ボール_(野球)
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野球においてボール(英:ball)とは、投球判定としてのボールストライクに対するボール球)と、用具としてのボール(野球ボール)がある。英語ではbaseballは野球ボールの意味もある。
用具としてのボール

軟式ボール(左)と、硬式ボール(右)2006年?2016年度の公認軟式球

日本の野球には硬式球(こうしききゅう)・準硬式球(じゅんこうしききゅう)・軟式球(なんしききゅう)の3種類の規格のボールが存在する。使用するボールにより硬式野球準硬式野球軟式野球の3つの野球形態に分かれる。
硬式球

硬球(こうきゅう)とも呼ばれる。1878年スポルディング社が開発した[1]コルクゴムの芯にを巻き付け、それを牛革で覆い[注 1]、縫い合わせて作られる。原則として1球あたりの縫い目は108個とされている[3]。「硬式」の名の通り非常に硬く、死球や打球が身体に直撃した場合は打撲骨折等の怪我をする場合もある。

重量141.7-148.8g円周22.9-23.5cmと公認野球規則により定められている。プロ野球で使われる硬球は公式球(こうしききゅう)と呼ばれる。ボールの反発力のテストがコミッショナー事務局によって行われ、このテストで算出される時速270キロ(ボールとバットの標準的な相対速度)時における反発係数が0.4034-0.4234[4]の基準を満たすボールが合格となり、ボールに公認マーク(日本野球機構マーク、証明用ホログラム、プロ野球コミッショナー署名、以上3つの印刷)が付けられる[3][5]
日本プロ野球 (NPB)

日本プロ野球 (NPB) の公式球の供給メーカーは1980年で9社[6]、2010年以前はミズノゼットアシックス久保田運動具店、那須スポーツ[7]SSK松勘工業の7社だったが[8]、2010年はミズノ、ゼット、アシックス、久保田運動具店の4社であった[1]。メーカーによって材質や製法などが多少異なっており、機能面に若干の違いが見られる(飛びやすい/飛びにくい、握りやすい/握りにくい、など)[9][10][11]。主催球団の判断で4社のボールの中から公式球が選択・使用されていた[12]。公式球は少量のみ販売されている。また、困難ではあるが一軍公式試合でファウルボールまたはホームランボールとしても入手可能である。

2010年1月19日に開かれた日本プロ野球組織実行委員会では、ワールド・ベースボール・クラシックなどの国際試合の増加や、後述する「飛ぶボール」問題に対応し、ボールの規格を世界的に統一するため、2011年以降のNPB公式戦での公式球の1社に独占的に供給させることが決定され[1]、2011年には全球団ミズノ社製の統一球が使用されている[13]

なお、1年間に使用される全12球団の一軍試合球の総数(練習・ブルペン用なども含む)は、約2万5000ダース(約30万個)にも達するといわれる(2013年時の情報)。また、輸送・通関のトラブルなどに備えて1万ダースを常備することも求められているという[14]
メジャーリーグベースボール (MLB)

1842年頃から現在の野球に近いルールでプレーしていた初の本格的野球チーム、ニューヨーク・ニッカーボッカーズが最初の6、7年間は自分達でボールを縫っていたように、当初のボールは手製であり、勝利チームが敗戦チームから賞品として受け取れる貴重品だった[15]南北戦争が終結した1860年代後半になると一気に野球熱が高まり、多くのメーカーがボールを生産するようになった[15]メジャーリーグベースボール (MLB) の公式球は1878年から1976年まではスポルディング社が、1977年からはローリングス社が独占供給していて、2014年現在はローリングス社コスタリカ工場で生産されているものを使用している[16]。NPB公式球が野球規則に定められた大きさ・重さのほぼ下限であるのに対し、MLB公式球はほぼ上限であるため、日本の公式試合球よりも若干大きく、重い。表面の牛革の質感は日本のものよりもツルツルとした滑らかなもので[1]、縫い目も日本のボールより高く、空気抵抗の違いから同じ握り・投げ方の球種でも日本の公式球とは変化の度合いに違いが出る。
硬式球の反発力検査

NPBでは、全ての試合使用球に承認印を押すことになっているが、この際に規定内の反発力であることが条件となっている。反発力検査はシーズン中に2週間に1回程度行われ、大きさの基準に合格したそれぞれのメーカーのボールの中から1ダース取り出して検査される。試験方法はマシーンでボールを射出して壁に当てる方法で、壁に当たる前の速度と跳ね返った後の速度を計測し、その比から反発係数を求めている[3]
「飛ぶボール」「飛ばないボール」の問題

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「ラビットボール」はこの項目へ転送されています。競走馬については「ラビットボール (競走馬)」をご覧ください。

硬式球の製造過程における何らかの要因で反発係数が上がったり、重量が軽くなることで飛距離が著しく上昇するボールは飛び跳ねるウサギに例えられ、「ラビットボール」、「飛ぶボール」などと呼ばれることがある[注 2]。ラビットボールは本塁打が出やすいことで、走塁や盗塁などのプレーの重要性や観戦の醍醐味が損われるとしてしばしば批判の対象となる。
1910年の飛ぶボール
MLBでは1910年のワールドシリーズに初めてコルクを芯にした飛ぶボールが使用された。このボールを使用した翌1911年シーズンでは3割打者が前年の30人から57人に増えた[2]
1931年の改善
飛ぶボールによって本塁打が増えすぎ、批判が起きたために1931年にはコルクをゴムで包み、投手が握りやすいように縫い目を高くする改善が行われた[2]
1948年 - 1950年のラビットボール
イシイ・カジヤマ(ジュン石井)が製造したボール自動製造機械によって製造されたボールの通称。1948年9月にNPBに試験導入され、翌1949年から1950年まで全面的に使用された。それまでほぼ手作りだったボールが、この自動製造機械導入で精度が格段に上がった。材質面では、戦時中より粗悪品のままだったものを機械導入を期に大手毛糸会社と契約を結ぶことで、質の高いボールを製造できるようになった。材質の改良に加えて、電気乾燥機で湿気を飛ばす製造手法も反発力向上の要因となった。このボールの導入によって本塁打数が劇的に増加。この後に反発力の規定が作られた。
1978年 - 1980年の飛ぶボール
当時のミズノ社製のボールが他社のボールと比べて10数メートル飛距離が出る反発力の高いボールであったことが原因である。1978年には阪急ブレーブスが導入し、打率・本塁打数・得点数でリーグ1位を記録し、優勝した。次に、それを知った近鉄バファローズ1979年に導入し、リーグ1位の打率・本塁打数を記録して初のリーグ優勝を遂げた。


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