ホンヤドカリ
繁殖期にはオスがメスをつかんで運ぶ
分類
界:動物界 Animalia
門:節足動物門 Arthropoda
亜門:甲殻亜門 Crustacea
綱:軟甲綱(エビ綱) Malacostraca
目:十脚目(エビ目) Decapoda
亜目:抱卵亜目(エビ亜目) Pleocyemata
下目:異尾下目(ヤドカリ下目) Anomura
上科:ヤドカリ上科 Paguroidea
科:ホンヤドカリ科
ホンヤドカリ(本宿借、本寄居虫)、学名 Pagurus filholi は、十脚目ホンヤドカリ科に分類されるヤドカリの一種。日本とその周辺海域の磯に分布する小型のヤドカリで、日本の外洋に面した磯では最も目につき易いヤドカリの一つである。
過去の文献では、北アメリカ太平洋岸産の P. samuelis (Stimpson, 1857) と長年混同されてきた。また P. geminus Mclaughlin, 1976 とした文献もあるが、1993年以降は P. filholi が定着している[1][2][3][4]。 甲長は10mmほどで、ヤドカリとしては小型である。オスの方がメスより大きい。第1胸脚の鋏脚は右側が大きく発達し、左側は細くて小さい。鋏脚の表面は細かい顆粒と毛に覆われる。眼柄はやや短く第1触角柄を超えない。第2・第3胸脚は歩行用に長く発達するが、第4・第5歩脚は貝殻保持用で短く、貝殻から顔を出している状態でも確認は難しい。生体の体色は緑褐色だが、鋏脚と歩脚の先端が白-黄白色でよく目立つ。歩脚は厳密には指節(爪にあたる部分)の中ほどに1本の白帯があり、その上下を黒褐色の横帯が挟んでいる。第2触角は黒褐色と白の縞模様である[1][2][3][4]。 日本では北海道・本州・四国・九州とその周辺島嶼、また小笠原諸島にも分布する。日本以外では朝鮮半島南部と台湾にも分布する[1][2]。 外洋に面した海岸の岩礁域に生息し、潮が引いた磯のタイドプール内や転石下で他のヤドカリ類と共に見られる。砂浜ではほとんど見られない。本種には近縁種が多いが(後述)、鋏脚と歩脚の先端が白いことや、触角が縞模様であること等で区別できる。体色は南日本で同所的に分布するイソヨコバサミ Clibanarius virescens に似るが、本種は右の鋏脚が大きくてイボや毛が目立たないこと、歩脚の白帯は1本のみであること等で区別できる[1][2][3][4]。性質は臆病で、危険を感じると素早く殻の奥に引っ込む。この時に大きな右の鋏脚が殻口を塞ぐ役割をもつ。食性は雑食で、デトリタス、藻類、動物の死骸などを食べる[3]。使用する貝殻は地域や成長段階にもよるが、イシダタミ、コシダカガンガラ、スガイ、タマキビ
特徴
抱卵期は2-6月で、この時期には交尾前にオスがメスの貝殻をつかんで運ぶ様子が観察できる。メスは交尾後に産卵し、貝殻内の腹脚に卵を抱える。孵化したゾエア幼生はプランクトンとして海中をしばらく浮遊する間に4回脱皮する[2]。成長したグラウコトエ幼生は岩礁海岸に定着する。 ホンヤドカリ属 Pagurus には多くの種類がある。このうち日本産・海岸生・小型種には以下のようなものがいる[2][4][5][6][7]。
近縁種
ケアシホンヤドカリ P. lanuginosus De Haan, 1849