マイレージサービス
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ユナイテッド航空 マイレージ・プラス会員カードなど

マイレージサービス(またはマイレージプログラム、: frequent flyer program、FFP)とは、航空会社が行う顧客へのポイントサービスのことである。
概要

主なマイレージサービスは、会員旅客に対して搭乗距離比例したポイントを付加し、そのポイントに応じた無料航空券、割引航空券、座席グレードアップなどのサービス提供である。 ポイントの単位として「マイル」の語を用いる。 また、最近では航空会社と関係なくとも「継続的な顧客への付加サービス」を提供するためのポイント集計システムに対して「マイレージ」という呼称を使用することも増えている。

なお、各国で用いられているサービスの呼称「フリークエントフライヤープログラム」は、日本語としては一般的ではない[注釈 1]

マイレージは国際マイル (=1.609344 km)で測った距離であり、海里(= 1.852 km)による距離ではない。また、国際マイルで計測した運行距離1マイル当たりにつき、ポイント1マイルが貯まるわけではない。搭乗距離だけでは付与ポイントは決まらない。TPM(基本区間マイル)に積算率を掛けたりして決まる。
距離と実際のマイレージの例

日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が定めている『東京』(都市コード:TYO)からのマイレージ数[1] [2] [3] [4]と都市間距離(km)は次のようになっている。2022年1月現在のものである。

『東京』からの距離(km)、マイレージ距離(mile)の比較都市名都市コード距離

(km)マイル数

(JAL,ANA)マイル数を

kmに換算 差の割合(%)
『秋田』AXT448.7279449+0.0
『青森』AOJ577.3358576−0.2
『札幌』SPK831.0510821−1.3
『宮崎』KMI872.3561903+3.5
『福岡』FUK880.6567912+3.6
『ソウル』SEL1,1607581,220+5.1
『沖縄』OKA1,553.69841,583+1.9
『北京』BJS2,1041,3132,113+0.4
『マニラ』MNL2,9971,8803,025+0.9
『ハノイ』HAN3,6752,2943,691+0.4
『バンコク』BKK4,6102,8694,616+0.1
『シンガポール』SIN5,3173,3125,329+0.2
『ジャカルタ』JKT5,7763,6125,812+0.6
『デリー』DEL5,8573,6565,883+0.4
『モスクワ』MOW7,5024,6647,504+0.0
『ロンドン』LON9,5856,2149,998+4.3
『パリ』PAR9,7386,1949,966+2.3
『マドリード』MAD10,7896,79510,933+1.3
『ワシントン』WAS10,9256,76210,880−0.4
『メキシコシティ』MEX11,3197,00311,268−0.5

(注1)都市間距離(km)は、理科年表2020年、pp.664-665(日本国内の都市)、pp.666-667(日本国外の都市)。

(注2)1マイル=国際マイル 1.609344 km で換算。

(注3)マイル数は、国際航空運送協会(IATA)が定めたTPM(Ticketed Point Mileage、基本区間マイル)をもとに、各航空会社が定めたもの。「東京」(都市コード:TYO)にある空港は羽田空港空港コード:HND)または成田空港(空港コード:NRT)を指す。情報源については[1]参照。マイル数はJAL、ANAとも同じである。
起源

世界で初めて、マイレージサービスを導入したのはアメリカン航空で、1981年5月1日からサービスをはじめた「AAdvantage」(アドバンテージ・プログラム)である。当時のアメリカン航空は、1970年代後半のジミー・カーター大統領による航空自由化政策(ディレギュレーション)により低迷した業績の改善が急務であった。窮余の一策として顧客囲い込みサービスである「アドバンテージ・プログラム」を開始し、1年間で100万人の会員を獲得して成功を収めた。

