マグノリアの花たち
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『マグノリアの花たち』(マグノリアのはなたち、Steel Magnolias)はロバート・ハーリング(英語版)の戯曲アメリカ合衆国南部の小さな町を舞台に、固い絆で結ばれる女性たちの姿を描いた作品である。初演は1987年オフ・ブロードウェイで上演され、それを原作とした映画が1989年に公開された。ここで言うマグノリアは、アメリカ南部を象徴する花木タイサンボクを指す。
概要

舞台は小さな町の美容院、登場人物はそこに集まる6人の女性たちである。ウィザーとクレリーの奇しき友情、町の新顔で内気だったアネルの変貌ぶり、トルーヴィと家族の関わり合い、糖尿病を患いながら命をかけて出産を決断するシェルビー、またその決断に複雑な思いを抱える母マリンといった女性たちが紡ぐ絆、友情の群像を描く。

作品が生まれたきっかけは、ロバート・ハーリングの妹スーザンの死であった[1]。1型糖尿病患者だったスーザンは出産のリスクを認識したうえでなお子どもを持つことを望み、産後に合併症を併発して亡くなった。ハーリングはその不幸を受け止めることができずにいたが、スーザンの身に起こったことを執筆するよう周囲から勧められ一幕物の短編を執筆しはじめた。執筆を進めるうちに登場人物の感情や多様な人間関係を描くために一幕物は馴染まないと考えて長編の形式へと切りかえ、また、作品の根底にある深刻な状況を厭世的に描くのではなく、諧謔にあふれた陽気なやりとりを重視する作風とした。

演劇は1987年にオフ・ブロードウェイで初演を迎えて1990年まで公演が続き、2005年にはブロードウェイへ場所を移して再公演を行った[2][3]。また、これまでにイギリス日本スウェーデンの作り手らがそれぞれの国で公演した[4][5][6]

映画は1989年に公開され、1990年に開催された第40回ベルリン国際映画祭のオープニング作品に選ばれた。北米圏において興行収入は8000万ドルを超えるヒットをおさめたが年間の興行収入順位は14位にとどまり[7]、主要な映画賞でも目立った功績を残すことができず、賞レースに参加していたのは若手女優の1人ジュリア・ロバーツのみといえる結果だった。
演劇

このロバート・ハーリングによる戯曲は、今日においても人気がある作品のひとつであり、アメリカ合衆国各地で公演が頻繁に行われている。トルーヴィが自宅で営む美容院を舞台に、登場するのは6人の女性、それとラジオから流れるDJの声を加えた密室劇である。映画化作品に登場するようなほかの人物は会話のなかで言及されるのみで実際には登場しない。初演は1987年3月28日、ニューヨークにあるWPA劇場で迎えた。演出はパメラ・バーリンがつとめ、マリン役にローズマリー・プリンツ、トルーヴィ役にマーゴ・マーティンデイル、シェルビー役にブランチ・ベイカーといったキャストが並んだ。同年6月19日よりプロダクションはルーシル・ローテル劇場に移り、シェルビー役をベッツィ・アイデムが引き継いだ。ヴァーサ劇場正面(2009年)

1989年にはジュリア・マッケンジーによる演出、マリン役にローズマリー・ハリス、トルーヴィ役にマギー・スティード、ウィザー役にジーン・ボート、クレリー役にステファニー・コール、シェルビー役にジョエリー・リチャードソンといったキャストを揃え、ロンドンはリリック劇場で初演された。

2005年の春、戯曲はライシーアム劇場で上演されてブロードウェイ・デビューを飾った。3月15日から試演が始まり、4月4日に本公演の幕があけた。キャストはマリン役にクリスティーン・エバーソール、トルーヴィ役にデルタ・バーク、ウィザー役にマーシャ・メイソン、クレリー役にフランシス・スターンハーゲン、シェルビー役にレベッカ・ゲイハートがついた。公演を終了するまでの上演回数は試演が23回、本公演は136回を数えた。

日本の劇団も上演しており、劇団俳優座によって2007年11月14日から25日までのあいだ東京で公演された。キャストはマリン役に川口敦子、シェルビー役に安藤みどり、翻訳と演出を森一がつとめた。また、スウェーデンにおいては2008年11月16日にストックホルムのヴァーサ劇場で初演され、これにロバート・ハーリングも来場した。キャストはマリン役にペルニラ・アウグスト、シェルビー役にメリンダ・キンナマン、演出をエマ・ブクトがつとめている。
映画

マグノリアの花たち
Steel Magnolias
監督
ハーバート・ロス
脚本ロバート・ハーリング
原作ロバート・ハーリング
製作レイ・スターク
製作総指揮ヴィクトリア・ホワイト
出演者サリー・フィールド
ドリー・パートン
シャーリー・マクレーン
ダリル・ハンナ
オリンピア・デュカキス
ジュリア・ロバーツ
音楽ジョルジュ・ドルリュー
撮影ジョン・A・アロンゾ
編集ポール・ハーシュ
配給 トライスター
コロムビア/トライスター
公開 1989年11月15日
1990年4月21日
上映時間116分
製作国 アメリカ合衆国
言語英語
興行収入$95,904,091[7]
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映画化作品はアメリカ合衆国で1989年11月15日、日本で1990年4月21日に公開された。監督はハーバート・ロス、脚本は原作と同じロバート・ハーリングがつとめた。ハーリングは映画の脚本を初めて手がけて、自身が書き上げた戯曲を大幅に改稿した。原作にはなかった男性キャスト、屋外シーンなど多くの要素を追加した一方、トルーヴィの子供を2人から1人にするといった設定変更や、一部の台詞を削除・変更した。舞台設定はルイジアナ州にあるチンカピンという架空の町がつくられ、実際の撮影はルイジアナ州ナカタシュで行われた。

キャストはアカデミー賞女優のサリー・フィールド、シャーリー・マクレーン、オリンピア・デュカキスといった顔ぶれが並び、重要な役どころをつとめたジュリア・ロバーツはこの映画でゴールデングローブ助演女優賞を受賞したほか、自身初めてとなるアカデミー賞のノミネートを受けた。

男性キャストはマリンの夫ドラム役にトム・スケリット、シェルビーの夫ジャクソン役にディラン・マクダーモット、トルーヴィの夫スパッド役にサム・シェパードが配された。また、シェルビーとジャクソンの結婚式のシーンではロバート・ハーリングが牧師に扮しており、シェルビーが入院した病院のシーンでは実際にスーザンの治療・看護にあたった医師や看護師たちが出演した[1]
キャスト

※括弧内は日本語吹替

マリン -
サリー・フィールド藤田弓子

トルーヴィ - ドリー・パートン翠準子

ウィーザ - シャーリー・マクレーン沼波輝枝

アネル - ダリル・ハンナ榊原良子

クレリー - オリンピア・デュカキス谷育子

シェルビー - ジュリア・ロバーツ高島雅羅JAL機内上映版:岡本茉利

ドラム - トム・スケリット寺島幹夫


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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