ボウモア蒸溜所(ボウモアじょうりゅうじょ、Bowmore Distillery)は、スコットランドのアイラ島のボウモアにあるスコッチ・ウイスキーの蒸留所。 ボウモア蒸溜所は、アイラ島の商人、デイビッド・シンプソンによって1779年に設立された[1]。多くの蒸留所があるアイラ島の中でも最古の歴史を持ち[4]、現存するスコッチウイスキーの蒸留所としてもグレンタレット蒸留所
歴史
経営が悪化してからはオーナーが替わり続け[4]、1837年にジェームズ&ウィリアム・マッター社に、1892年にイングランドの起業家グループが設立したボウモアディスティラリー社に、1925年にJ・B・シェリフ社に、1949年にグリコール社に、1963年にスタンレー・P・モリソン社へと所有権が移った[7][8]。モリソン社は翌1964年に蒸留所を拡張して増産を始める。この1964年蒸溜の原酒は「奇跡のヴィンテージ」と呼ばれて高く評価されている[8]。それまでポットスチルの加熱は石炭直火式で行われていたが、この拡張によって蒸気式に変更された[9]。なお、第二次世界大戦中には英海軍の飛行艇の訓練基地として使われていた[10]。
その後ふたたび経営が悪化したため、蒸留はあまりしておらず、熟成に用いる樽も古いものを再利用するような状況だったが[11]、1989年に日本の酒類メーカーサントリー(現:サントリーホールディングス)による30%の資本参入を経て[4]、1994年7月に完全子会社化される[6]。以降サントリーがボウモア蒸溜所のオーナーである。サントリーは資本参入後、経営の建て直しを実施した[11]。サントリーがオーナーであることから、日本から輸出される山崎ならびに白州のイギリス国内の発売元も担当している[12]。2014年にはサントリーがビーム社を買収したため、ボウモアを含むスピリッツ事業はビーム サントリー(現:サントリーグローバルスピリッツ)に移管された[13]。
製造特徴的な双塔のキルン塔。画像中央上部。「スコッチ・ウイスキー#製造工程」も参照
現在でもフロアモルティングによる製麦を自社で行っている珍しい蒸留所で[1]、使用する麦芽のおよそ30%が賄われている[2]。フェノール値は25?30 ppmと[1]、アイラ島のウイスキーとしては平凡な数値である[2]。残りの70%はイギリス本土の業者であるシンプソンズ社から仕入れている[2]。
製麦に使用するピートは自社で切り出したもの。ラフロイグ蒸溜所などが使う海辺近くで採掘されたヨード臭(海っぽさ)の強いピートとは異なり、島の中央部の高台で採掘するため、やや乾いたような穏やかなピートスモークが特徴である[1]。ラーガン川。仕込み水に使われる。
仕込みの工程では、1回あたり8トンの麦芽(うち2.5トンは自家製の麦芽)を使う[2]。仕込みに用いる水はアイラ島最大の川であるラーガン川(英語版)から採取している[6]。この川は鉄分を含む岩から湧出しており、かつ土壌からピートの成分を取り込むため[14]、色は黒く、かなりピートの風味も強い[15]。
マッシュタンはステンレス製で[15]、過去にジュラ蒸留所(英語版)で使われていた。1回あたり4万リットルの麦汁ができる[16]。
発酵に使うウォッシュバックはオレゴンパイン製のものが6基あり[15]、1回の仕込みでできた麦汁を1基のウォッシュバックに移して発酵される[16]。