その後、多くの北米航空会社が競ってマイレージサービスの導入を開始した。1990年代に入ると、競争激化によるコスト削減の一環として欧米、アジア圏の航空会社との航空会社同士の連合(アライアンス)の締結や提携が活発化し、運航機材の共用やコードシェア便の導入などが相次いだ。これにあわせて、マイレージサービスを共通化する動きが見られるようになった。さらにマイレージサービスへの入会時のマイル付与(ウェルカムマイル)や、レンタカー利用、ホテル宿泊、食事、買い物、提携クレジットカードでの支払い使用でもマイルを付与するなど多角的なサービスへと変貌してきた。提携会社間で相互にポイントを交換する仕組みも現れている。


日本におけるマイレージサービスの本格的導入は当時の航空大手3社(日本航空(JAL)・全日本空輸(ANA)・日本エアシステム(JAS))とも1997年平成9年)である。これに先立ち、古くから国際路線を有していた日本航空は、1983年(昭和58年)に米国で「JALマイレージバンクUSA」を発足させ、1993年から北米地区で「JALスカイプラス」として、さらに1996年(平成8年)10月から、日本地区において国際線へのマイル付与を行ってきた[5]。なお、常顧客組織としては、日本航空がすでに1970年(昭和45年)から、自社クレジットカードへの加入が条件となる「JALグローバルクラブ」を組織し、サービスを提供してきたが、マイレージサービスは加入者の限定を行わない顧客サービスであるため、日本国内でのマイレージサービスは後発と言える。
日本での事例

現在、大手航空会社のマイレージサービスとして、

日本航空(JAL)のJALマイレージバンク(JMB)

全日本空輸(ANA)のANAマイレージクラブ(AMC)

スターフライヤー(SFJ)のスターリンクメンバーズ

天草エアライン(AMX)のみぞかポイント(AMXポイントカードから変更)

AIRDO(ADO)のMy AIRDO

ソラシドエア(SNA)のソラシドスマイルクラブ

も、独自のマイレージサービスを導入している(AIRDOとソラシドエアは会員カードを発行せず、スターフライヤーも2018年にカード発行を終了し、ネット上の登録のみの制度となっている)。

かつては、

日本エアシステム(JAS)のJASマイレッジサービス(JMS)

北海道エアシステム(HAC)のHACフライトポイント

スカイマーク(SKY)の「スカイマークカード(クレジットカード)」を利用して決済した場合に他社のマイルに相当するポイントが付与

なども提供されていた。
マーケティング日本の航空会社が発行する上得意客へのFFPカード(日本航空全日空、2007年撮影)

マイレージサービスは、マーケティングにおいては元々の呼称と同様 FFP(優良搭乗者プログラム)と呼ばれ、顧客関係管理の一手法に分類される。FFPでは、「2割の固定顧客が8割の利益を与える」というパレートの法則を元に、この2割の固定顧客をマイレージサービスにより自社に囲い込もうという戦略である。そのため、マイレージサービスは、航空会社の上得意客へのサービスと密接に関係があることが普通である。
サービスの概要

マイレージサービスの会員登録(通常、入会は無料)を行うと、会員番号を割り振られたカードが発行される。会員カードを作成しておけば、航空券購入・搭乗手続きの都度、住所・氏名等、個人情報を一々登録する手間が省けるので、マイル(ポイント)を貯めるつもりがなくても、入会しておけば便利である。クレジット機能付カードを作る場合、会費は有料となる。

一般的なポイントサービスの場合と同様、マイレージサービスにおいてもポイントが累積されるが、通常そのポイントのことをマイレージサービス (FFP)では「マイル」と呼ぶ。従って、ポイント加算のことを「マイルを貯める」、ポイント使用のことを「マイルを使う」と言い、航空会社等でも、この言い方は共通である。
マイルを貯める(ポイント加算)

搭乗手続きの際にカード提示を行うか、予約時に顧客番号を伝えることにより、顧客の搭乗を確認する。また、搭乗時にカードを提示しなかった場合でも、搭乗確認できる書類(ほとんどは搭乗券の半券の原本と航空券番号の写し)をマイレージサービス提供元に送付することで事後登録ができる。実際の搭乗が確認できると、その空路の飛行距離に応じたマイルを付与するのが基本。発券時の座席クラスや適用運賃に応じてさらに増減がある。航空会社によってルールは異なるが、エコノミークラス普通運賃を基準とすると、ビジネスクラスファーストクラスには25 - 200%のマイル数が追加加算される。逆に団体や格安航空券による搭乗に関しては標準より少ないマイル数(例: 70%など)になったり、そもそもマイルがつかないこともある。閑散期や同路線への他社参入時に期間限定でマイルが追加されるキャンペーンも行われる。

