ポアンカレ・ベンディクソンの定理
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ポアンカレ・ベンディクソンの定理によれば、平面上の極限集合は(1)平衡点、(2)周期軌道、(3)複数の平衡点とそれらを繋ぐ軌道のいずれかとなる

ポアンカレ・ベンディクソンの定理(ポアンカレ・ベンディクソンのていり、Poincare?Bendixsonの定理)とは、平面上の連続力学系あるいは自励的常微分方程式系では、有界軌道が時間経過後に最終的に落ち着く先は、平衡点を含まなければ周期軌道であることを述べる数学の定理である。19世紀末にアンリ・ポアンカレが発表し、後の20世紀初頭にイーヴァル・オット・ベンディクソン(英語版)がより厳密・一般化した形で証明して発表した。

与えられた系の周期軌道の存在を明確にすることは一般的に難しいが、ポアンカレ・ベンディクソンの定理はその手法を与える希少なものの一つである。また、定理の帰結として、このような平面の系で状態変数収束する先は、本質的に平面上の1点(平衡点)または閉曲線(周期軌道)のいずれかに限られ、より複雑な振る舞いはないことを意味する。極限集合の概念を使うと、平面上の極限集合は(1)平衡点、(2)周期軌道、(3)複数の平衡点とそれらを繋ぐ軌道の3種に限られることが言える。ただし、定理が成立する根本的理由の一つが、平面上ではジョルダンの閉曲線定理が成立し、自己交差しない連続な閉曲線は平面を2つの領域に分けるという事実にあるので、トーラスや3次元の系で定理は成立しない。
前提とする主な定義

独立変数を t ∈ ℝ とし、従属変数を x = (x, y)T ∈ M ⊂ ℝ2 とする。未知関数 x(t) = (x(t), y(t))T に対して次のような一般的な自励的2元連立1階常微分方程式系を考える[1]。 x ˙ = f ( x ( t ) ) {\displaystyle {\boldsymbol {\dot {x}}}={\boldsymbol {f}}({\boldsymbol {x}}(t))}

または x ˙ = f ( x ( t ) ,   y ( t ) ) {\displaystyle {\dot {x}}=f(x(t),\ y(t))} y ˙ = g ( x ( t ) ,   y ( t ) ) {\displaystyle {\dot {y}}=g(x(t),\ y(t))}

ここで、ℝ は実数を、上付き ˙ は微分 .mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}d/dt を、右肩 T は転置を表す。独立変数 t は時間とみなし、時間の経過に連れて x の値も変わるという風に微分方程式の意味をとらえる[2]。従属変数の定義域 M は ℝ2 の部分開集合で、M を相空間ともいう[3](M = ℝ2 全体としても定理は成立する[4])。f = (f, g)T は C1 級関数 f: M → ℝ2 とする[1]。f は M 上にベクトル場を定める[5]

t = t0 に対して与えられる x の値 (x(t0), y(t0))T = x0 を初期値という[6]。以下、簡単のために t0 = 0 で固定する。初期値 x0 を満たし、時間 t のときの x の値を返す写像 ϕ(t, x0): ℝ × M → M を微分方程式の定める流れ連続力学系という[7]。f が C1 級であることから、上記の微分方程式系は解の存在と一意性を満たし、流れ ϕ(t, x0) は
ϕ(0, x0) = x0

任意の t, s ∈ ℝについて ϕ(s, (ϕ(t, x0)) = ϕ(t+s, x0)

を満たす[8]平面上のベクトル場の例。軌道は平面上でベクトルに沿った曲線を成す。

初期値 x0 を決めて、t を −∞ から ∞ まで動かしながら ϕ(t, x0) が返す値を相空間 M 上に描くと、それは M 上の一つの曲線となる[9]。この曲線を x0 を通る軌道という[9]。 x0 を通る軌道を O(x0) で表すとする[10]


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