ホンダ・ジャイロ
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ジャイロ (GYRO) は、本田技研工業が製造販売するオートバイのシリーズ商標である。本項では同社が過去に製造販売した派生車種についても解説を行う。
概要

2輪車の特長であるスムーズ・軽快・経済性を損なうことなく、4輪車の特長である居住性・快適性を合わせもつ新しいカテゴリーの乗りものを前1輪・後1軸2輪のスクーター=スリーターと銘打ち1981年11月に発売されたストリーム[1]に続いて第2弾となる排気量49tの原動機付自転車で、1982年10月にジャイロ Xとして販売開始された[2]

車名はGreat(偉大な)Yours(あなたの)Recreational(娯楽の) Original(オリジナル=独特)の頭文字を取ったもので『優れた多目的性を持ち、仕事からレジャーまで使える独特の乗りもの』というう意味合いが含まれ、さらに羅針盤(方位磁針)を意味するジャイロコンパスとのダブルミーニングである[2]。また当初の市販モデルとなったXにはこれから次々と楽しい使い方が生まれてくる秘めた可能性を込めた。

他のスリーターシリーズがいずれも1985年までに生産終了となるも、本シリーズはバリエーション展開を広げ、2008年に搭載エンジンを空冷2ストローク単気筒から水冷4ストローク4バルブSOHC単気筒へ変更するフルモデルチェンジ[注 1]を経て、2017年現在でも製造販売が継続される。
車両解説

本シリーズでは以下の車名・型式名[注 2]で3バリエーションが販売された。

ジャイロ X(型式名TD01):1982年10月13日発表 同月14日発売[2]

ジャイロ UP(型式名A-TA01):1985年9月18日発表 同年10月1日発売[5]

ジャイロ キャノピー(型式名A-TA02):1990年11月13日発表 同年12月1日発売[6]

以下は3バリエーション共通の構造について解説を行うと共にバリエーションごとの詳細はそれぞれの項目を参照のこと。

車体はバックボーン型フレームを採用。サスペンションは、前輪がボトムリンク、後輪がユニットスイングと通常の2輪スクーターと同様であるが、車体中央付近に回転軸を持った相互の連結部に適切な復元力をあたえるナイトハルト機構[注 3]を採用したことにより、側車付二輪車オート三輪・通常のトライク[注 4]などとは異なり、通常のオートバイと同様にコーナリングでフロントボディの左右自在スイング、即ち内側への重心移動を可能にした点が最大の特徴であるが、スイング状態からの復元力が若干異なり、リアホイールが旋回時にキャンバースラストを発生しないため、通常のオートバイやスクーターよりも旋回時に大きくバンクさせる必要がある。

加えてリヤ駆動軸にXは当初車軸左右回転差を調整するデファレンシャルクラッチ[2]、UP・キャノピーではデファレンシャルギアを搭載し[5]、旋回性を向上させた[注 6]

また構造上スタンド類は未装備で、代わりにスイング機構や車輪を固定するワンタッチ操作のパーキングロック機構を装備し、傾斜地においても車体の水平を保ったまま駐車することが可能である。

タイヤホイールサイズは、前輪がXの1982年モデルのみ3.75-8としたほかは[2]、X・UPが3.50-10[5]→90/100-10、キャノピーが4.00-12[6]→100/100-12[8]、後輪は当初が5.40-6[2][5]、キャノピーラインナップ後が130/90-6[6]、4ストローク化後が130/70-8[8]とするほか、ブレーキは前後リーディング・トレーリングを装着する。

搭載されるエンジンは、2ストローク時代はXがTD01E型、UP・キャノピーがTA01E型とされたが、いずれも内径x行程=40.0×39.3(mm)である。1997年に本田技研工業は同社の二輪車エンジン4ストローク化方針[9]を発表したが、本シリーズは重量と荷物を運ぶ用途にトルク性能が必要なため、1999年から2000年にかけてキャブレター最適化・マフラー三元触媒ならびにエアインジェクションシステム(二次空気導入装置)を導入し、平成10年排出ガス規制ならびに騒音規制に適応させたため識別記号BB-を附帯するマイナーチェンジを実施して対応した[10]。しかし本規制対応車の継続生産期限が2008年8月31日とされたことから[10]、同年3月21日発表、同月27日発売で平成18年排出ガス規制に適合させた内径x行程=38.0×44.0(mm)のTA03E型水冷4ストローク4バルブSOHC単気筒エンジンを搭載するフルモデルチェンジを実施[8]。さらに2016年7月1日に施行された欧州Euro4とWMTCを参考とした規制値および区分[11]の平成28年排出ガス規制[12]に適応させたマイナーチェンジ[注 7]を2017年8月22日発表、同年9月22日発売で実施した[13]。なお燃料供給は2ストローク時代のキャブレターから4ストローク化後はPGM-FI電子式燃料噴射装置に変更されたが、始動方式はすべてセルフキック併用、動力伝達は一貫してVベルト式無段変速機を搭載する。

積載量はモデルによって異なるが、道路交通法の規格上最大積載量は30 kgとなる。

この他、電動モデルのジャイロ e:および、ジャイロ キャノピー e:が2021年に発表された。
内燃モデル
ジャイロ X

1982年から製造販売されるベースモデル[2]。合計76の特許・意匠・実用新案を出願した[2]。当初は不整地・雪道・坂道などでの走行に特化して開発され優れた走破性能をセールスポイントとしたことから、車両型式上はTD01とオフロードモデルにカテゴライズされたが、フロントデッキと大型リヤキャリアを標準装備したためビジネス向けの需要が高まり販売方針を転換。マイナーチェンジの度にキャッチコピーを変更し、1989年には多目的に使えるレジャースリーター[14]1993年には多目的スリーター[15]1999年には三輪ビジネスバイクと変化した[16]

積載量は、フロントキャリア 5 kg / リヤキャリア 10 kg / オプション設定のインナーボックス 1.5 kg の合計 16.5 kgである。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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