マスタードガス
IUPAC名
Bis(2-chloroethyl) sulfide
別称Iprit
Schwefel-Lost
Lost
Mustard gas
Senfgas
Yellow Cross Liquid
Yperite
Distilled Mustard
Mustard T- mixture
1,1'-thiobis[2-chloroethane]
識別情報
CAS登録番号505-60-2
14.4 °C, 287.6 K, 57.9 °F
沸点
218 °C, 491 K, 424 °F (217 °Cで分解し始め、218 °C で沸騰)
水への溶解度無視できるほど
溶解度エーテル、ベンゼン、脂肪、アルコール、テトラヒドロフランに溶ける
危険性
安全データシート(外部リンク)External MSDS
EU分類Very toxic (T+)
Dangerous for the environment (N)
Vesicant
Carc. Cat 1
主な危険性毒, contact hazard, inhalation hazard, corrosive, environmental hazard, carcinogenic, possibly mutagenic
NFPA 704141
引火点105 °C
関連する物質
関連物質ナイトロジェンマスタード、ビス(クロロエチル)エーテル
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
マスタードガス(Mustard gas)は、化学兵器のひとつでびらん剤である2,2'-硫化ジクロロジエチル(2,2'-Dichloro Diethyl Sulfide)という化合物を主成分とする。びらん剤(皮膚をただれさせる薬品)に分類される。硫黄を含むことから、サルファマスタード(Sulfur mustard gas)とも呼ばれる。毒ガス史上1番多くの命を奪ったことから化学兵器の王様とも呼ばれている。 主にチオジグリコールを塩素化することによって製造される。また、二塩化硫黄とエチレンの反応によっても生成される。 純粋なマスタードガスは、常温で無色・無臭であり、粘着性の液体である。不純物を含むマスタードガスは、マスタード(洋からし)、ニンニクもしくはホースラディッシュ(セイヨウワサビ)に似た臭気を持ち、これが名前の由来である。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}他にも、皮膚につくと傷口にマスタードをすりこまれるぐらいの痛さという説もある[要出典]。第一次世界大戦のイープル戦線で初めて使われたため、イペリット(Yperite)とも呼ばれる。また、不純物が多いときに呈する黄色や黄土色がマスタードに似ていたという説もある。 実戦での特徴的な点として、残留性および浸透性が高いことが挙げられる。特にゴムを浸透することが特徴的で、ゴム引き布を用いた防護衣では十分な防御が不可能である[2]。またマスクも対応品が必要である。気化したものは空気よりもかなり重く、低所に停滞する。
概要
ナイトロジェンマスタードの抗がん剤としての研究は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国で行われていた。しかし、化学兵器の研究自体が軍事機密であったことから、戦争終結後の1946年まで公表されなかった。一説には、この研究は試作品のナイトロジェンマスタードを用いた人体実験の際、白血病改善の著効があったためという。[要出典] マスタードガスは人体を構成する蛋白質やDNAに対して強く作用することが知られており、蛋白質やDNAの窒素と反応し(アルキル化反応)、その構造を変性させたり、DNAのアルキル化により遺伝子を傷つけたりすることで毒性を発揮する。
人体への作用