解析学におけるポッホハマー記号(ポッホハマーきごう、英: Pochhammer symbol)はレオ・オーギュスト・ポッホハマー
(英語版)の名に因む特殊函数[* 1]で、組合せ論および超幾何級数論にも応用を持つ。同じ函数を表す記号だが、表記にはいくつかバリエーションがある。
x ( n ) {\displaystyle x^{(n)}} : 組合せ論で使用
( x , n ) , ( x ) n {\displaystyle (x,n),\,(x)_{n}} : 解析学、特殊函数論で使用
x n ¯ , x n _ {\displaystyle x^{\overline {n}},\,x^{\underline {n}}} : (その他の記法)
複素数 x と正整数 n に対して、特殊函数論では (x)n を昇冪[* 2] ( x ) n = ∏ j = 0 n − 1 ( x + j ) = x ( x + 1 ) ( x + 2 ) ⋯ ( x + n − 1 ) {\displaystyle (x)_{n}=\prod _{j=0}^{n-1}(x+j)=x(x+1)(x+2)\dotsb (x+n-1)}
を表すのに用いるが、組合せ論では (x)n を降冪[* 3] ( x ) n = ∏ j = 0 n − 1 ( x − j ) = x ( x − 1 ) ( x − 2 ) ⋯ ( x − n + 1 ) {\displaystyle (x)_{n}=\prod _{j=0}^{n-1}(x-j)=x(x-1)(x-2)\dotsb (x-n+1)}
として用いる。混乱を避けるため、昇冪を (x)n, 降冪を (x)n でそれぞれ表すこともよく行われる[* 4]。さらに グラハム, クヌース & パタシュニク (2020, pp. 48?49, 64) は全く別の冪乗に似た記号を用いる。 x n ¯ = x ( x + 1 ) ( x + 2 ) ⋯ ( x + n − 1 ) , x n _ = x ( x − 1 ) ( x − 2 ) ⋯ ( x − n + 1 ) . {\displaystyle {\begin{aligned}x^{\overline {n}}&=x(x+1)(x+2)\cdots (x+n-1),\\x^{\underline {n}}&=x(x-1)(x-2)\cdots (x-n+1).\end{aligned}}}
差分学における降冪は微分学における冪の類似対応物である。ガンマ関数Γを用いると x n ¯ = Γ ( x + n ) Γ ( x ) , x n _ = Γ ( x + 1 ) Γ ( x − n + 1 ) {\displaystyle {\begin{aligned}x^{\overline {n}}&={\frac {\Gamma (x+n)}{\Gamma (x)}},\\x^{\underline {n}}&={\frac {\Gamma (x+1)}{\Gamma (x-n+1)}}\end{aligned}}}
となる(ただしガンマ関数の引数が非正整数でない場合)。さらに x が正整数のときは階乗を用いて x n ¯ = ( x + n − 1 ) ! ( x − 1 ) ! , x n _ = x ! ( x − n ) ! ( x ≥ n ) {\displaystyle {\begin{aligned}x^{\overline {n}}&={\frac {(x+n-1)!}{(x-1)!}},\\x^{\underline {n}}&={\frac {x!}{(x-n)!}}\quad (x\geq n)\end{aligned}}}
性質各 n に対するポッホハマー記号 (x, n) のグラフ
ポッホハマー記号 (x, n) は複素変数 x に関して有理型函数である。
任意の自然数 n ∈ N に対して (x, n) は x の多項式であり、x = 0 を共通根に持つ。