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ポストモダン文学(ポストモダンぶんがく、英語: postmodern literature)は近代文学の特徴に反する特徴を持つ文学のことである。
近代文学は無矛盾性、秩序性、明晰性、簡潔性、建設性、独創性、普遍性などの特徴を持つ。これに対し、ポストモダン文学は物語の矛盾を肯定的に含んだり(むしろ物語は常に矛盾を含むものである、といった姿勢)、時間軸の無秩序性、衒学性、蕩尽性、記号性、全面的破壊、模倣、大きな物語の終焉、普遍性への懐疑、自己の解体等々である。
ポストモダン文学は近代文学へのアンチテーゼということ以外、明確な定義はない。通常○○文学という場合には、それを特徴づける形質があるが、ポストモダン文学の場合には、そのような形質には乏しく、単に近代文学の補集合という意味合いが強い。これは他のポストモダン建築、思想、芸術と同じである。 ポストモダン作家はしばしば、メタ構造を多用したギリシア喜劇作家のアリストファネスやローマ帝国期の風刺作家たち(ルキアノス、ピロストラトス、ペトロニウス)、『ドン・キホーテ』や『千夜一夜物語』、『デカメロン』や『カンディード』、『阿呆船』や『ガルガンチュワとパンタグリュエル』など多くの古い小説や寓話的物語の中にみられる構造やナラティブの実験性を指摘している。英語圏では、ポストモダンへの影響としてローレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』(1759年)(あるいはフランス語圏だがそれにいち早く影響を受けたドゥニ・ディドロ『運命論者ジャックとその主人』(1765?1780年))の重量級の語彙、パロディ、物語の実験性などが度々言及される。他にもジョナサン・スウィフトやバイロンの風刺(特に『ドン・ジュアン』)、トーマス・カーライルの『衣装哲学』、アルフレッド・ジャリの下品な『ユビュ王』とそのパロディや「パタフィジック」の発明、ルイス・キャロルの言葉遊び、ロートレアモンやアルチュール・ランボー、そしてオスカー・ワイルドなど、19世紀の啓蒙思想に対する攻撃やパロディ、冗談などを色濃く示している作品が多い。スウェーデンの劇作家アウグスト・ストリンドベリ、ポーランドの劇作家ヴィトカツィ、イタリアの作家ルイジ・ピランデロ、ドイツの劇作家で理論家のベルトルト・ブレヒトなど、19世紀から20世紀初頭の劇作家たちは、ポストモダンに美的な影響を与えたといわれる。1910年、ダダイスムの流れの中でアーティストたちは、遊び心や偶然性を称賛し、新たな芸術に挑んだ(要説明)。トリスタン・ツァラは『ダダイストの詩の作り方』で、山高帽の中にランダムに入れられた単語を順番に取り出してつくるダダイストの創作方法を提案した。他にも、ダダイスムは大学の発展の中でもポストモダンに影響を与えている。大学では既存の広告や有名な小説の押絵などを使用した(マックス・エルンストの大学のように)。ダダイスムから発展し、意識の流れを称賛してパロディや偶然性を引き継いだシュルレアリスムへとアーティストは移行していった。シュルレアリスムの祖アンドレ・ブルトンは、オートマティスムと夢の記述は文学創作において偉大な役を演じると主張した。彼はオートマティスムを使って小説『ナジャ』を書き、説明のかわりに写真を使うことによって、彼が常々批判していた過剰な説明をしたがる作家たちをパロディにした。ルネ・マグリットの重要な実験はジャック・デリダやミシェル・フーコーによって引用された。フーコーはまた、多くのポストモダン作家に直接影響を与えた最も重要な作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスからの引用も行った。ボルヘスが創作を始めたのは1920年代だが、彼はポストモダン作家として分類されることがある。彼のメタフィクションとマジックリアリズムの実験は、英米ではポストモダンの時代まで十分に理解されなかった。 モダニズム文学もポストモダン文学も19世紀リアリズムからの決別を意味している。特質をいうなら、モダニズム文学もポストモダン文学も主観主義を追い求めることである。ヴァージニア・ウルフやジェイムズ・ジョイスの文体、T・S・エリオットの詩『荒地』などに見られるように、多くのモダニストによって描かれた「意識の流れ」は、外部のリアリズムから内部の意識の状態への転換を意図している。さらに、モダニズム文学もポストモダン文学も同様に物語、性質、構造の断片によって追求している。『荒地』は度々モダニズム文学とポストモダン文学の際立った特徴をもっていると位置付けられる。詩はポストモダン文学の中でも特に文体模倣や断片が多くみられ、『荒地』の語り手は「私を支える断片は、私の滅亡に対抗する」と言っている。モダニストの文学は断片を用いて、実存主義の危機やフロイト派の内的矛盾を主観的に探求し、問題を解決すべく、その問題に取り組んでいたといわれている。一方ポストモダニストは、この混沌は乗り越えられないことを証明している。彼らの主張は、「破滅」に対抗する訴えだけが混沌から免れるのだということである。遊び心は多くのモダニストの作品にみられ(例えばジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』やヴァージニア・ウルフの『オーランドー』)、ポストモダニズムと非常に類似しているが、ポストモダニズムはより遊び心が中心的になり、物語の状況や意味性を明確にしない。 文体に関する時代区分がすべてそうであるように、ポストモダンの興隆と衰退の明確な日付をいうことはできない。しかし大雑把には、アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスと英国の作家ヴァージニア・ウルフが死んだ1941年がポストモダンのスタートラインだといわれることがある。いずれにせよ《ポスト》という接頭辞は、必ずしも新しい時代を意味するわけではない。むしろ第二次世界大戦勃発におけるモダニズムへの反対表明を意味する(人権差別、成立したばかりのジュネーヴ協定、広島と長崎への原爆投下、ホロコースト、ドレスデン爆撃、東京大空襲、そして日系アメリカ人の強制収容など)。そして戦後の重要な出来事への関心でもある。冷戦、アメリカの市民権運動、ポストコロニアリズム(ポストコロニアリズム文学)、そしてパーソナル・コンピュータの始まりなどである(サイバーパンク小説、ハイパーテクスト小説)。
背景
特筆すべき影響
モダニズム文学との比較
ポストモダンへの転換
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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