米系の大手航空会社(アメリカン航空・デルタ航空・ユナイテッド航空)では近年、自社便利用についてはマイレージの加算を飛行距離ではなく航空券の支払い金額に応じてマイルを加算する方式に変化している。なお、提携航空会社でマイルを貯める場合(例: 日本航空を利用する際に、アメリカン航空のマイルを貯める場合)と、提携航空会社のマイルを貯める場合(例: デルタ航空を利用する際に大韓航空のマイルを貯める場合)、ツアーなど非公示運賃の場合は従来通り飛行距離に応じてマイルを付与できる。

バニラエアのように一部の格安航空会社でも支払金額に応じたポイントサービスを実施している会社も存在する。同社については、あくまでも航空券の支払いにのみ利用できるポイントであり、家電量販店やスーパー、コンビニエンスストアで導入されているポイントサービスと性質的には同一である。

さらに、航空会社の責任により、搭乗予定の航空機のシート配置の変更や装備故障などにより、本来得られるサービスが得られなくなった場合(例えばダウングレードや代替機への変更、座席オーディオシステムの故障など)や、オーバーブッキングにより本来搭乗する予定の便に搭乗できなかった場合(オーバーブッキング発生に伴い、自主的に航空会社へ申告し他の便へ変更した場合も含む)も、現金・クーポンによる払い戻しでなくマイルの加算による補償が行われることもある。

また一暦年に搭乗距離や回数が多かった顧客に対しては、翌年度にかけて「上級会員」として様々な優遇が行われる。(例:ボーナスマイルの追加加算、空席待ち/チェックイン/保安検査場/搭乗/手荷物引渡の優先扱い、手荷物重量の優遇、席のアップグレード、空港ラウンジの利用など)

なお、搭乗した航空会社と異なる航空会社へのマイル加算(A社の便に搭乗し、そのマイルをB社のマイルへ加算すること)が可能なこともある。可否やマイル換算率は航空会社・搭乗クラス・区間・正規運賃かどうかなどによって異なり、事前に航空会社に問い合わせるのが確実である。手続きはチェックイン時に申し出る(B社のカードを提示するなど)程度であるが、加算には通常数ヶ月かかる。
マイルを使う(ポイント使用)

マイルを使用する手段は、主に「無料航空券との引き換え」か「座席クラスの1クラスアップグレード」である。航空券取得のための基準マイルは、地域間に決まっている。地域は、日本国内、東アジアと北アメリカ間、北アメリカ内など大まかな区分になっている場合が多い。

通常、マイル引き換えによる航空券予約には座席数制限がある。そのためマイルとの引き換えは通常の有償予約より割り当てられる座席数の優先順位が低いため、特に混雑時期・路線では予約が入れにくい。そこで通常よりマイルを追加することで、有償予約と同等に比較的座席数制限をうけにくい、優先順位が高い予約を可能とするシステムを実施している航空会社もある。また、購入したエコノミークラスをビジネスクラス、または購入したビジネスクラスをファーストクラスへと座席クラスのアップグレードのみするマイル使用もある。

購入したエコノミークラスからファーストクラスへのアップグレードは出来ない。なお、無料航空券の発券に際して、発券手数料や諸税(空港利用料など)や燃油サーチャージを支払うことが必要な場合もあり、無料航空券の場合でも何らかの支払いを伴う場合がある(特に国際線)。

航空券との交換に至らないまでも、低額の商品やサービスチケットとマイルとの交換を選択できるケースも増えている。
マイルの交換(ポイント交換)

