マイナンバーデータの誤登録
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マイナンバーデータの誤登録(マイナンバーデータのごとうろく)は、マイナンバー(個人番号)にひも付く各種データの登録不備事案。行政機関等が持つ健康保険証情報を始めとした各種の個人情報に別人のマイナンバーを割り当ててしまい、いわゆる「ひも付け誤り」が生じたもの。2023年上期に相次いで判明し、日本において社会問題政治問題化した。
概要
契機

2023年4月、医療機関でオンライン資格確認が義務化され[1]マイナ保険証の利用者が増加した。そんな中、1名の被保険者が「医療機関でマイナ保険証を使用した際、別人の健康保険証情報が表示された」という事案が5月12日にテレビ朝日報道ステーション』にて報じられた[2][注 1]。同様の誤登録は2022年11月までに7,312件存在していたことも各メディアで大きく取り上げられた。この件数情報自体は2月17日に公開されていたものだった[3]が、当時は取り上げられなかった。5月12日に具体的事案が発覚したこと、当人による問い合わせ時の行政機関の対応がたらい回しであったこと[2][4]、誤登録をした保険者(中央建設国民健康保険組合)[5]の対応が横柄であったこと[6]から注目を浴び、繰り返し報道される事となった。

次いで同年5月23日、福島県福島市のマイナポイント事業支援窓口において、公金受取口座の誤登録[7][8]、5月25日にはマイナポイントの誤登録が判明(原因は #誤登録の原因、個別の経緯は #省庁・地方自治体等からの個別発表 を参照)。3月から発生していたコンビニ交付での住民票等の誤交付(富士通Japan製システムの設計不備)と合わせ、マイナンバー制度およびマイナンバーカードの信頼低下につながった。コンビニ交付の障害については「マイナンバーカード#事件・不祥事」を参照
政府の対応

公金受取口座とマイナポイントの登録不備は各自治体から連日発表され、全国規模の事象であったことが判明。健康保険証情報でも2023年5月19日に、地方職員共済組合兵庫県支部から1件の誤登録があったことを追加発表される[9][10][11]など、いわゆる「誤登録問題」は止まる所を知らない状態となり、5月26日、松本剛明総務大臣[注 2]加藤勝信厚生労働大臣[注 3]河野太郎デジタル大臣[注 4]の3大臣が一斉に陳謝した。

その後も誤登録事案は連日増え続け、6月13日、岸田文雄首相記者会見の中で以下3点の基本方針を示した[12]
関連するデータやシステムの総点検

今後新たな誤り事案が生じないようにするための仕組みづくり

国民の不安払拭のための丁寧な対応

6月21日、上記の基本方針に基づき、政府はデジタル庁を司令塔とする省庁横断の #マイナンバー情報総点検本部 を設立した[13]。岸田首相は「コロナ対応並みの臨戦態勢」で取り組むよう指示した[14]

総点検と、それに伴う新たな誤登録事案の発表が続く中、8月4日、岸田首相は、マイナンバー制度/マイナンバーカードを主題とした記者会見を実施[15]コロナ禍における日本のデジタル化の遅れを振り返り、“デジタル敗戦を二度と繰り返してはならない” と訴えた[16][17]

12月12日、マイナンバー情報総点検本部の最終報告を実施[18][19]。総点検とデータ修正は一旦の収束を見せた。
誤登録の原因

マイナンバーデータの誤登録は多岐に渡るが、その原因は以下の4種に分類される。
地方自治体、行政機関による誤登録

障害者手帳情報、住民税課税情報、労災年金、児童手当、障害者支援、生活保護、医療費助成に関しては、登録主体の地方自治体、あるいはその他の行政機関(労働基準監督署)による登録ミスである。

地方自治体のうち、市町村については住民基本台帳ネットワークシステムからマイナンバーを自動連携しており、その市町村の住民の内容であれば基本的に登録ミスは起き得ない[20]。市町村で発生した登録ミスは、他の自治体から転出・転入手続をせず(住民票を移さず)に当該市町村の課税や介護対象となる、いわゆる「住登外者」で主に発生している。

都道府県は住民基本台帳ネットワークとの連動が無い。そのため、障害者手帳情報を始めとする都道府県が主管の事務において、多くの登録ミスが判明している[20]。中には、登録時のExcelシートにおいて行がずれていた(宮崎県で2,336件)、登録プログラムのバグを見落としていた(長崎県で1,978件)など、初歩的なミスによって多数の誤登録を招いた事案も存在する。それらは個人情報保護委員会から対象自治体へ、行政指導が行われた。(#影響・反応等 を参照)
保険者による誤登録
ひも付け誤り

健康保険証情報に関しては、保険者健康保険組合共済組合等)による登録ミスである。健康保険組合や共済組合は、雇用主企業を通して被保険者の氏名・住所・マイナンバー等の情報を得るが、雇用主企業におけるマイナンバー情報の正しさの確認が不徹底であったり、そもそもマイナンバーを保険者へ伝えていない事などにより、多くの登録ミスが発生した[21]。マイナンバーを得られない場合は保険者側でJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)のシステムへ検索することになるが、その際に「氏名、住所、生年月日、性別」の4情報を用いた照会が徹底されず、同姓同名の人物等へのひも付け誤りが発生した[22]

国民健康保険後期高齢者医療保険については、登録主体が市町村だった事もあり(市区町村のシステムは住民基本台帳ネットワークと自動連携する)、ひも付け誤りは発生していない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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