マイクロチップ_(動物用)
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猫のマイクロチップインプラント。

動物用のマイクロチップは、耳標や動物の皮膚の下に埋め込まれた、個体識別用の集積回路である。パッシブRFID(Radio Frequency Identification)技術を使用しており、タグにスキャナーを近接させることにより、チップに記録されている情報を読み取ることができる。PIT(Passive Integrated Transponder)タグとも呼ばれる。標準的なペット用マイクロチップは、長さ11?13 mm(約1/2インチ)、直径2 mm [1]ほどの大きさである。

本項では主に、埋め込み型マイクロチップ(: microchip implant、マイクロチップインプラント)について扱う。
使用法と利点

動物用のマイクロチップは、ブリーダー、ブローカー、トレーナー、アニマルレスキュー農場厩舎、研究者、ペットショップなどで利用されている。ただし、日本ではマイクロチップの埋め込みは獣医療行為なので、動物病院で獣医師が埋め込む[2]

動物保護施設は、マイクロチップに記録されている飼い主の情報を参照することにより、脱走したペットを飼い主に迅速に返却することができる。これにより、動物の保護や安楽死に係る費用を減らすことができる。

ペットドアの中には、特定のマイクロチップによって作動するようにプログラム可能なものもあり、特定の動物だけがドアを使用できる [3]

ワクチン接種記録を照合するために、輸入動物にマイクロチップ埋設を求める国もある。マイクロチップのタグ付けは、絶滅の危機に瀕している特定の動物におけるCITES規制の国際取引にも必要とされる場合がある。例えば、アジアアロワナは飼育魚として輸入を制限するためにタグ付けされている。また、ペットとしてまたは貿易のために国境を越える際、バンドのない鳥は、それぞれの鳥が一意に識別できるようにマイクロチップ化されなければならない。
使用法インプラントに関する情報は、多くの場合、ペットが着用する首輪に刻印されている。

マイクロチップのインプラントを施す場合は、まず、対象の個体に別のチップが埋め込まれていないか確認する。その後、チップをシリンジで注入し、チップの固有のIDを記録する。通常、麻酔は使用しない。施術時の不快感はほとんどなく、痛みは最小限かつ短時間である[4]。最後に、テストスキャンによって動作確認を行う。

ウマに関する研究では、埋め込んだ部分が腫れ、違和感が解消するのに約3日かかることを示している[5]。ヒトの場合は、腫れとあざが残り、瘢痕組織が形成されるまで2?4週間、痒みおよび異物感が最大2年間続く、と報告されている[6]

一部の獣医は、自分たちが管理している動物に起こりうる問題についての情報を得るため、主要な連絡先として自分自身を記録している。

所有者はチップIDと回復サービス連絡先情報を含む登録証明書を受け取る。自動車の登録と同様に、証明書は所有権の証明として役立ち、動物が販売または取引されるときに動物と一緒に転送される。証明書のない動物は盗まれる可能性がある。ただし、マイクロチップの使用に関しては、いくつかのプライバシー上の懸念がある。

多くの獣医師はチップが正しく埋め込まれていることを確認するために、診察のたびにチップをスキャンする。データベースIDとしてチップIDを使用し、領収書、検査結果、予防接種証明書などの記録を登録することもある。

いくつかの獣医学上の検査や処置は、正確な個体識別を必要とするので、マイクロチップは入れ墨の代わりとしてこの目的に使われる可能性がある。
マイクロチップの部品

マイクロチップインプラントはパッシブ型RFID装置である。内部電源がない場合は、スキャナーまたは他の電源から電力が供給されるまで動作しない。チップ自体は限られた周波数としか相互作用しないが、デバイスは、ある周波数に対して最適化されているが選択的ではないアンテナも持っているので、迷走電磁波を受信し、それを用いて電流を発生させ、再放射する可能性がある[7]

ほとんどのインプラントは3つの要素を含んでいる。「チップ」または集積回路。場合によってはフェライトコアを有するコイルインダクタ。そしてコンデンサー。チップは、情報を符号化するための固有の識別データおよび電子回路を含む。コイルはトランスの二次巻線として機能し、スキャナーから誘導結合された電力を受け取る。コイルとコンデンサはともにスキャナーの振動磁場の周波数に同調した共振LC回路を形成し、チップに電力を供給する。その後、チップはデータをコイルを介してスキャナに送り返す。チップがスキャナーと通信する方法は、後方散乱と呼ばれる方法で、電磁界の一部となり、ID番号をスキャナに伝えるように変調する [8]動物用マイクロチップインプラントに使用されるRFIDスキャナーの例。

これらの部品は、生体適合性ソーダ石灰ガラスまたはホウケイ酸ガラスで覆われ、気密封入されている。有鉛ガラスはペットのマイクロチップには使用すべきではなく、消費者は信頼できる供給元からのマイクロチップのみを用いるべきである。ガラスはポリマーでコーティングされていることもある。一般的に、パリレンC(別名・塩素化ポリジメチルベンゼン)をコーティング剤に用いる。プラスチック製のペットマイクロチップは、Datamars製造業者コード981の下で2012年から国際登録簿に登録され[1]、ペットに埋め込まれている。特許[9]によると、シリコン充填ポリエステルシースであることを示唆しているが、製造業者は正確な組成を開示していない。
埋め込み部位

では、チップは通常、背中正中線の肩甲骨の間の首の後ろの皮膚の下に挿入される。ある参考文献によると、ヨーロッパ大陸のペットは首の左側にインプラントを入れる [10]。チップはしばしば、触ると皮膚の下に感じられることがある。結合組織の薄層がインプラントの周囲に形成され、チップを所定の位置に保持する。

は左頸中央、耳根と鬣甲(きこう)前縁との中間点の項靱帯またはその付近[11]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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