売した。黒色火薬代替品は黒色火薬に似た火薬力を持ちながらも無煙火薬に近い穏やかな引火性を有していた為、BATFの黒色火薬規制には該当せず、より規制の緩い無煙火薬規制の下で貯蔵販売が行えるようになり[5]、マズルローダーの再普及に大きく貢献した。

1985年、米国人ガンスミスのトニー・ナイトにより創業されたナイト・ライフルズ(英語版)は、画期的なインライン・マズルローダー(直列式前装銃)システムを開発し、ナイト・ライフルズ Mk-85を発売した。インライン・マズルローダーは伝統的なサイドロック構造のパーカッションロック方式を下敷きに、近代的な後装銃(ストレートプル・ボルトアクション)のエッセンスを加えて発展させたもので、ボルトアクションなどで用いられる水平方向に移動する撃鉄と撃針が一体化した撃茎(ストライカー)を用いる構造を採用している。


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