クレジットカードとのマイル交換は古くからあり、小売店やホテル、レンタカー、タクシー等の航空運輸と関係の深い業種とのポイント交換サービスが多い。さらには銀行証券会社などの金融携帯電話インターネットサービスプロバイダなどの通信などとも交換サービスを行うものが増えた。特に近年はインターネットの普及により手軽にポイント交換できる仕組みが広まった。

クレジットカードなどのポイント交換先において航空会社のマイレージは最も人気があるものの一つである。そのため、航空会社各社はクレジットカード会社などのポイントサービスを取り扱う会社にマイレージを販売している。マイレージは航空券に交換されるケースが多いため、空席を特典航空券として提供している航空会社にとって、負担の増加につながりにくいために非常に都合が良い面がある。一部の北米・欧州系航空会社では、端数調整という顧客サービス目的で一般顧客にも販売している。

交換レートはポイントサービス提供会社との力関係や双方の思惑で決まるが、大体1マイル当たり2円から5円と言われている。この販売レートは、航空会社での社内におけるマイレージ判断価格よりも割高であるため、マイレージ販売事業は非常に収益性が高い事業とも言える。一部の北米系航空会社などでは会社の収益がほとんどマイレージの他社への販売から出ているとビジネス雑誌などで指摘されている。マイレージで提供する席は、閑散期に席の割り当てを増やせば収益に向上するが、繁忙期との格差によって席が取れないと悪評が立ち顧客流出に繋がる[6][7]。またマイルを蓄積するとビジネスクラスやファーストクラス等のより高価な席や、長距離路線の特典航空券への交換が可能になり、後々の経営への重石になる。

一方、パンアメリカン航空はマイレージ用席の割り当てを増やしすぎて提携会社のアメリカン航空からの大量のマイレージ特典席取得者の流入を招き、その結果、有料客の減少を招いて会社の経営にとどめをさす一因となったケースもあり、マイレージで交換できる席の数の設定は非常に注意を要する事項となっている。

米系航空会社では、マイレージの利用料を2倍にすることで、繁忙期でもほぼ確実に席の手配が可能になるサービスを実施している。日本航空においてもJMBダイヤモンド会員については、国内線のみ同種のサービスを実施している[8]
その他のサービス

そもそも航空業は、顧客の利用実績や座席グレード(=支払い料金)などによって、サービスに露骨な格差を示す業界であり、マイレージ会員の取得マイル数は、会員の「忠誠度」あるいは「上客かどうか」を判断するための的確な指標になる。ほとんどのマイレージプログラムは、会員のグレードを前年度の搭乗実績や生涯の搭乗マイル数などで、「一般」「プレミア」「1K」などに区別しており、上級グレードの会員ほど、より価値のある有形無形の無償サービスを受けられる。

下記はこのようなサービスの例である。

上級会員専用の
搭乗手続きチェックインカウンター(上級会員になると普通席利用でもファーストクラス・ビジネスクラスチェックインカウンターが利用できる)。

一般搭乗客は無料預かり荷物は、1点50ポンド (22.7 kg)までだが、最上級会員は3点各70ポンド (31.8 kg)まで無料。

上級会員専用の保安検査場(混雑時でも列が短く待ちが少ない。但し、保安検査を受ける内容は一般乗客と同じだが、全体的に丁寧な検査になる。主要空港など、一部の空港のみ設置)。

搭乗口での優先搭乗(クラスシートに関わらず、すなわちエコノミー利用であっても、非上級会員より先に搭乗案内される)。

上級会員専用の空港ラウンジ。但し、非上級会員でも、ビジネスクラス・ファーストクラスの旅客はラウンジ利用が可能。

ボーナスマイル(マイル積算可能運賃で非上級会員がもらえるマイルの概ね30%から130%がボーナスとしてもらえる。上級座席(ファースト・ビジネス)の場合はさらにボーナスされる)。

上位グレード座席への優先アップグレード(上級会員ほどアップグレードが優先的に行われる)。

優先空席待ち(空席が出た場合はたとえ非上級会員が先に予約をしていても後から来た上級会員が最優先で空席へ案内できる)。

同日の別便への変更が無料あるいは割引。

電話予約による手数料(通常は有料)の無料化。


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