ボルドーワイン
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ボルドー地区の地図。ほぼ全てのアペラシオンが掲載されている。ガロンヌ川とドルトーニュ川、ジロンド河口が各地域を区切る地形として重要である。

ボルドーワイン(仏:vin de Bordeaux)はフランス南西部の都市ボルドー周辺およびガロンヌ川沿いに位置するボルドー地区で生産されるワインである。ボルドー市街の北ではドルトーニュ川がガロンヌ川に合流し、ジロンドと呼ばれる広大な三角江を形成している。ジロンド県におけるブドウ畑の面積は総計120,000ヘクタールにも達し[1]、フランスでも最も広いブドウ栽培地域である。

平均的な年では7億本を超えるワインが生産されているが、生産されるワインは大量生産される普段使いのテーブルワインから世界でも最高級の名高いワインに至るまで幅広い。生産量の多くを占めるのは赤ワインで、これはイギリスでは「クラレット」と呼ばれることもある。その他、ソーテルヌに代表される甘口白ワインや、辛口白ワイン、そしてごく少数ながらロゼワインスパークリングワイン(クレマン・ド・ボルドー)も造られている。8500を超えるシャトー(仏:chateau、城の意)と呼ばれる生産者が存在する。ボルドーワインのアペラシオン[注釈 1]は60に分かれている[1][2][3]。シャトーは醸造所が付随したブドウ園を持つ生産者であり、なかには格付けがなされているシャトーもある[4]
歴史アキテーヌがプランタジネット朝の支配下にあった時代のフランスの州が描かれた地図。ボルドー(Bordeaux)の記載が見える。

ボルドーにワインが持ち込まれたのはローマ帝国によるもので、おそらくは1世紀半ばの出来事である。その頃は当地で消費されるワインが造られていたが、それ以来、ボルドーでのワイン生産は連綿と続いている[5]

12世紀にはヘンリー2世アリエノール・ダキテーヌの結婚をきっかけに、ボルドーワインの人気がイングランドにおいて急騰した[6]。この結婚によりアキテーヌ地域圏はアンジュ―帝国の一部となり、それ以来ボルドーワインはイングランドに輸出されるようになったのである[6]。そのころの主要なワイン産地はグラーヴであり、クレレと呼ばれるスタイルが一般的であった。なお、現代においてもクラレットという語はイギリスでよく目にするが、これはこの時代の名残であり、実際には特にクレレのスタイルのことを指しているわけではなく、単に赤ワインのことを指す語として使われている。ボルドーワインの輸出は1337年にフランスとイングランドの間で勃発した百年戦争により停滞した[6]。1453年に戦争が終結すると、フランスはこの地域を取り戻し、ボルドーにおけるワイン生産の実権を握った[6]古い同盟に基づき、スコットランドの商人にはクラレットの取引に関する特権が認められていたが、この地位はエディンバラ条約(英語版)によってフランス・スコットランド間の軍事同盟が解消されたのちも大部分は継続された[7]。カトリックであるフランスに対するユグノーの反乱がラ・ロシェルで発生すると、イングランドとスコットランドはともにスチュアート朝の支配を受けるプロテスタントの国家であるため、ユグノーへの軍事的な支援を試みていた。そのような事態にもかかわらず、スコットランドの交易船はジロンドへの入港を認められていただけでなく、ユグノーの私掠船から守るためにフランス海軍による港での警護まで受けていた。

17世紀にはオランダの貿易商がメドックの湿地帯を干拓したことでブドウ栽培が可能になり、やがてはグラ―ヴを上回りボルドーのなかでも最も高名なワイン産地となった。この地域では19世紀まではマルベックが主要なブドウ品種であったが、19世紀初頭からはカベルネソーヴィニヨンにとってかわられた[5]

1855年には初めてボルドーワインの格付けが行われたが、この格付けは今でも広く受け入れられている。1875年から1892年の間にはボルドーはフィロキセラ禍にみまわれ、ほぼ全てのブドウ畑が打撃を受けた(19世紀フランスのフィロキセラ禍[6]。この対策としてフィロキセラ耐性のあるアメリカ系ブドウの台木を用い元々あった品種を接ぎ木して栽培する技術が見いだされ、ワイン産業は回復した[6]
気候と地質ボルドー右岸に位置するブライのブドウ畑ボルドー左岸に位置するポイヤックのブドウ畑

ボルドーにおけるワイン産業の成功の主要因として、ブドウ栽培に極めて好適な自然環境が挙げられる。この地域の基礎地質は石灰岩であり、カルシウムが豊富な土壌構造を形成している。ジロンド河口は支川であるガロンヌ川とドルトーニュ川とともにこの地域の環境に多大な影響を与えている。すなわち、この地に水を供給するとともに、海洋性気候である大西洋気候をもたらしている[8]。ドルトーニュ川とガロンヌ川が合流し、ジロンド川に注ぐ地点を中心にボルドーは広がっているのである[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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