ホーキング放射(ホーキングほうしゃ、英語: Hawking radiation)またはホーキング輻射(ホーキングふくしゃ)は、スティーヴン・ホーキングが存在を提唱・指摘した、ブラックホールからの熱的な放射のことである。
「ブラックホールは熱的な特性を持つだろう」と予言したヤコブ・ベッケンシュタインの名前を取って、ベッケンシュタイン・ホーキング輻射(Bekenstein-Hawking radiation)と呼ぶこともある。 一般相対性理論が予言するブラックホール天体には、量子効果を考えるならば、熱的な放射がある、と1974年にホーキングが提唱した。 ブラックホールの絶対温度 T が次式で定義される[1]。 T = ℏ c 3 8 π k G M {\displaystyle T={\frac {\hbar c^{3}}{8\pi kGM}}} ここで k はボルツマン定数、M はブラックホールの質量である[1]。つまり、ブラックホールはその質量M で決まる温度 T の熱放射を放出していることになり[1]、完全に「黒い」わけではない。これがホーキング放射である。ホーキング放射はエネルギーを外部に放出するので、ブラックホールの質量は減少する。 上式から、ブラックホールは質量M が小さければ小さいほど高温であるといえる[1]。とはいえその温度は、例えば太陽の数倍の質量を持つブラックホールの場合、数千万分の1 K 程度[注 1]となり、通常の恒星質量クラスのブラックホールでは宇宙背景放射の温度(3 K)よりもずっと低い[1]。 簡略化された説明では、量子力学的に真空ゆらぎからトンネル効果により粒子がブラックホールの事象の地平線付近で対生成を起こす。その対生成で出来た二つの粒子の一方(負のエネルギー粒子)が地平線に向かって落ち、片方(正のエネルギー粒子)が外へ放射される。エネルギー保存の法則からブラックホールの質量エネルギーは下がる。つまり質量を失う。この放射がホーキング放射であるとされる[2]。 [脚注の使い方]
概説
簡略化された説明
音のブラックホールによるホーキング放射の観測は、音速以上に物質を加速させることで音響的な事象の地平面(ブラックホール)を再現し、そこに一対のフォノンを発生させ、一方は事象の地平面に吸い込まれ、一方は事象の地平面から放射されるように移動する、ホーキング放射と同様に見える現象を確認したと発表した[3]。
脚注
注釈^ 1 gのブラックホールの温度は1.2×1026 K。太陽質量(1.9884×1030 kg)を式に当てはめると、1億分の6 K程度となる。
出典^ a b c d e 蜂巣泉. “東京大学教養学部1・2年生向け講義「宇宙科学」第9回ブラックホール
^ スティーヴン・ホーキング; レナード・ムロディナウ 著、佐藤勝彦 訳 『ホーキング、宇宙のすべてを語る』、137-142頁。
^ “7年かけて作った「人工ブラックホール」でホーキング放射を初観測。ブラックホールが完全にブラックではない証拠になるか - Engadget Japanese
関連項目
一般相対性理論
素粒子物理学
ブラックホール
ブラックホールの熱力学
ホーキングページ相転移
表
話