マイルドハイブリッド
[Wikipedia|▼Menu]

マイルドハイブリッド(英語: Mild hybrid)は、内燃機関発電機/電動機を組み合わせたハイブリッド自動車の中で、電動機(モーター)の出力が控えめ(=マイルド)な形式を指す[1]。モーターを併用することで、惰走、制動、停止時にエンジンを止めて、出力が再び必要になった時にすばやく再始動することが可能になる。マイルドハイブリッドは回生ブレーキを備え、蓄えた電力をモーターによるエンジンの補助や電装品への給電に使用する。モーターのみでの走行モードを持たないものが多いが、クリープ走行[2]や低速域[3]でのモーター走行が可能なものもある。

通常の乗用車に搭載されている発電機オルタネーター)を強化して、内燃機関(エンジン)の補助モーターとしても利用できるようにした発進モーター兼発電機(ISG; Integrated Starter Generatorの略称)を使用するシステムがほとんどであるが、エネルギー回生・駆動用の独立したモーターを備えるシステム[3]もある。

ハイブリッド式電気自動車は機能と主電源として使用する電池の電圧により以下の通り分類される[4]

アイドリングストップシステム(ISS)車(12 V、減速時回生を行わない)

マイクロハイブリッド(12 V、減速時回生を行う)[5][6]

マイルドハイブリッド(36 - 48 V)

モデレートハイブリッド(100 - 200 V、限定的な電動走行を行う)

ストロングハイブリッド(> 150 V)

プラグインハイブリッド(> 150 V)

広義のマイルドハイブリッドにはマイクロ、マイルド、モデレートの3種が含まれる。
概要

マイルドハイブリッドと比較して、モーター出力が十分高いシステムはフルハイブリッドまたはストロングハイブリッドと呼ばれる[注釈 1]。マイルドハイブリッドは基本的にエンジンで走行し、通常のエンジン車についている発電機を補助モーターとして利用している。

マイルドハイブリッドではバッテリーは通常のオルタネーターと同様にエンジン回転およびブレーキ回生によって充電される。エンジンは初回時のみ既存のスターターで起動するが、その後はオルタネーター/スターターによってベルト駆動で起動される。モーター出力は通常10 kW以下(プリウスは103kW=140ps)、加速時にエンジンを補助する。

日本では、2001年にトヨタの第11代目のクラウンS17型3リットル直噴「2JZ-FSE」エンジン搭載車に、36VのISGからなる「THS-M」トヨタ・マイルドハイブリッドシステムが初めて搭載された。この車ではエンジンを起動し低速で走行する能力だけでなく、エンジンを電磁クラッチによってベルト駆動から切り離すことで、エンジン停止時にもエアコンのコンプレッサーを動作させることができた。

軽自動車でスズキは「S-エネチャージ」の名称で実用化、後に「マイルドハイブリッド」の名称で広く導入している。基本的には電動機のみでの自走は不可能だが、ワゴンR(6代目)およびその派生車種では、減速して車速が約13 km/h以下となり、アクセルもブレーキも踏まない時や、アイドリングストップ後の停車からの発進時に、最長10秒間モーターでのクリープ走行が可能となっている[2]

一方マツダは2019年以降、新エンジン技術SKYACTIV-Xにマイルドハイブリッドとスーパーチャージャー(機械式過給機)を組み合わせ、エンジンの弱点を補完した上で量産化に漕ぎ着けている[注釈 2]

ヨーロッパにおいては、通常の車両用電源で用いられる定格電圧を12Vから48Vに高電圧化(LV148)することで電装品の出力を高め、オルタネーターでの駆動補助を可能にする「48Vハイブリッド」という規格が提唱されている[9]メルセデス・ベンツフォルクスワーゲンアウディ)、BMWなどが積極的に採用している。日本でもボッシュが2019年以降に供給を行うという報道があった[10]が実現しておらず、代わりに三菱電機が欧州仕様のスズキ車にISG 48Vのマイルドハイブリッドシステムを供給している。
ストロングハイブリッド車との比較

マイルドハイブリッドの長所は、既存の車種の電気系統を小改良するだけ(ストロングハイブリッドと異なり高電圧対応にする必要がない)のため導入経費が低く、車両価格を抑えやすいこと、また、補助モーターのみのため、充電池電動機がハイブリッド車よりも小型軽量・省スペース化が可能なことである。

短所は、基本的にモーターのみでは走行できないか、あるいは低速に限り走行可能であること、排出ガスの削減や燃費節約の効果は限定的であることなどである。具体的にはトヨタのフルハイブリッドシステムであるTHSによる燃費向上率が67%[注釈 3]から99%[注釈 4]に達するのに対して、マイルドハイブリッドによる燃費向上率はスズキのマイルドハイブリッドシステム(12 Vマイクロハイブリッド)で3%[注釈 5]、マツダのM Hybrid Boostシステム(48 Vマイルドハイブリッド)で14%[注釈 6]、SUBARUのe-BOXERシステム(118 Vモデレートハイブリッド)で18%[注釈 7]、に留まる。
主なマイルドハイブリッドシステム電動機の位置により分類されるハイブリッド方式。

ハイブリッドシステムの方式は電動機の位置によりP0 - P4あるいはP5に分類される(細かい部分は各社によって違いがある[11])。以下の表は、主なマイルドハイブリッドシステムの一覧である。始動モーター兼発電機(スターター・ジェネレーター)がベルトによって出力軸と連結されているものをBSG(Belt Starter Generator)、出力軸と直結しているものをISG(Integrated Starter Generator)と表記している。電動機が出力軸と直結しているが、エンジン再始動に使用されないものはパラレル方式と表記している。

名称会社年方式蓄電池電圧電動機
最高出力/最大トルクEV走行出典
THS-Mトヨタ自動車2001?2008BSG (P0)42 V3.0 kW / 56 N・mなし[12][13]
S-エネチャージスズキ2014?BSG (P0)12 V1.6 kW / 40 N・m10秒間のクリープ走行[14][15]
マイルドハイブリッド/SHVSスズキ2016?BSG (P0)12 V2.3 kW / 50 N・m
1.9 kW / 40 N・mクリープ走行可能[2][16]
SHVSスズキ2017?BSG (P0)48 V10 kW / 50 N・mなし[17]
ハイブリッドシステム[注釈 8]スズキ2016?パラレル方式(モーターは差動装置を直接駆動する[19])100 V10 kW / 30 N・mクリープ走行時、定速走行時、60 km/hまで [18][20]
M Hybridマツダ2020?BSG (P0)24 V5.1 kW / 49 N・mなし[21][22]
M Hybrid Boostマツダ2022?ISG (P2)48 V12 kW / 153 N・mなし[23]
S-HYBRID日産自動車2012?BSG (P0)12 V1.8 kW / 53.6 N・m


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:94 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef